【親子問題】世帯分離とは|住民票・保険・年金の扱い
家に来た親戚や訪問介護のヘルパー、荷物を届けに来た配達員に対して、同居している子が怒鳴ったり、きつい言葉を浴びせたりしてしまう。親として相手に申し訳なく思う一方で、「警察に通報されたらどうなるのか」「相手から責任を問われたら親が払わなければならないのか」と不安を抱えている方は少なくありません。この記事では、子の暴言が家の外の人に向いたときに生じうる法的な問題と、トラブルになった場面で親ができること、前もってできる備えを順に整理します。
本記事は2026年10月時点の法令に基づいて記載しています。2025年6月の刑法改正により懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されているため、法定刑はその表記で記しています。
家の外の人に向いた暴言は、家庭内の問題とは扱いが変わる
子の暴言が親に向いている間は、警察や行政に相談するかどうかを親が自分で決められます。しかし相手が来客や配達員になると、被害を受けたのはその人自身です。被害届を出すか、勤務先に報告するかは相手が判断するため、親が「家の中で収めたい」と考えても、そのとおりに進むとは限りません。
また、配達員や介護の担当者は仕事として家を訪れているため、会社や事業所が組織として対応を検討することもあります。2026年10月からは、事業者に対し、顧客などからの著しい迷惑行為から従業員を守る措置を講じることが義務づけられており、会社として配達方法やサービス提供の調整を申し入れてくる場面も考えられます。
来客や配達の場面で起きやすいトラブルを、相手ごとに整理すると次のとおりです。
| 相手 | 起きやすいこと | 親に及びうる影響 |
|---|---|---|
| 宅配便・郵便の配達員 | 玄関先で怒鳴る、受け取りの際に罵る | 配達会社からの連絡、受け取り方法の変更の申入れ |
| 親が招いた親戚・知人 | 訪問中に暴言を吐く、帰るよう迫る | 人間関係の悪化、来訪を控えられる |
| ヘルパー・ケアマネジャー・訪問看護師 | 支援中に威圧的な言葉を向ける | 事業所からの申入れ、担当者の交代や訪問の見直し |
| 検針員・修理業者・営業の訪問者 | 対応の場で暴言を吐く | 苦情、作業の中断 |
暴言はどこから犯罪として扱われるのか
暴言があったからといって、それだけで直ちに犯罪が成立するわけではありません。言葉の内容、周囲に人がいたかどうか、繰り返されているか、相手の仕事を止めてしまったかといった事情によって、問題になりうる罪が変わります。代表的なものは次のとおりです。
| 問題になりうる罪 | 典型的な言動 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 侮辱罪(刑法231条) | 周りに人がいる場で「バカ」「役立たず」などと罵る | 1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 |
| 名誉毀損罪(刑法230条) | 周りに聞こえる場で、具体的な事実を挙げて相手をおとしめる | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 脅迫罪(刑法222条) | 「殺すぞ」「ただでは済まさない」など、命や身体などに害を加えると告げる | 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 威力業務妨害罪(刑法234条) | 怒鳴り続けて配達や作業を続けられなくさせる | 3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 暴行罪(刑法208条) | 胸ぐらをつかむ、物を投げつける | 2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 |
侮辱罪と名誉毀損罪は、不特定または多数の人が知りうる状態で行われたこと(公然性)が要件とされており、玄関先で相手と一対一だった場合には成立しないこともあります。また、この2つは被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪です(刑法232条)。一方、脅迫罪や威力業務妨害罪は親告罪ではありません。侮辱罪の法定刑は2022年に引き上げられており、詳しくは侮辱罪の厳罰化で何が変わったのか|公訴時効と逮捕の可能性で解説しています。脅迫の線引きについては【親子問題】「殺す」と言われた|脅迫罪として扱われる線引き、仕事の妨げになる言動については店員に大声を出した|威力業務妨害の成立範囲もあわせてご覧ください。
一度の暴言で、すぐに逮捕されるとは限らない
相手が110番通報をすると、警察官が駆けつけて双方から事情を聞きます。注意で終わることもあれば、言葉が脅迫的だったり、身体への接触や繰り返しがあったりすると、後日あらためて事情を聞かれ、捜査が進むこともあります。逮捕されるかどうかは、事案の内容に加えて、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかといった事情も踏まえて判断されるため、一概には言えません。
いずれにしても、相手が被害を訴えた段階で、子本人が警察から話を聞かれる可能性はあります。親が代わりに説明しても、本人への聴取がなくなるわけではない点は押さえておきたいところです。
相手から苦情や請求が来たとき、親は責任を負うのか
来客や配達員から謝罪や賠償を求められたとき、多くの親御さんは「親として払わなければならないのではないか」と考えます。民事上の責任の考え方は、子の年齢や状態によって分かれます。
成人した子の言動は、子本人の責任が原則
他人に損害を与えた場合の賠償責任は、その行為をした本人が負うのが原則です(民法709条)。子が成人していれば、親であるというだけで、子の暴言について親が賠償する法的な義務を負うことは基本的にありません。暴言だけで、けがや物の損壊がない場合、相手の求めが謝罪や再発防止の約束にとどまることもあります。同じ考え方は近所とのトラブルにも当てはまり、【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任で詳しく整理しています。
未成年の子の場合
子が未成年でも、自分の行為の責任を理解できる程度の判断能力(責任能力)があれば、原則として子本人が責任を負います。責任能力がない年齢の子であれば、親が監督義務者として責任を負うことになります(民法714条)。また、責任能力のある未成年の子であっても、親が監督を怠ったことと損害との間につながりが認められる場合には、親自身の責任が問われることがあります。
精神的な不調がある場合の家族の責任
子が精神的な不調のために、自分の行為の責任を判断できない状態にあった場合、本人は賠償責任を負わないとされることがあります(民法713条)。このとき家族が責任を問われるかについて、最高裁判所は、同居している家族であるというだけで監督義務者にあたるわけではないとする一方、監督を現に引き受けていたとみられる特段の事情がある場合には、監督義務者に準ずる者として責任を負うことがあるという考え方を示しています(最高裁平成28年3月1日判決)。考え方の詳細は認知症の家族が事件を起こした|監督義務者の民事責任でも取り上げています。
親が自分の判断で謝罪や支払いをするとき
法的な義務がなくても、親として謝りたい、負担したいと考えるのは自然なことですし、謝罪そのものは法的な責任を認めることとは別に受け止められるのが一般的です。ただし、その場の勢いで「親がすべて責任を持つ」「今後何かあれば全額支払う」といった内容の書面に署名すると、後の話し合いで不利に働くおそれがあります。お金を支払う場合は、金額と対象を明確にし、これで解決とする旨を書面に残しておくことが大切です。判断の目安は【親子問題】示談金を親が払うべきか|払う場合の条件で解説しています。
トラブルになったその場で親ができること
子が来客や配達員に暴言を吐き始めたとき、親がまず考えたいのは、相手の安全とその場を落ち着かせることです。
- 子と相手の間に入り、子を玄関や部屋から離すか、相手にいったんその場を離れてもらいます。
- 相手にけががないか、持ち物や荷物が壊れていないかを確かめます。
- 事実の範囲で謝罪し、後日あらためて連絡できるよう連絡先を確認します。
- 子が手を出しそうなときや、相手が身の危険を感じているときは、ためらわずに110番します。
- その日のうちに、日時、相手、子の言葉、相手の反応、その後のやり取りをメモに残します。
その場で子を強く叱ったり、相手の前で言い争ったりすると、かえって子が興奮し、事態が大きくなることがあります。相手を守ることを優先し、子への対応は落ち着いてから考える、という順序を意識しておくと動きやすくなります。通報の判断に迷うときは、【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかも参考にしてください。
配達会社や事業所から連絡が来たら
後日、配達会社や介護事業所から連絡が来ることがあります。子の言い分だけをもとに反論せず、相手が把握している経緯を聞き取り、確認できた事実を落ち着いて伝えることが基本です。受け取り方法や訪問の見直しを提案された場合は、従業員を守るための措置でもあるため、できる範囲で協力することが関係を保つうえでも役立ちます。
相手が警察への相談や法的な対応を口にしている場合、あるいは親だけでは話し合いが難しい場合は、弁護士が窓口となって相手方と連絡を取ることも選択肢の一つです。窓口を代えることの意味は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で説明しています。
来客や配達をめぐって、前もってできる備え
同じことを繰り返さないためには、子と外部の人が顔を合わせる場面そのものを減らす工夫が役に立ちます。
- 荷物は置き配や宅配ボックス、コンビニや営業所での受け取りに切り替え、子が玄関で応対する場面を減らします。
- 配達の時間帯は、子が外出している時間や休んでいる時間に指定します。
- インターホンには親が出ると家族の中で決め、録画機能のある機器であれば、やり取りを記録として残せるようにしておきます。
- 親戚や知人と会うときは、外の店や相手の家を使い、子と顔を合わせない段取りにします。
- ヘルパーやケアマネジャーには、子の状態と過去の出来事をあらかじめ伝え、訪問の時間帯や対応の仕方を一緒に決めておきます。
支援者に事情を伝えることは、子を責めることではない
家の事情を外の人に話すことに抵抗を感じる方は多いものです。しかし、訪問する側が事情を知っていれば、時間をずらしたり二人で訪れたりといった工夫ができます。何も知らずに暴言を受けると、事業所として支援そのものを見直さざるを得なくなることもあります。親が介護を受けている場合は、支援が途切れないよう地域包括支援センターなどにも早めに相談しておくと安心です。高齢の親が被害を受けている場合の行政の関わり方は、【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みで取り上げています。
外の人への暴言は、家の中の状況を映していることがある
来客や配達員への暴言が見られる場合、家の中でも親への暴言や暴力、金銭の要求が積み重なっていることが少なくありません。外の人とのトラブルは、家の中で抱えてきた問題が表に出てきた場面と捉えることもできます。
強い苛立ちや被害的な受け止め方が続いている場合には、精神的な不調が背景にある可能性もあり、医療につなぐことを検討する場面もあります。判断の手がかりは【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断にまとめています。親自身の安全や記録の残し方については【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録、相談先の選び方については【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担をご覧ください。
当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子と向き合い、民間の自立支援カウンセラーとチームを組んで、子の生活の立て直しと親子それぞれの自立に向けた支援を行っています。外部とのトラブルへの対応とあわせて、家庭の状況そのものを見直したい場合は、【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問もご参照ください。
よくあるご質問
配達員への暴言について、会社から「警察に相談する」と言われました。どうすればよいですか
警察に相談するかどうかは会社や配達員本人が判断することで、親が止めることはできません。経緯を聞き取り、確認できた事実を誠実に伝えたうえで、警察が動いた場合は子本人が事情を聞かれる可能性があるため、その前に弁護士に相談し、本人がどのように対応するかを整理しておくと落ち着いて臨めます。
子本人に謝罪させるべきでしょうか
子が自分から謝りたいと言っている場合は、手紙など相手の負担にならない方法を検討できます。ただ、本人が納得していないまま相手と対面させると、その場で再び言い争いになるおそれがあります。相手も子と顔を合わせることを望まない場合が多いため、まずは親が事実の範囲で謝罪し、子本人の謝罪は相手の意向を確かめてから考えるのが無難です。
ご相談について
子の暴言が来客や配達員に向いたとき、親が責任をすべて背負い込む必要はありません。一方で、相手の安全を守り、事実を記録し、受け取り方や訪問の段取りを見直すことは、親だからこそできる備えです。外の人とのトラブルをきっかけに、家庭の中で続いてきた問題にも目を向けていただければと思います。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
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