【親子問題】子がグループホームに入る選択肢はある?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は、障害者総合支援法にもとづく「共同生活援助(障害者グループホーム)」を前提に、2026年10月時点の制度をもとに解説しています。家賃の助成など自治体が独自に設けている制度は、お住まいの地域によって内容が異なります。


子が自宅で親と暮らし続けることに限界を感じたとき、「グループホームに入るという道はあるのか」というご相談を受けることがあります。親が先に年を重ねていくなかで、子の住まいを家の外にも用意しておきたいという思いは、多くのご家庭に共通するものです。

 ただ、グループホームは「親が子を預ける場所」ではなく、子自身が契約し、支援を受けながら暮らす「住まい」です。対象となる人、入居までの手続、費用の負担、そして親が決められることと決められないことを整理しておかないと、話が前に進まないまま時間が過ぎてしまうおそれがあります。この記事では、成人した子のグループホーム入居について、親の立場から押さえておきたい点をまとめます。

ここでいう「グループホーム」とは

 一口にグループホームといっても、いくつかの種類があります。たとえば認知症グループホームは、認知症のある高齢の方などを対象とする介護保険のサービスで、成人した子の住まいとして考えるものとは別の制度です。

 成人した子の住まいとして検討するのは、障害者総合支援法の「共同生活援助」にあたる障害者グループホームです。アパートやマンション、一戸建てなどで数人が共同生活を送り、世話人などのスタッフから相談や家事の援助、必要に応じて入浴・食事などの介護を受けながら暮らします。運営の形態によって、主に次の3つに分かれます。

類型特徴
介護サービス包括型ホームのスタッフが相談・家事・介護などをまとめて提供する形
日中サービス支援型昼夜を通じた支援体制があり、日中も住居で過ごす人を想定した形
外部サービス利用型日常の相談や家事はホームが担い、介護は外部の事業所が提供する形


 このほか、本体の住居の近くにあるアパートなどで、一人暮らしに近い形で生活する「サテライト型住居」を設けているホームもあります。

 また、民間の事業者が「自立支援施設」などの名称で運営している寮や施設は、ここでいう障害者グループホームとは別のものです。制度上の指定を受けた事業所でない場合、料金や解約の条件は契約ごとに大きく異なります。選ぶ前の確認点は【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思で解説しています。

入居の対象になるのはどんな子か

 障害者グループホームの対象は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含みます)のある方や、一定の難病のある方です。身体障害のある方については、65歳以上で初めて利用する場合に制限があります。

 障害者手帳を持っていることが入居の絶対条件というわけではなく、精神障害であれば、医師の診断書などをもとに障害福祉サービスの対象と認められる場合があります。もっとも、手帳があると手続を進めやすくなる面はあります。

 注意したいのは、ひきこもりや家庭内の不和そのものは、それだけでは入居の対象にならないという点です。グループホームは障害福祉サービスの一つですので、子に何らかの障害や疾患があり、支援が必要だと認められることが前提になります。子が医療につながっていない場合は、まず受診や相談の窓口につなぐところから考える必要があります。この点は【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断で詳しく解説しています。

入居までの一般的な流れ

 自治体や子の状態によって細かな違いはありますが、おおむね次のような順序で進みます。

  1. 市区町村の障害福祉の窓口や、相談支援事業所への相談。
  2. 障害福祉サービス(共同生活援助)の利用申請。
  3. 必要に応じた障害支援区分の認定調査と、医師の意見書の手続。
  4. 相談支援専門員による、本人の希望を踏まえたサービス等利用計画案の作成。
  5. 市区町村による支給決定と、障害福祉サービス受給者証の交付。
  6. 空きのあるホーム探しと、見学・体験利用。
  7. 本人とホームの運営事業者との利用契約、入居。


 実際には、受給者証の手続と並行してホーム探しを進めることも多く、順番が前後することもあります。また、地域によってはホームの空きが少なく、希望する場所にすぐ入れるとは限りません。見学や体験利用を早めに重ね、子にとって無理のない場所かどうかを本人と一緒に確かめていくことが大切です。

費用はどのくらいかかり、誰が負担するのか

 グループホームで暮らすときの費用は、大きく分けて次のようになります。

費用の種類負担の考え方
サービスの利用料原則として1割負担。所得に応じた月額の上限があり、市町村民税非課税世帯などは負担がない
家賃入居者の負担。市町村民税非課税の場合などは、月1万円を上限とする補足給付がある
食費・光熱水費入居者の負担
日用品・通院費など入居者の負担


 親として知っておきたいのは、18歳以上の障害のある方がサービスを利用する場合、利用料の上限を決める「世帯」の範囲は本人とその配偶者に限られるという点です。同居していた親の収入は、原則として子の利用料の判定には含まれません。

 家賃などの生活費は、子自身の障害年金や就労による収入、場合によっては生活保護でまかなう形が多く見られます。自治体によっては独自の家賃助成を設けているところもありますので、窓口で確認しておくとよいでしょう。生活保護の利用を考える場合は、【親子問題】ひきこもりの子に生活保護は使えるのか|世帯分離の考え方や【親子問題】生活保護の申請に同行するということ|扶養照会の実際も参考になります。

 親が当面の費用を援助することもできますが、いつまで、どの範囲で援助するのかを決めないまま払い続けると、子の生活が親からの援助に頼ったまま固定されてしまうことがあります。援助するのであれば、金額と期間をあらかじめ区切っておくことをおすすめします。

親が決めて入居させることはできない

 成人した子のグループホーム入居で、最も誤解されやすいのがこの点です。グループホームの利用は、子本人がサービスを申請し、運営事業者と契約して始まるものです。親が「入居してほしい」と考えても、子が拒んでいる以上、親の判断だけで入居させることはできません。

 子の判断能力が十分でなく、成年後見人などが選ばれている場合には、後見人が本人に代わって契約を結ぶことはあります。それでも本人の意思をできる限り尊重することが求められ、本人が強く拒んでいる住まいへ無理に移すことが認められるわけではありません。また、親であるというだけで、成人した子に代わって契約する権限があるわけでもありません。

 本人の同意なく連れ出す形の支援がなぜ問題になるのかについては、【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならないで解説しています。契約する人と支援を受ける人がずれる構造の危うさについては、【親子問題】契約するのは親、支援を受けるのは子|この構造のリスクもご覧ください。

 そのため、親にできるのは「入居させること」ではなく、「子がグループホームという選択肢を知り、自分で選べる状態を整えること」です。見学や体験利用に付き添う、相談支援専門員や主治医から説明してもらう、といった形で、子が実際の暮らしを思い浮かべられるようにしていくことが、遠回りに見えて近道になることも少なくありません。

家庭内で暴力や金銭の要求が続いている場合

 子から暴力を受けていたり、金銭の要求が続いていたりする家庭では、「グループホームに入ってもらえば落ち着くのではないか」と考えたくなるかもしれません。

 しかし、グループホームはほかの入居者と生活を共にする場所であり、暴力のある人を引き受けて行動を抑えるための施設ではありません。暴力や大きなトラブルが続いている状態では、ホームの側が受け入れを見合わせることがありますし、入居後にトラブルが起きれば、契約にもとづいて退去を求められることもあります。

 まずは親自身の安全を確保し、医療や関係機関につなぐことが先になります。この順序については【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で解説しています。また、子が入院した場合には、退院後の住まいとしてグループホームを検討する流れになることもあります。【親子問題】子が措置入院になった|退院後の受け入れをどうするかもあわせてご覧ください。

入居した後、親はどこまで関わるか

 入居が決まった後も、親との関わりがなくなるわけではありません。ただ、ホームでの暮らしは子自身の生活です。親が細かな点まで口を出し続けると、子が自分で生活を組み立てる機会を狭めてしまうことがあります。

 あらかじめ決めておくとよいのは、次のような点です。

  • ホームや相談支援専門員と親との連絡の窓口と頻度。
  • 面会や帰省の頻度。
  • 仕送りなど親からの援助の有無、金額、期間。
  • 子の金銭管理を支える担い手と方法。
  • 体調の変化やトラブルがあったときの連絡の流れ。


 金銭管理を第三者が担う仕組みについては、【親子問題】金銭管理を第三者が担う仕組み|日常生活自立支援事業と民間の支援者の違いで解説しています。

 また、グループホームは必ずしも「終のすみか」とは限りません。2024年4月に施行された改正障害者総合支援法では、一人暮らしなどを希望する入居者への支援や、退居後の相談なども共同生活援助の支援内容に含まれることが明確にされました。グループホームを、将来の一人暮らしに向けた途中の段階として位置づける考え方もあります。家を出て暮らすまでの全体の流れは、【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順や【親子問題】親亡き後問題|子の生活をどう設計しておくかも参考になります。

弁護士が関われる場面

 グループホームの入居手続そのものは、市区町村の窓口や相談支援事業所が中心となって進めるもので、弁護士がいなければ進まないものではありません。一方で、次のような場面では、弁護士が関わることで整理が進むことがあります。

  • 子との話し合いが親子だけでは感情的になり、前に進まない場面。
  • 子からの暴力や金銭の要求が続き、親が直接やり取りすることが難しい場面。
  • 入居や退去をめぐって、運営事業者との間で契約上の行き違いが生じた場面。
  • 親からの援助の範囲を、子との間で取り決めておきたい場面。


 当事務所では、親御さんの代理人として子と向き合い、自立支援カウンセラーとチームを組んで、住まい探しや仕事探し、生活保護の申請、日々の金銭管理などを支える取り組みを行っています。グループホームは、子の状態によってはその選択肢の一つになりえます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

まとめ


  • 成人した子の住まいとして考えるグループホームは、障害者総合支援法の共同生活援助にあたる障害者グループホームです。
  • 入居には子に障害や疾患があり、支援が必要と認められることが前提で、ひきこもりだけでは対象になりません。
  • 手続は市区町村の窓口や相談支援事業所への相談から始まり、支給決定を受けたうえで本人がホームと契約します。
  • 利用料の判定には原則として親の収入は含まれず、家賃などの生活費は本人の年金や収入などでまかなう形が多く見られます。
  • 親の判断だけで入居させることはできないため、子が自分で選べる状態を整えることが親の役割になります。
  • 暴力や金銭の要求が続いている場合は、入居の検討より先に親の安全の確保と、医療や関係機関へのつなぎが必要です。


 子がグループホームに入るかどうかは、最終的には子自身が決めることです。それでも、制度を知り、相談先とつながり、親が関わる範囲を決めておくことで、親子それぞれの暮らしを立て直す道筋は見えやすくなります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼