【親子問題】母親だけが暴力の対象になっている、父親はどう動けばいい?
本記事は2026年10月時点の法令に基づいて作成しています。具体的な対応を決める際は、最新の情報をご確認ください。
掃除や様子見のために子の部屋に入ったところ、見慣れない粉や植物片、他人名義のキャッシュカード、値札の付いたままの商品などが出てきた。こうした場面では、驚きと不安から、すぐに捨てる、本人を問い詰める、警察に電話するといった行動をとりたくなるものです。しかし、見つけた直後の動き方によっては、親御さん自身が法的な問題を抱えたり、子との関係がこじれたりすることがあります。本記事では、見つけた直後にしておきたいこと、避けたい行動、物の種類ごとの法律上の扱い、本人と話す前に整理しておきたいことを順に解説します。
見つけた直後にしておきたいこと
触らない・動かさない・持ち出さない
まず意識しておきたいのは、見つけた物にできるだけ手を触れず、その場に置いたままにすることです。袋を開けて中身を確かめたり、別の場所に移したりすると、後から「誰の物で、どこにあったのか」が分かりにくくなります。違法な薬物などの場合、手に取って保管しているだけで、親御さん自身が所持を疑われるおそれもあります。
写真とメモで記録を残す
触らずにできることとして、置かれていた場所と物の様子を写真に撮り、見つけた日時や状況をメモしておく方法があります。後で弁護士や相談機関に状況を説明するとき、記憶だけに頼らずに済みます。ただし、後述するとおり、他人の性的な画像や動画を親のスマホで撮影・複製することは避けてください。
危険が差し迫っているときは安全を優先する
拳銃や爆発物のように見える物がある、子が錯乱して暴れている、刃物を手にしているといった場面では、法的な整理よりも家族の身の安全が先です。その場を離れ、110番をためらわないでください。通報の判断の目安は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで、刃物については【親子問題】子が刃物を持ち出した|その場での判断と通報で解説しています。
捨てる・隠す・預かることの問題
子を守りたい気持ちから見つけた物を処分すると、かえって親御さんの立場が難しくなることがあります。主な行動と問題になりうる点を整理すると、次のとおりです。
| 親の行動 | 問題になりうる点 |
|---|---|
| 事件に関わる物を捨てる・隠す | 証拠隠滅罪(刑法104条)に当たる可能性があります。 |
| 違法な薬物などを自分の手元で保管する | 親自身が所持を疑われるおそれがあります。 |
| 盗品と知りながら預かる・売る | 盗品等保管罪・有償処分あっせん罪(刑法256条2項)が問題になります。 |
| 性的な画像を複製する・人に送る | 親自身が提供などの罪に問われるおそれがあります。 |
刑法には家族を対象とした特例があります。証拠隠滅については、犯人の親族が本人の利益のために行った場合に「刑を免除することができる」とされています(刑法105条)。盗品の保管などについても、直系血族や同居の親族の間で行われた場合には刑が免除されます(刑法257条1項)。ただし、どちらも罪が成立しないという意味ではなく、前者は免除されるかどうかが裁判所の判断に委ねられています。家族の特例の範囲は家族をかくまった|犯人蔵匿罪と親族の特例で詳しく解説しています。特例があることを前提に動くのではなく、見つけた物には手を加えないことが基本と考えておくのが無難です。
物の種類で変わる法律上の扱い
同じ「違法な物」でも、種類によって問題になる法律や、親が気をつけたい点は異なります。
| 見つけた物 | 考えられる問題 | 親が気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 粉・錠剤・乾燥植物、吸引器具 | 覚醒剤や大麻などの所持・使用 | 触らずに相談する。過量服薬の市販薬は医療の問題として扱う。 |
| 拳銃・改造銃・クロスボウなど | 銃刀法による所持の規制 | 危険を感じたら家族が離れ、110番を優先する。 |
| 他人名義の通帳・キャッシュカード・身分証、複数のスマホやSIM | 特殊詐欺や闇バイトへの関与、口座の不正な譲受け | カードを使ったり返しに行ったりしない。 |
| 値札付きの新品、同じ商品の大量保管 | 万引きなどの窃盗、盗品の転売 | 親が店に持って行く前に、返し方を相談する。 |
| 他人の性的な画像・動画、小型カメラ | 盗撮(撮影罪)、児童ポルノの所持 | 画面を撮影・転送しない。内容は言葉で伝える。 |
| 偽ブランド品の大量の在庫 | 販売目的であれば商標法の問題 | 個人で使う物か、売る物かを確かめる。 |
薬物らしき物を見つけた場合
薬物については、親に通報の義務があるのか、相談先ごとに何が起きるのかといった点を【親子問題】子の薬物使用に気づいた|通報すべきか迷ったときで詳しく解説しています。見つけた段階では、触らずに記録を残し、通報するかどうかを含めて落ち着いて考える時間をとることが大切です。
他人名義のカードやスマホを見つけた場合
他人名義の通帳やキャッシュカードを正当な理由なく譲り受けることは、犯罪収益移転防止法で処罰の対象とされています。複数のスマホやSIMカードは、携帯電話不正利用防止法との関係が問題になることもあります(【刑事事件】スマホやSIMを他人に渡した|携帯電話不正利用防止法での扱い)。こうした物は、子が特殊詐欺や闇バイトの「受け子」「出し子」として使われているサインである場合があります。指示役から脅されて抜けられなくなっていることもあるため、【親子問題】子が闇バイトに関わっていると分かった|親の立場でできること・してはいけないこともあわせてご覧ください。
性的な画像や小型カメラを見つけた場合
他人の性的な姿を同意なく撮影する行為は、性的姿態撮影等処罰法で処罰の対象です。また、18歳未満の子どもの性的な画像を自分の性的好奇心を満たす目的で所持することは、児童ポルノ禁止法で禁じられています。親御さんが証拠のつもりで画面を撮影したり、家族にスマホで送ったりすると、親自身が問題を抱えるおそれがあります。相談の際は、画像そのものを示すのではなく、言葉で状況を伝えるようにしてください。子が加害者の側にいる可能性がある場合の考え方は【親子問題】子が性犯罪の加害者側になった場合|改正後の罪名と、親が関われる範囲で整理しています。
子の部屋や持ち物を調べることの位置づけ
同居している家族が家の中の部屋に入ること自体が、直ちに犯罪になる場面は多くありません。ただし、子の年齢や調べ方によっては注意が必要です。
- 子が未成年であれば、親には監護・教育の権利と義務があり(民法820条)、危険な物がないかを確かめる余地は比較的広く認められます。
- 子が成人している場合、親に監督の権限はなく、私物を勝手に処分すれば子との間で損害賠償などが問題になることがあります。
- 封のされた手紙を開ける行為は、信書開封罪(刑法133条)に当たる可能性があります。
- 子のパスワードを使ってSNSやメールにログインする行為は、不正アクセス禁止法に触れるおそれがあります。
成人した子に対して親ができることの範囲は、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で解説しています。
本人と話す前に整理しておきたいこと
見つけたその日に本人を問い詰めると、物を処分されたり、家を出ていかれたり、感情的な衝突から暴力に発展したりすることがあります。話をする前に、次の点を整理しておくと落ち着いて向き合いやすくなります。
- 家族の中で、誰がどの場で話すのか。
- 子の年齢と、事件になった場合にどの手続に乗るのか。
- 暴力や自傷の危険がどの程度あるのか。
- 本人が関わりを認めた場合に、どこへ相談し、どう動くのか。
子の年齢によって手続は大きく変わります。20歳未満であれば少年事件として家庭裁判所の手続が中心となり、流れは【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までで紹介しています。成人であれば通常の刑事手続です。
本人が関与を認め、自ら警察に出向く意思を示した場合には、捜査機関に発覚する前であれば自首が成立し、刑が減軽されることがあります(刑法42条1項)。親が通報しても本人の自首にはならないため、出頭するかどうかは本人と弁護士で話し合ったうえで決めるのが望ましいでしょう。詳しくは自分から出頭すべきか|自首の成否と実務上の意味をご参照ください。
相談先の選び方
警察は犯罪の捜査を担う機関のため、具体的な氏名や事実を伝えれば、相談をきっかけに捜査が始まる可能性があります。警察に相談した後の見通しは【親子問題】家族が警察に相談した場合の流れ|相談から捜査・逮捕・処分までの見通しで解説しています。
一方、弁護士には法律上の守秘義務があり、ご相談の内容が本人の同意なく捜査機関に伝わることはありません。通報するかどうかを決める前の段階で、見つけた物の法的な意味と、とりうる選択肢を整理する場として使っていただけます(【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方)。
当事務所がお手伝いできること
当事務所では、親子の問題について弁護士が親御さんの代理人となり、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで対応しています。部屋で違法な物が見つかる背景には、金銭の要求やひきこもり、交友関係の問題が重なっていることも少なくありません。弁護士が見通しの整理や本人との話し合いの窓口を担い、カウンセラーが住まいや仕事など生活の立て直しを支えるという形で、親と子のそれぞれの自立を目指します。子が逮捕された場合や、20歳未満で事件になった場合の弁護人・付添人としての活動もお受けしています。サービスの概要は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。
よくあるご質問
見つけた物をすでに捨ててしまいました。どうすればよいですか
あわてて処分してしまうことは珍しくありません。大切なのは、それ以上ご自身の判断で行動を重ねないことです。何を、いつ、どのように処分したのかをメモに残し、早めに弁護士へ経緯を伝えてください。
子に知られずに相談することはできますか
弁護士への相談は、親御さんお一人でしていただけます。当事務所から子に連絡をとるのは、方針を決め、親御さんの了解を得てからです。
警察から問い合わせが来た場合はどうすればよいですか
事実と違う説明をすると、後で親御さんの立場が難しくなるおそれがあります。分からないことは分からないと伝え、答え方に迷う場合はその場で決めずに、弁護士に相談してから対応するのが無難です。子が逮捕された場合の初動は【親子問題】子が逮捕された|親が最初にすべきことで解説しています。
子の部屋で違法な物を見つけたときは、捨てるか通報するかの二択で考える前に、触らずに記録を残し、物の種類と子の年齢から何が問題になるのかを確かめることが出発点になります。一人で抱え込まず、判断に迷う段階でご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


