【親子問題】家庭内の事件で釈放された子が家に戻るのが怖いときは?
本記事は、2026年10月時点の法令と、公開されている警察の内部規則をもとに解説しています。実際の運用は、警察署や事案の内容によって異なることがあります。
「警察から、息子に話を聞きたいので署に来てほしいと連絡があった」「娘が任意で呼ばれているが、親として一緒に行ってよいのか分からない」。お子さんが警察に呼ばれたと知ったとき、多くの親御さんがまず考えるのは、自分も付き添えるのかという点ではないでしょうか。
結論からいえば、警察署まで一緒に行くこと自体は、多くの場合可能です。ただし、取調べの部屋に入って同席できるかどうかは、お子さんの年齢によって扱いが大きく変わります。未成年であれば保護者の立会いに配慮する仕組みがある一方、20歳以上の成人の場合、親が取調室に入ることは一般には認められていません。
この記事では、子が警察に任意で呼ばれている段階で、親がどこまで関われるのか、付き添う場合に何に気をつければよいのかを、年齢ごとに整理します。
「任意で呼ばれている」とはどういう段階か
警察が本人に「署に来て話を聞かせてほしい」と求めることを、一般に任意出頭や任意同行と呼びます。逮捕とは異なり、身体を拘束する手続ではありません。刑事訴訟法198条1項ただし書は、逮捕・勾留されていない被疑者について、出頭を拒むことも、出頭した後にいつでも退去することもできると定めています。
もっとも、正当な理由なく呼出しに応じない状態が続くと、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断され、逮捕の手続に進む可能性も否定できません。応じるかどうか、いつ応じるかは、事前に整理しておくことが大切です。詳しくは「任意同行」は断れるのか|断った場合に起きることでも取り上げています。
まず確かめたいのは「どの立場で呼ばれているか」
警察が話を聞く相手は、疑いをかけられている被疑者に限りません。事件を見聞きした参考人や、被害を受けた側として呼ばれることもあります。立場によって、聞かれる内容も、その後の見通しも変わります。
お子さんが警察から連絡を受けたときは、何の件で、どの立場で、いつ、どこの警察署の誰を訪ねればよいのかを、可能な範囲で確認しておくと、その後の準備が進めやすくなります。なお、参考人として呼ばれた場合でも、話の内容によって立場が変わることがある点は、『参考人』として呼ばれた|被疑者に切り替わる瞬間で解説しています。
親が付き添えるかは、子の年齢で大きく変わる
親の付き添いについて、法律に「親は取調べに同席できる」という一般的な定めはありません。そのうえで、少年(20歳未満)の事件については、警察の内部規則で保護者への連絡や立会いへの配慮が定められています。年齢ごとの目安は、次のとおりです。
| 子の年齢 | 警察署まで一緒に行くこと | 取調室での同席 |
|---|---|---|
| 18歳未満 | 多くの場合可能。警察から保護者に連絡が入るのが原則 | やむを得ない場合を除き、保護者などの立会いに配慮する扱いがある |
| 18歳・19歳 | 本人の意向を踏まえて可能なことが多い | 少年事件として扱われるが、運用は事案によって分かれることがある |
| 20歳以上 | 本人が望めば、署内の待合スペースまで同行できることが多い | 一般には認められない |
18歳未満の子の場合
少年の事件では、本人の年齢や特性に配慮した手続がとられます。例えば大阪府警察少年警察活動規程は、少年の被疑者を呼び出す際には原則として保護者等に連絡すること(29条2項)、必要に応じて保護者に同行を依頼すること(同条3項5号)、取調べにはやむを得ない場合を除き、同行した保護者その他適切な者を立ち会わせること(30条1項3号)を定めています。ほかの都道府県警察にも、同じ趣旨の規程が置かれています。
ただし、これは警察内部での配慮の定めであり、親に立会いを求める権利を保障したものではありません。虐待のおそれがある場合や、証拠隠滅のおそれがある場合などには、保護者への連絡や立会いが見送られることもあります。また、親が同席している場で、子が親に知られたくない事情を話しにくくなることもあるため、立ち会うかどうかは、お子さんの気持ちも踏まえて考えたいところです。
18歳・19歳の子の場合
18歳・19歳は民法上は成年ですが、少年法では「特定少年」として少年事件の手続の対象になります。一方で、親権に服する年齢ではないため、警察が親に連絡するか、立会いを認めるかは、本人の意向や事案の内容によって扱いが分かれることがあります。
この年代では、親が付き添いたいと考えても、本人が望まないこともあります。本人の考えを確かめたうえで、まず警察署まで一緒に行き、待合スペースで待つという形をとる家庭も少なくありません。
20歳以上の子の場合
成人の取調べに家族が同席することは、一般には認められていません。弁護士であっても、取調室への立会いは権利として認められておらず、実務上も多くの場合は断られます。この点は取調べに弁護人は立ち会えるのかでも解説しています。
とはいえ、警察署まで一緒に行き、終わるまで待つこと自体が禁じられているわけではありません。任意の取調べは途中で休憩を求めたり、退去したりすることもできるため、署の外で待っている家族の存在が、本人にとって支えになることもあります。成人した子の事件全般で親が関われる範囲は、【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことにまとめています。
警察署まで一緒に行くときに、親ができること
付き添う場合、親が取調べの中身に関わることはできませんが、本人が落ち着いて当日を迎えられるよう、周辺を整えることはできます。
- 呼出しの件名・立場・日時・担当者を、本人と一緒に確認しておくこと。
- 持病や服薬、障害の有無など、聴取の際に配慮が必要な事情があれば、事前に伝えられるよう準備しておくこと。
- 当日どのくらい時間がかかりそうか、帰りが遅くなる場合の連絡方法を、本人と決めておくこと。
- 本人の仕事や学校の予定と重なる場合に、日程の調整を申し出られることを伝えておくこと。
- 署内では待合スペースなどで待ち、取調べの内容を本人から無理に聞き出さないこと。
特に、発達障害や知的障害などがあり、相手に合わせて答えてしまいやすい傾向があるお子さんの場合は、事前の準備が重要になります。日程の組み方については、【刑事事件】取調べの日程を仕事に合わせられるか|当日にかかる時間と、複数回に及ぶ場合の組み立ても参考にしてください。
付き添う親が気をつけたいこと
子を心配する気持ちから、親がよかれと思ってとった行動が、かえって本人に不利に働くことがあります。次の点には注意が必要です。
事件の中身について口裏を合わせない
「こう答えたほうがよい」と親が話の内容を指示したり、関係者と連絡を取って説明をそろえたりすると、証拠隠滅を疑われる原因になりかねません。スマートフォンのやり取りを消すよう勧めることも同様です。供述の内容について迷いがある場合は、親が判断するのではなく、弁護士に相談することをおすすめします。
被害者に親が直接連絡しない
被害を受けた方がいる事件では、謝罪や弁償をしたいと考える親御さんも多いと思います。ただ、捜査中に加害者側の家族が直接連絡をとると、相手を不安にさせたり、働きかけと受け取られたりするおそれがあります。謝罪や示談の申入れは、弁護士を通じて進めるのが一般的です。
親自身が話を聞かれる場合もある
警察から、親にも家庭での様子などを聞きたいと求められることがあります。親が知っていることを答える場面では、推測や伝聞を事実のように話さず、見聞きしたことと聞いた話を分けて伝えることが大切です。親の話した内容が書面にまとめられ、後の手続で使われることもあるためです。
弁護士に依頼した場合にできること
お子さんが被疑者として呼ばれている場合や、どの立場なのかがはっきりしない場合は、出頭の前に弁護士へ相談しておくと、当日の対応を落ち着いて考えやすくなります。
刑事訴訟法30条2項により、被疑者の直系の親族である親は、子の年齢にかかわらず、独立して弁護人を選任することができます。逮捕される前の任意の段階でも同様です。ただし、実際の弁護活動は本人との信頼関係のうえに成り立つため、本人の意向も確かめながら進めることになります。弁護士に依頼した場合には、次のような対応が考えられます。
- 出頭の前に本人と打ち合わせ、聞かれそうな事項や答え方の注意点を整理します。
- 黙秘権の意味や、供述調書に署名する前に内容を確認し、訂正を求められること(刑事訴訟法198条4項・5項)を本人に説明します。
- 警察署まで同行して近くで待機し、休憩の合間などに本人が相談できるようにします。
- 必要に応じて、警察に取調べへの立会いを申し入れます。認められるかどうかは警察の判断によります。
- 被害者がいる事件では、弁護士を窓口として謝罪や示談の申入れを進めます。
- 少年事件として家庭裁判所に送られた後は、付添人として審判の手続に関わります。
弁護士に相談するタイミングについては【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味、黙秘を選ぶかどうかの考え方については黙秘したほうがよいのか|黙秘の効果とリスクの整理で詳しく解説しています。
よくあるご質問
成人した子が「親には来てほしくない」と言っています
20歳以上のお子さんであれば、付き添うかどうかは本人の意思が尊重されます。無理に同行すると、本人が心を閉ざしてしまうこともあります。当日の連絡方法だけを決めておき、必要なときに動けるよう準備しておくという関わり方も考えられます。
任意のはずなのに、夜になっても帰ってきません
任意の聴取が長引いている場合のほか、その日のうちに逮捕に切り替わっている可能性もあります。家族として確かめられることや、その後の動き方は、【刑事事件】家族が警察に呼ばれて帰ってこない|任意の聴取が長引くときで解説しています。逮捕されたと分かった場合は、【親子問題】子が逮捕された|親が最初にすべきこともあわせてご覧ください。
未成年の子が少年事件になった場合、この先はどうなりますか
少年事件は、原則としてすべて家庭裁判所に送られ、調査や審判を経て処分が決まります。成人の事件とは手続の流れが異なるため、【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判までで全体像を確認しておくと、見通しを立てやすくなります。
まとめ
- 子が警察に任意で呼ばれている段階でも、警察署まで一緒に行くことは多くの場合可能です。
- 取調室での同席は、未成年であれば保護者の立会いに配慮する扱いがありますが、20歳以上の成人では一般に認められていません。
- 付き添う親は、事件の中身について口裏を合わせたり、被害者に直接連絡したりすることは避けたほうがよいでしょう。
- 親は子の年齢にかかわらず弁護人を選任でき、出頭前の打ち合わせや警察署への同行を弁護士に依頼することができます。
お子さんが警察に呼ばれたとき、親としてどこまで関わるべきかは、子の年齢や事件の内容、本人の気持ちによって変わります。付き添うかどうかを迷っている段階でも、呼出しの内容を一緒に整理することで、当日までに準備できることが見えてくることがあります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


