もったいないよな~この景色―海のロケーションと日本文化を考える―Ⅲ
今日の目次
・「枚挙にいとまがない」も知らんのか!?
・それって逆じゃないか!
・テレビ離れしたところでこの傾向は・・
マーケティングリサーチを仕事にしていた現役時代、納品するレポートの中で、「腐心」というちょっと古めかしい言葉を使った私。
そうしたら「そんな言葉聞いたことがない。」と、同僚たちに笑われてしまうといういささか嫌な経験をしました。
「枚挙にいとまがない」も知らんのか!?
さて、そのマーケティングの仕事での言葉使いで、少々いやな思いをしてからかれこれ30年近く経ったある日、テレビのバラエティー番組を観ていたら、こんな場面がありました。
ある女性の大学教授が
「先日、私が『枚挙にいとまがない』といった言葉を使ったら、そんなの聞いたことがないって笑われたんですよね。」
と発言しました。
すると、スタジオにいたお笑い芸人連中が、彼女に対して「ほんまや、そんなの聞いたことないわ。」とか「なんすかそれ!」とか、一斉に総スカンを食らわせてしまったのです。それだけならともかく、司会を務めていた知性派であるはずのタレントや局の若いアナウンサーまでも「そんなの聞いたことがない。」などとスタジオの空気に同調してしまったのです。
それに対して、女性大学教授は何一つ抗弁するでもなく、
「そんなもんですかね。悪いのは難しい言葉を使った私の方ですかね。」
とばかりに引っ込んでしまいました。私は観ていて
「おいおい、ちょっとくらい言い返せよ。」
と思ったのですが、スタジオの空気には抗えなかったようでした。
さすがにこの光景には私は呆れてしまいました。
「お前らなあ、枚挙にいとまがない、くらい知ってろよ!」
と、画面に突っ込みを入れます。
私に言わせれば、
「みんな教養がないにもほどがある!しかも無教養のお笑い芸人の方に合わせるなよ。」
ということになります。
お笑い芸人はともかく(知性派のお笑い芸人だっていくらでもいますが・・)、局のアナウンサーが知らなかった、というのは致命的です。あとで上司から注意があっても不思議ではないくらいの話ではないかと思いました。
それって逆じゃないか!
日本語の中には、古めかしくて少し難しい言い回しだけれど、格調の高い表現、というものが多く存在します。確かに言葉は生き物で、昔普通に使われていたけれど、今では死語となったものだっていくらでもあります。
しかし、流行語の類(たぐい)ならともかく、美しい日本語はできるだけ大事に残していって欲しい、というのが私の考えです。「腐心」も「枚挙にいとまがない」も普段はあまり使わないかも知れませんが、それなりのニュアンスを伝えたいときには、取っておきの言葉でもあるのです。
それを自分たちが知らなかったからといって、嘲笑するような態度をとる人間。彼らを見ていて、つくづく「それって逆だろう!」と思いました。
取るべき態度は
「素晴らしい言葉を教えていただいてありがとうございました。とても勉強になりました。」ではないか、と。
テレビ離れしたところでこの傾向は・・
美しい言葉や格調の高い表現、といったものを、日本人はもっと大切にし、敬意を払うべきだろうと思います。どうして、そう言った文化や習慣が失われてしまったのでしょうか。
それは、テレビのお笑い番組やバラエティー番組などが世間を席巻して、短くて早いレスポンスに馴染む言葉、聞いてパッと分かりやすい表現、といったものが当たり前の世界になってしまったからなのかも知れません。
だとしたらなおのこと、あえて美しい日本語、格調の高い表現といったものに注目し、それを大事に守り育んでいかなければならないと思うのです。
とはいえ、そんなテレビの世界もすっかり廃れてしまって、特に若い人たちは今ほとんどテレビなど見ない、とも言われています。代わりにSNS,ユーチューブやショート動画などが主流になってきていますが、これもテンポが速いので、言葉そのものはますますはしょられる傾向にあるのかも知れません。
さてそんな中で、とっておきの難しそうな表現、「人口に膾炙(かいしゃ)する」って意味、わかりますか? わからなかったら調べてね。
地上波テレビ番組は観なくても映画は観ますけどね。
おしまい


