「駆け引き」ではなく「線引き」を明確に―どちらの土俵でどんな相撲を取るのか―Ⅶ
今日の目次
・とんでもなく高慢な態度を取りがち
・税理士資格者を統計的に見れば
・異なる業界出身の税理士の方が面白い?
・会計事務所に就職はしたものの
とんでもなく高慢な態度を取りがち
世間では、こんな見解を述べる人がいます。
それは「教師や医者は、学生を卒業してそのままその仕事に就くのではなく、一度、異なる業界で社会人経験をしてから、それらの専門職に就くべきではないか。」というものです。
何故こんなことを言われるのでしょうか。
たぶん、世間知らずの学生がいきなり「先生」と呼ばれる職業に就いた場合、本人がよほど気を付けないと、とんでもなく高慢な態度をとるようになる可能性が高いからにほかなりません。
実際、そうなるケースも多いようなのです。
現在、教員や医者が、その専門職に就くまでに、どんなプロセスを踏んでいるのかわかりませんが、そういった経験をあえて積ませる、というのも制度として取り入れた方がいいような気もします。
税理士資格者を統計的に見れば
さて、そういった文脈で考えたときに、我々会計人の業界はどうでしょうか。
やはり、税理士事務所などの勤務を経て、税務会計の専門分野を歩んできた人が多いと考えられます。
また、税理士資格保持者を統計的に見れば、税務署出身の人が全体の6割くらいで一番多数を占めます。この人たちは「ほかの業界」にいた、と言えば言えなくもありません。
しかし、税務署職員というのは、「ほかの業界」とは言い切れないような気もします。大きなくくりで考えれば、税務会計を専門分野とした税理士の業界と共通項の多い世界、と言っていいでしょう。
この税務署出身や税理士事務所出身の税理士さんの場合、基本的なものの考え方として、常に税務とか会計とかをベースにした考え方をするのではないかと思います。それが悪いとは言いませんが、様々なタイプの職域が存在する経営の世界から見ると、かなり限定的な分野からの出身であり発想をするということになります。
異なる業界出身の税理士の方が面白い?
私が今まで見てきた感想で言えば、面白い事務所経営、大きく発展した事務所などは、違う業界から転職してきた税理士先生が多いような気がします。そう幅広く緻密に調べたわけではありませんが、私の知っている範囲では、理系出身の先生或いは営業畑出身の先生などが、事務所を大きくしたりユニークな経営をなさったりしているようなのです。
全く異なる業界出身の税理士の方が面白い・・・これはどういうことか、と考えてみました。
理系出身の先生は、やはり数字に強いし、デジタル系のテクノロジーに対しても全く抵抗がないどころか得意分野でもあります。この二つの特長は、我々の業界にとって極めて重要な要素と考えられます。したがって、その分野を得意とするトップが率いる事務所が発展するのはそれほど不思議な話ではありません。
また、営業畑出身の先生は、言うまでもなく営業センスがあります。どんな業界であろうと、ビジネスをやっている限り営業はその根幹を成す業務といっていいでしょう。しかし、その営業に弱いのが会計人の特徴でもあるのです。同じ仕事を提供していても、営業に強い先生の事務所が抜きんでてくるのは、これも自然な現象といえましょう。
会計事務所に就職はしたものの
さて、そんな業界の中でも、私はまた違った経歴の持ち主ということになります。私は2代目税理士ですから、父の姿を見てきたと言う意味では、業界的な環境の中で育ったと言えなくもありません。
しかし私の場合、父が税理士という職業で稼いだお金で、充分な教育を受けさせてくれたことに感謝はしていましたが、特に業界や職業に対するシンパシーのようなものは感じていませんでした。
それどころか、父を見ていて、どちらかといえば自分には向いていない職業だろうなあ、と薄々感じていたのです。というわけで、大学卒業後、一応東京で公認会計士事務所に就職はしたものの、全くものにならず、ちょうど2年勤めたあと退職してしまったのです。
そこで、自分に向いた業界なり職業なりを見つければよかったのでしょうが、そうはなりませんでした。いわゆるフリーターをやりながら何年か過ごしてしまったのです。
これではいかん、と、その後大学院に入り直して論文を書き、税理士資格だけは何とか確保しました。しかし、すぐに税務会計方面の職業に就くこともなく、いろいろいきさつがあった末、友人と会社を設立したのでした。
大学を出て就職した頃の私。
真ん中で煙草を持って身体を曲げているすかした奴。
つづく