顧客ニーズとウォンツについて―顕在化した需要と潜在的需要について考える―Ⅲ
[何か大きなプロジェクト?]
以前、私が東京でマーケティングリサーチの会社を起業して、経営していたというお話は、これまでにも何回かしたと思います。
その仕事も比較的順調に受注が続き、忙しく働いていたときのことです。
ある日、それまでお付き合いのあった、日本最大級のエネルギー供給企業T電力のSさんから電話があり、依頼したい仕事があるので来てくれないか、ということでした。
打ち合わせに指定されたのは、それまで何度か行ったことのある本社ビルではなく、本社の近くにあるマンションの一室でした。
私ともう一人のスタッフの二人で訪ねて行くと、そこは少々古いながらも赤坂の一等地に建つ大きなマンションでした。
当時T電力などでは、なにか本業以外の大きなプロジェクトに取り掛かると、本社の中ではなく、こんな風に会社の外にマンションなどを借り上げて、そこを臨時のプロジェクト推進室に使っていたのです。
まさに、大企業ならではのやり方でした。
指定された部屋に着くと、Sさんとその日初めて会う数人のスタッフが待っていました。
挨拶をして名刺交換をすると、そのメンバーはT社の社員とこれまた日本最大手のゼネコンK建設の社員だったのです。
少し張り詰めた空気の中、私たちはなんだかよくわからないまま、広いリビングに通されました。
すると、そこにはこのプロジェクト用に準備されたのか、真ん中に大きなテーブルが設置されており、その上に大判の設計図面らしい青い紙が、半分に折り畳んだ状態で置いてありました。
ようやく全員がそのテーブルを囲むように揃うと、それを待っていたかのようにSさんが切り出しました。
「実は今度依頼したい案件はこれなんです。」
と、その大判の畳まれた用紙をバサリとみんなの目の前に広げたのです。
デカいプロジェクトか?!?
つづく