自宅に捜索が入る条件|盗撮事件で家宅捜索が行われる場合

若井亮

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テーマ:風俗トラブル

自宅に捜索が入る条件|盗撮事件で家宅捜索が行われる場合

風俗店やホテルでの撮影が問題になったとき、最初に頭をよぎるのは「逮捕されるのか」という点だと思います。ただ、実際のご相談で多いのは、それより手前の段階の不安です。警察から連絡が来た、あるいは店ともめたまま数週間が過ぎた。そのあいだ、自宅に警察が来るのではないか、家族の前で部屋を調べられるのではないか、という心配が続きます。

 この記事では、自宅の捜索(いわゆる家宅捜索)がどのような条件で行われるのか、そして盗撮が問題になった事件で、なぜ撮影があったとされる場所ではなく自宅が対象になるのかを整理します。

 先にお断りしておきます。捜索を避ける方法や、データを見つからないようにする方法は扱いません。撮影されたとされる相手がいる事件であり、記録を消す・機器を処分するといった行為は、後で述べるとおりご本人にとっても不利に働きます。

「家宅捜索」は法律上どの手続を指すのか

 ニュースなどで使われる「家宅捜索」「ガサ入れ」は、法律上の用語ではありません。刑事訴訟法が定めているのは捜索差押えという二つの処分で、家の中を探すのが捜索、見つけた物を持ち帰るのが差押えです。実務ではこの二つをまとめた「捜索差押許可状」という一通の令状で行われます。

 根拠は刑事訴訟法218条1項です。捜査機関は、犯罪の捜査について必要があるときに、裁判官の発する令状によって捜索や差押えができるとされています。その前提として憲法35条1項は、住居や所持品について、正当な理由に基づいて発せられ、かつ捜索する場所と押収する物を明示した令状がなければ捜索・押収を受けないと定めています。

 言葉の対応関係を整理すると、次のようになります。

よく使われる言葉法律上の位置づけ主な条文
家宅捜索・ガサ入れ捜索(令状による強制処分)刑事訴訟法218条1項
押収差押え・領置などをまとめた言い方刑事訴訟法218条1項・221条
持って行かれた差押え刑事訴訟法218条1項
自分から渡した任意提出とそれに続く領置刑事訴訟法221条


 最後の「任意提出」は令状によらない手続ですが、いったん渡せば返還には所定の手続が要ります。「任意だから軽い」とは言えません。

令状が出るための三つの条件

 自宅の捜索は、警察の判断だけで実施できるものではありません。捜査機関が裁判官に令状を請求し、裁判官が審査して発付する、という順序を踏みます。審査で見られているのは、大きく次の三つです。

  1. 犯罪の疑いがあること。令状の請求にあたっては、被疑者が罪を犯したと思料されるべき資料を提供しなければならないとされています(刑事訴訟規則156条1項)。
  2. その場所に、押収すべき物が存在すると考えられること。とくに被疑者以外の人の住居などについては、「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り」捜索ができるとされています(刑事訴訟法102条2項、222条1項)。
  3. 捜索・差押えの必要があること。最高裁の決定(昭和44年3月18日)は、犯罪の態様や軽重、差し押さえる物の証拠としての価値や重要性、隠滅されるおそれの有無、処分を受ける人が受ける不利益の程度など、諸般の事情に照らして明らかに差押えの必要がないと認められるときにまで差押えを認めなければならない理由はない、としています。


 ここで押さえておきたいのは、令状が出たことは有罪と判断されたことではないという点です。裁判官が確認しているのは「疑うだけの資料があるか」「その場所に物がありそうか」「調べる必要があるか」であって、その人が犯人だと認定したわけではありません。

なぜ撮影の現場ではなく、自宅が対象になるのか

 風俗の場面で撮影が問題になった方から、いちばん多く受ける質問がこれです。撮ったとされているのは店やホテルの一室なのに、どうして自宅を調べられるのか、という疑問です。

令状は「犯行場所」ではなく「物がありそうな場所」に出る

 刑事訴訟法219条1項は、令状に、被疑者の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所などを記載しなければならないと定めています。ここで指定されるのは、犯行があったとされる場所ではなく、差し押さえるべき物が存在すると考えられる場所です。

 盗撮が疑われる事件で証拠として想定されているのは、多くの場合、画像や動画そのものと、それを記録した機器です。撮影の行為が店やホテルで行われたとしても、記録が残っているのは持ち帰った先、つまり自宅であることが少なくありません。携帯電話本体、パソコン、外付けの記録媒体、予備の機器、購入時の箱や明細。これらが自宅にあると考えられるからこそ、自宅が「捜索すべき場所」として書かれることになります。

場所ごとに別の令状が要る

 憲法35条2項は、捜索や押収は権限を有する司法官憲が発する「各別の令状」によって行うと定めています。実務上も、自宅、自動車、勤務先、実家などは、それぞれ別に令状の対象として検討されます。自宅の令状で隣室や別の建物まで調べられるわけではありません。

 一方で、同居していないご家族の家や交際相手の部屋についても、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況があると判断されれば、対象になり得ます(刑事訴訟法102条2項、222条1項)。「自分名義の家ではないから関係ない」とは言い切れない、ということです。

盗撮事件で自宅の捜索に向かいやすい事情・そうでない事情

 同じ「盗撮の疑い」でも、自宅まで捜索が及ぶ事件と、そこまで至らずに終わる事件があります。何がその分かれ目になるのかを、実務でよく見られる観点から整理します。

見られている点自宅の捜索に向かいやすい方向そうでない方向
記録媒体の所在端末が手元にない、処分・機種変更をしたその場で端末を提出し、内容も確認されている
疑われている件数複数件や常習性が疑われている1件のみで、経緯もおおむね一致している
認否の状況否認していて、客観的な裏づけが求められる事実関係を認め、供述と記録が整合している
撮影の方法小型カメラなど専用の機器を使った疑いがある手持ちの携帯電話1台で完結している
画像の行方他人に送った、販売したなどの疑いがある外部に出た形跡が見当たらない


 この表は可能性の傾き方を示したもので、右側に当てはまれば捜索されない、左側なら捜索される、という基準ではありません。事件ごとの事情や捜査の進み方によって判断は変わります。

令状がなくても捜索ができる場面

 例外として、逮捕をする場合に、逮捕の現場では令状なしに捜索や差押えができるとされています(刑事訴訟法220条1項2号、3項)。店やホテルでその場で取り押さえられ、現行犯逮捕に至ったようなケースがこれにあたります。

 ただし「逮捕の現場」の範囲は限られており、離れた場所にある自宅がここに含まれるわけではありません。自宅を調べるには、原則どおり令状が要ります。実務では、逮捕状と捜索差押許可状が同じ日に用意されることもあれば、逮捕のない在宅事件で自宅の捜索だけが先に行われることもあります。

いつ来るのか、何時に来るのか

 日時が事前に知らされることは、基本的にありません。証拠が動かされることを避けるためです。ただし、時間帯には条文上の制限があります。

 刑事訴訟法116条1項は、令状に夜間でも執行できる旨の記載がなければ、日の出前・日没後に人の住居などへ入ることはできないと定めています。日没前に着手していれば、日没後も継続できます(同条2項)。この制限は捜査機関の捜索にも準用されます(同法222条3項)。

 一方、同法117条は、旅館や飲食店その他夜間でも公衆が出入りできる場所については、公開している時間内であればこの制限によらないとしています。自宅と、営業中の店舗やホテルとでは、時間帯についての扱いが異なるということです。

 また、問題が起きてから捜索まで数週間から数か月が空くこともあります。映像や通信記録の照会、機器の解析には順番と時間がかかるためです。連絡がないことは、捜査が終わったことを意味しません。

何が持って行かれるのか

 差し押さえられるのは、令状の「差し押さえるべき物」に書かれた範囲のものです。実務では具体的な例示に加えて「本件に関係すると思料される一切の物」といった包括的な書き方がされることが多く、次のような物が対象になります。

  • 携帯電話、スマートフォン、タブレット、パソコン。
  • 外付けハードディスク、SDカード、USBメモリなどの記録媒体。
  • 小型カメラ、ウェアラブル機器、その充電器や付属品。
  • 機器の購入明細、保証書、箱。
  • 問題になっている日の行動と結びつく衣類や所持品。
  • クラウドサービスの控えやパスワードを書き留めたメモ。


 盗撮が問題になる事件に特有の事情として、自宅に保管されている画像そのものが、別の罪の対象として扱われる場合があります。性的姿態撮影等処罰法は、撮影の罪(2条)に加えて、そうした記録であると知りながら保管する行為(4条)や、不特定多数への送信(5条)も処罰の対象としています。「古いデータだから関係ない」と考えていたものが、新たな検討対象になることがあるということです。

 押収された物がいつ返るのか、中身がどこまで見られるのかについては、別の記事で詳しく扱っています。ここでは、押収の際に交付される押収品目録交付書(刑事訴訟法120条)を受け取って保管しておくという点だけ挙げておきます。

家族や同居している人にどう及ぶか

 捜索にあたっては、住居主やこれに代わるべき人を立ち会わせなければならないとされています(刑事訴訟法114条2項、222条1項)。ご本人が不在であれば、同居しているご家族が立ち会うことになります。ご本人も家族も不在の場合には、隣人や地方公共団体の職員が立会人になることもあります。

 また、令状で指定されているのは「場所」です。家の中にある物であれば、名義がご家族のものであっても、令状記載の差し押さえるべき物に当たると判断されれば対象になり得ます。捜索中は、許可なく出入りすることを禁じることもできるとされています(同法112条1項)。

 立ち会う側が何を確認でき、何は求められないのかについては、別の記事で扱っています。ここでお伝えしたいのは、同居している方に何も知られないまま自宅の捜索が終わる、という形は想定しにくいということです。連絡が来た段階で、伝え方を含めて考えておく意味はここにあります。

連絡が来た段階でやめておいたほうがよいこと

 捜索の可能性を意識したときに、かえって状況を悪くしやすい行動があります。

  • 画像の削除、端末の初期化、機器の処分。削除した記録が復元されることがあるうえ、削除や初期化を行った操作の痕跡自体が残ります。証拠を隠そうとしたと受け取られれば、逮捕の必要性の判断に影響します。
  • 機器や記録媒体を知人に預ける、実家に移す。預かった側を巻き込むことになります。
  • 店やキャストの方へ直接連絡を取ること。示談の申し入れであっても、当事者間の直接接触は誤解を招きやすい場面です。
  • 自己判断での断定的な説明。記憶があいまいな部分を推測で埋めた説明は、後から食い違いとして扱われます。
  • 内容を読まないまま書面に署名すること。


 なお、他人の刑事事件について証拠を隠滅する行為は刑法104条の証拠隠滅罪にあたりますが、自分自身の事件についての行為は、この条文では処罰されないと解されています。処罰されないことと、手続上不利にならないこととは別だ、という点にご注意ください。

弁護士に相談する意味

 自宅の捜索そのものを止めることはできません。ただ、その前後にできることはあります。

  • 捜査機関への申し入れ。関係する機器を任意に提出する意向を伝えるなどの対応を弁護人を通じて申し入れることがあります。結果として捜索という形をとらずに済む場合もありますが、応じてもらえるとは限りません。
  • 令状の内容の確認。罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所の記載と、押収された物との対応関係を確かめます。
  • 押収物についての手続。還付や仮還付を求める、処分に不服がある場合に裁判所へ申し立てるといった手続があります。
  • 相手方との対応。示談を含む交渉を、直接接触を避ける形で進めます。


 早く相談したからといって、望む結果が約束されるわけではありません。ただ、削除や処分といった選択を取る前に第三者の目を入れられること、家族への伝え方を含めて順序を組み立てられることには、実務上の意味があります。

まとめ

 この記事の要点を整理します。

  • 自宅の捜索は、裁判官が発付する令状に基づく強制処分で、拒むことはできない(刑事訴訟法218条1項、憲法35条)。
  • 令状の審査で見られているのは、犯罪の疑い、その場所に物がある状況、そして捜索・差押えの必要性の三つ(刑事訴訟規則156条1項、刑事訴訟法102条2項、最決昭和44年3月18日)。
  • 令状は犯行場所ではなく「物がありそうな場所」に出るため、撮影があったとされるのが店やホテルでも、記録の残る自宅が対象になる。
  • 自宅の捜索に向かいやすいかどうかは、記録媒体の所在、件数、認否、撮影の方法、画像の行方などの事情によって傾く。ただし当てはめれば結論が決まる基準ではない。
  • 削除・初期化・機器の処分は、復元される可能性と、手続上の不利という二つの意味で選ばない。


 当事務所では、初回のご相談を無料でお受けしています。ご連絡は24時間受け付けており、夜間や早朝も状況により対応しています。連絡が来た段階でも、まだ何も起きていない段階でも、判断材料を持っておくことには意味があります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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