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海江田博士

有効な経営革新支援でより強い経営を目指すプロ

海江田博士(かいえだひろし) / 税理士

税理士法人アリエス

コラム

決められない人は帰ってください―「トライアル&エラーの勧め」再び―前編

2024年1月31日

テーマ:経営について考える

コラムカテゴリ:ビジネス

「トライアル&エラーの勧め」

昔、何かの論文募集に「トライアル&エラーの勧め」というタイトルで応募したことがありました。それは
―世の中の変化があまりに早くて激しいので、ボクシングのジャブを打つようにトライしては様子を見て、よければ前に進むし、ダメなようであればすぐ引っ込める、それを繰り返しながら、事業の方向性を微調整していくのが現代の経営に合っているのではないか・・・―
というような内容のものでした。
税理士として、地域の顧客中小企業との仕事を通じて感じたことを、事例を交えながら結構な分量書いて提出したことを覚えています。確か、町が募集した「未来への挑戦」みたいなテーマの論文だったと思います。
内容には自信があったのですが、採用されませんでした。後で、採用された論文を読んでみると、無難な内容の大して面白くもないものだったように記憶しています。

「決められない病」の患者?

さて、あれから約20年近く経ちました。世の中の状況は変わったのでしょうか。「トライアル&エラー」の手法は、もはや現代の経営には合わなくなってきているのでしょうか。
そんなことを考えながら、インターネットのニュースを見ていたら、面白い記事に遭遇しました。私がインターネットで見た記事のタイトルは
「シリコンバレーと深センを回って判明「PDCAが日本の病の原因だ」 君たちは「決められない病」の患者か?」
というものです。
この中に次のような興味深い指摘がありました。
―中国の工作機械・ロボット関連の新興企業でも、社是の一つは「今やる!すぐやる!私がやる!」だった。社長は30歳の元大学教員、やり手の女性営業部長は20代後半だ。 日本企業は、このスピード感についていけず、率直に言って米国や中国ではバカにされていた。米国では、ベンチャーキャピタルの人からこんなことを言われた。 「日本の大企業はシリコンバレーによくやって来るが、1週間で投資決断できるようなことを、本社で稟議書を回して半年以上かけて決断する。この間にビジネスの環境は変わる。米国のベンチャー企業は、日本の大企業とは組みたくないというのが本音ですよ」―


効率が悪すぎるのでは・・

これに似た話を大きな企業に勤める女性からも聞いたことがあります。彼女の勤める会社の重役が、取引先のやはり重役にちょっとした挨拶の電話をかけるのに、何曜日の何時ごろが相手の都合が一番いいのか、お互いの秘書が何日もかけて何回も電話連絡をし合って決めていたというのです。当の担当者であるその女性も、さすがにこれは効率が悪すぎるのでは、と疑問を抱いたようです。
確かにこんなスピード感では世界の競争に負けてしまうでしょう。
しかし、私が根が深いなあ、と思うのは、特に歴史のある大企業の場合、こういう指摘がその通りだ、と思ってもすぐには企業内のシステムを変えられないだろう、ということなのです。

決められない人は帰ってください

さて、同様の話がイスラエルでもあったことが紹介されていました。
―イスラエルの投資セミナーを取材した際にも、冒頭で講演したイスラエル人が、 「最近、日本企業はイスラエルにオフィスを設立しているが、なかなかビジネスに結びつかない。その理由はすぐに決めないからだ。日本企業は、提携や投資などを最終決定するのに時間がかかり過ぎる。今日は、決められない人は帰ってください。」 と言っていた。―
「帰ってください・・・」この言葉に、外国企業の日本に対する苛立ちが込められているような気がします。日本企業が「これでよし」として守ってきたペースが、世界から見れば明らかに立ち遅れてきていることがわかります。

他もやっているのか?

大企業の場合、稟議をあちこち組織内で回さなければならないために、意思決定が遅くなる、ということが起こるのだろうと思います。それでは意思決定が速いはずの、私たち税理士が担当する中小企業ではどうでしょうか。
同族経営がほとんど中小企業では、オーナー経営者の決断次第で、いかようにも変化対応できそうな気がします。ところがやはり、大企業と同じように「決められない」ということが起こるのです。
中小企業の場合、それも特に地方の場合は「他もやっているのか?」というのが大きな基準になります。「他でやってもいないようなことを俺が先にやっちゃっていいものか?」という、よくわからないマインドでブレーキがかかるのです。「他人の目」というものを、過度に気にかける地方ならではの風土ゆえのことなのかも知れません。

そのうちそのうちで何十年

そういったマインドのために、私が経験上最も悩んだのは、コンピュータ会計の導入のときでした。いつまでもそろばんや電卓使って手書きの帳簿の時代じゃないだろう、というのは20年以上昔から私にとっては自明の理でしたが、これがなかなか通じなかったのです。
決算のときがいい機会と思い、パソコン会計をお勧めしても「じゃあ来年には考えるわ・・」とか「息子に代替わりするときにでも・・」などとはぐらかされたものです。次の決算といえば1年後、代替わりのときなどといっていたのではいつになることやら分かりません。
スピード重視の時代、まさにあり得ないようなのんびりとした反応だったのです。「世の中どんどん進んでいるのになあ・・・」と歯がゆい思いをしたことを覚えています。

「成功体験」ゆえなのか

こうやって、大企業も中小企業も同じように、スピード感がないところをみると、何ごとにも慎重で、できれば過去からのやり方を変えたくないという、日本人の心情がよく表れているのかも知れません。しかし、現代はまさに「破壊と創造」の時代です。営々と引き継いできたやり方も、スクラップアンドビルドしなければ今の経営としては通用しません。
日本人がかくも保守的なのは、戦後見事に経済を立て直し、かなり長い間世界の経済をリードしてきた、という「成功体験」がそうさせているからではないでしょうか。ここまで根深く勘違いさせるほど、日本経済の好調ぶりは長く続いたのです。



決められない者は去れ!って・・言われても・・


つづく

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