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一番ヶ瀬正明

小規模事業者・中小企業の広告コンサルティングのプロ

一番ヶ瀬正明(いちばかせまさあき) / 広告コンサルタント

有限会社ディーナ

コラム

第7回【経営者コラム】SNSでも評価を得ることが期待できる「生産過程を見せる」「明確な生産情報」など、取扱商品の透明化。プロセスや裏側を見せる『潔い戦略』で勝負する。

2022年11月1日 公開 / 2022年11月8日更新

テーマ:中小企業のSNS運用

コラムカテゴリ:ビジネス

大企業が販売するものも、中小企業が販売するものも、どんな品もクオリティの差がどんどん小さくなっています。
さて?取扱品の差別化をどう図ればよいのでしょう?

製品の完成形で差をつけるのは難しくなっていることは、どんな事業の経営者さまも感じていらっしゃるでしょう。
売り上げが上がらないからと言って、大切にしてきた自社製品の薄利多売は、したくないはずです。

そこで、ひとつのチャレンジとして検討いただきたいのが、生産過程、つまりプロセスを見せることで
「製品や商品の価値を消費者に見出してしてもらうという戦略」です。

何かを誕生させたり、消費者の元へ届けるまでの過程は、大切に人から人の手を経た取扱商品の歴史でもあり、
その中での挫折や葛藤、成功や喜びといった、人間ドラマでもあります。
今回のコラムは、製品自体の素晴らしさや販売に対する思いなど、飾らず、生の言葉でアピールする
「生産過程(プロセス)を公開」という戦略で“売り上げアップ後押しの方法”を見ていきましょう。


生産過程(プロセス)の公開で消費者に価値を見出してもらうとは?


例えば、アイドルをデビュー当時から応援し、そのアイドルが人気を博した時は、
「私はデビューからそのアイドルを見守り育ててきたコアファンだ!」と言う自負が出てくるでしょう。
それと同じで、製品の初期段階や生産過程を目にし続け、応援したならば、その品やブランドに愛着が湧き、
コアファンであるという気持ちも育って行きます。

プロセスを見せると言うのは、その過程をただ単に紹介しても単調になってしまいます。
その製品を開発・販売するにあたっての「バックボーン」や「ストーリー」をしっかりと伝え、
興味を示してくれた人、ファンになってくれた人たちと共に、同志として作り上げると言う意識で進めることが鍵となります。


生産過程(プロセス)の公開を「自社取扱商品」へ当てはめるには


とくに小売業を営む方は、取扱品を一から生み出していないが、どう展開すれば良いか?と悩むところでしょう。
考え方としては、自社事業の『映画のメイキング』や『ドキュメンタリー番組』だと考えると良いでしょう。
SNSでのライブ配信やリアルタイムにバックヤードを写真公開するなど、
いま現在の状況を可視化し、心模様と一緒に発信すると言うことです。
この方式では、消費者の生の声(コメント)で反応が得られ、
開発の段階での改善点や、気づきもしなかったアピールポイントが見つかることも期待できます。


現在進行形の「生産過程(プロセス)の公開」。 具体例からインスピレーションを得る


さまざまなプロセス公開の具体例を見てみましょう。
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事例1) 2037年まで続く、長期プロセス公開を観光資源とする
復旧中しか見られない場所を見どころにする「熊本城復旧工事」


熊本市は、熊本城天守閣を復旧させ一般公開にこぎつけ、多くの観光客で賑わっている。
南側ルートは、通常では見られない地上6メートルほどの高い位置から見学でき人気。
天守閣まで長さ350メートルの見学通路で、見晴らしも抜群。
通路を進んでいくと、かつて茶会などを行っていた数寄屋丸の建物が。
この建物は、数年後の解体を予定。その工事の様子もこの通路から見ることがでる。
熊本城が完全復旧するのは2037年。次第に復旧していく様子を見学することで、
街の経済が活性化し、ひいては復興を後押しすることにつながる。

ーーーーこの事例は「限定感」がカギ。ーーーー
“いまだけ見られる場所”ということが、見学者の心をくすぐり満足感を得る事ができます。




参考:名越章浩解説委員[熊本城どこまで復旧?今も残る立ち入り規制区域]
2022年04月14日_NHK解説委員室 https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/466864.html


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事例2) 冷蔵庫、キッチンなど、店舗の大部分をガラス張りに。透明化の最たる手法
世界一透明な「ドミノピザ」


ドミノ・ピザはなぜ、ここまで徹底した可視化を施した店舗を出店したのか。
そこには、「ピザはいまだに、冷凍を焼いているだけじゃないのか、
出来合いの生地を使っているのではないかという風に誤解されたままになっている部分がある。
これは、店でどう作られているかということが見えにくかったことが原因」だと、営業部長は語る。

ドミノ・ピザは、これまでも安全・安心なピザ作りにはこだわってきたが、
今回の出店でそのこだわりを幅広く発信していきたい考え。
見られているからといって特別なことは何もせず、通常店と同じ材料で、同じメニューを、同じやり方で作る。
“素”のドミノ・ピザを、包み隠さずすべて見せることで、顧客の抱いている不安感・疑問の解消や、
近年高まる食の安全意識に応えることがねらい。

ーーーーこの事例は「いくつもの可視化」を実現している。ーーーー
材料や制作工程の可視化に加え、目で見た可視化の両方を実現した上、“透明のキッチン”という話題性をも叶えています。


参考:若狭靖代(ダイヤモンド・チェーンストア記者)[世界一透明なドミノ・ピザがお台場にオープンドミノ・ピザが追求する食の安全・安心へのこだわりとは]
2021年05月25日 05:56_DIAMOND Chain Store online https://diamond-rm.net/store/84175/


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事例3) 材料の購入先・量・コストなど全公開を目指し、消費者の信頼を獲得
作業場の公開ツアーも体験できる「ダンデライオンチョコレート」


ワークショップとして、作業終了後のファクトリーを案内してもらえる。
チョコレートファクトリー内のすべての工程を見ることができるツアーなどを開催。
ダンデライオン・チョコレートは、シングルオリジン(=1種類だけ)のカカオ豆からチョコレートを作る、世界でも数少ない店のひとつ。
世界10ヶ国以上のカカオ農園を自らの足で訪れ良質な豆を直接買い付け、
選別、焙煎、摩砕、テンパリング、成型、ラッピングまで
すべての工程を自社ファクトリーで行ない、世界のカカオ農園のことや、カカオ豆のことを伝え、消費者と共に考えていく。

ーーーーこの事例は「2つのアピールポイントだけ」に絞って発信している。ーーーー
“フェアトレードに重きを置いていること” “一種類のカカオだけを使っていること”
この2つをベースに、消費者の信頼を得ることに特化しています。



参考:[ABOUT][WORK SHOP Factory Tour]
2021年10月12日_ダンデライオンチョコレート https://dandelionchocolate.jp


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事例4) 作品の制作プロセスをデザイン展示し収益を得るものづくりプロセスのトークイベントも!
「リサーチ!プロセスを魅せるデザイン展」


現代にさらにものを生み出すことへの問い、徹底したリサーチ、プロセスそのものまでも作品とする手法。
展示作品は、私たちの好奇心を「もの」の背景へと向かわせ、
日常的に使うモノに対する見かたさえも変化させる力を持っているかもしれない。
出展者のデザイナーたちが登壇し、ものづくりプロセスに関するトークイベントも開催。

ーーーーこの事例は「不思議な感覚を味わえる」演出のうまさが魅力。ーーーー
モノづくり中のデザイナーの “頭の中に入った様な” “滅多にのぞくことができない
制作現場に足を踏み入れた様な” 異空間を演出。見学者をうまく楽しませています。



参考:「AXIS」編集部[オランダのデザイン学校出身者の作品を紹介する「リサーチ! プロセスを魅せるデザイン」展が開催]
2022年07月26日 16:45_AXIS Web Magazine https://www.axismag.jp/posts/2022/07/483238.html


まとめ


ヒット商品はすぐ模倣され、飽きられるスピードも早くなっています。
人やモノが埋もれてしまう時代の中で、自社製品や取扱商品をどう差別化をするか。

いまを生きる消費者の多くは「物質的なものより内面的なことを大切にしている」と、言われています。
「自分らしさを満たしてくれる」自分の居場所を探しているのです。
消費の場面でもその欲求は変わることなく、『公開した過程(プロセス)』で消費者の内面に触れる事ができたならば、
きっと多くのファンを増やす事もできるのです。
誰もが情報発信やPRをいろいろなSNSで行える中、熱量を持った自社ファンを増やすため、自社で開発する商品や取扱製品を
共に育て、闘い、自社の思いに賛同する、“自社とファンは同志であると言う感覚”が必須だと言う事です。

いますぐ自社事業全てのプロセスを透明化などと言うことはできるはずもありませんが、
消費者に「ぜひ知ってもらいたい!」「自慢できる!」というアピールポイントを
「バックボーンやストーリーを交えた上で、透明化する」と言うところから、この戦略を開始してみてはいかがでしょうか。

有限会社ディーナでは、広告戦略・映像制作・SNS運用などのご相談もお待ちしております。
お気軽にお問い合わせください。

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