スマホ・PCを押収された|いつ返るのか、中身はどこまで見られるのか
早朝や出勤前の時間帯に複数の警察官が玄関先に立ち、「令状が出ています」と告げる。いわゆる家宅捜索(ガサ入れ)は、多くの場合、前触れなく始まります。
このとき必ず求められるのが「立ち会い」です。ところが、立ち会った人に何ができて何ができないのかは、あまり整理されて語られていません。「立ち会えば違法な捜索を止められる」という説明も見かけますが、実際にできることは、そこまで広くはありません。この記事では、条文上の根拠を確認しながら、立ち会いでできることとできないことを分けて整理します。
家宅捜索は、断ることも延期することもできません
法律上の名前は「捜索」と「差押え」です
「家宅捜索」「ガサ入れ」は通称で、刑事訴訟法上は「捜索」と「差押え」にあたります。捜査機関は、犯罪の捜査をするについて必要があるときに、裁判官が発する令状によってこれらを行うことができるとされています(刑事訴訟法218条1項)。実務では、両方をまとめた「捜索差押許可状」1通で行うのが一般的です。
裁判官の審査を経た令状に基づく強制的な処分ですから、住んでいる人の同意は要件になっていません。「今日は都合が悪いので後日に」と申し入れても、日を改めてもらえるものではありません。実力で妨げようとすれば、捜査対象の事件とは別に公務執行妨害罪(刑法95条1項)が問題になり得ます。
令状は示されますが、渡されるわけではありません
令状は、処分を受ける者に示さなければならないとされています(刑事訴訟法110条、222条1項による準用)。ただし条文が求めているのは「示す」ことであって、交付までは求められていません。そのため、コピーを求めても、写真撮影を求めても、応じられないことが一般的です。
令状には、被疑者の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、有効期間などが記載されます(同219条1項)。なお、令状に夜間でも執行できる旨の記載がなければ、日出前・日没後に住居へ立ち入ることはできません(同116条1項、222条3項)。ただし日没前に着手していれば継続できます。
「立ち会い」には二つの意味があります
立会人は、手続を成り立たせるための要件です
人の住居などで捜索差押えを行うときは、住居主もしくは看守者、またはこれらの者に代わるべき者を立ち会わせなければならないとされています(刑事訴訟法114条2項、222条1項による準用)。これらの者を立ち会わせることができないときは、隣人または地方公共団体の職員を立ち会わせなければなりません。
この規定は、捜査機関の側に課された義務です。手続を外から見ている人を必ず置くことで、令状の範囲を超えた捜索や押収物の取り違えを防ぐ趣旨と理解されています。
本人の立会いは、捜査機関の判断による部分があります
一方、被疑者本人については、捜査機関は「必要があるときは、被疑者をこれに立ち会わせることができる」と定められています(同222条6項)。書き方は「できる」であり、本人の側から権利として立会いを請求できる規定にはなっていません。
もっとも自宅の捜索であれば、本人は同時に「住居主」でもあります。実際にはそのまま立会人になる例が多く、二つの立場が重なるために区別が意識されにくいのだと思われます。
| 項目 | 立会人としての立会い | 被疑者本人としての立会い |
|---|---|---|
| 条文 | 刑事訴訟法114条2項 | 刑事訴訟法222条6項 |
| 性質 | 捜査機関に課された手続上の要件 | 捜査機関が必要と認めたときの措置 |
| 本人の権利か | 求められる立場だが、応じる義務はない | 権利として請求する規定はない |
| 応じられないとき | 隣人または地方公共団体の職員が立ち会う | 本人不在のまま実施され得る |
立ち会いを欠いた捜索が違法とされた例もあります
2024年に報道された事案では、長野県警と岐阜県警が、勾留中の被告人に令状を示さず、本人を立ち会わせないまま自宅を捜索したことについて、長野地方裁判所松本支部が重大な違法があるとして押収物を証拠に採用しませんでした。これは地方裁判所支部の判断であり、同種の主張が常に通ると理解すべきものではありません。それでも、立ち会いと令状呈示が手続の適正を支える仕組みとして位置づけられていることは読み取れます。
立ち会いでできること
令状の記載を確認する
最初にできるのは、示された令状を読むことです。特に次の点が、後の判断に関わります。
- 罪名(どの事件として捜査されているのか)
- 被疑者として誰の氏名が書かれているか
- 捜索すべき場所(住居だけか、車や物置も含むのか)
- 差し押さえるべき物として何が挙げられているか
- 有効期間と、夜間執行に関する記載の有無
実務では、差し押さえるべき物の欄に、具体的な品目に続けて「本件に関係があると思料される一切の物件」といった包括的な記載が置かれることが少なくありません。令状に書かれた範囲は、想像より広く読まれることがあります。
範囲を超えていると感じたら、その場で述べる
令状に記載のない場所に立ち入ろうとしている、事件と関係がなさそうな物が持ち出されようとしている。そうした場面で、立会人はその場で疑問を述べることができます。捜査官がその指摘に従うとは限りませんが、異議を述べた事実そのものが、後の手続で意味を持つことがあります。
言い方は、抵抗ではなく確認の形にするのが現実的です。「その部屋も令状に入っていますか」という問いかけであれば、妨害と受け取られる危険を避けやすくなります。
押収品目録を突き合わせ、弁護士に連絡する
押収があった場合、捜査機関はその目録を作り、所有者・所持者・保管者などに交付しなければならないとされています(刑事訴訟法120条、222条1項による準用)。実務では「押収品目録交付書」という書面が渡されます。後で返還を求めるときの起点になりますから、品名や数量が実物と合っているかをその場で確認できます。
また、逮捕されていない状態であれば、その場で電話を使うことを一律に禁じる規定はありません。弁護士へ連絡し、令状の記載を伝えて助言を受けることは実際に行われています。ただし執行中は、何人に対しても許可を得ないでその場所に出入りすることを禁止できるとされており(同112条1項、222条1項による準用)、連絡のために外へ出ることまで自由にできるわけではありません。
立ち会いでできないこと
捜索そのものを止める・日を改めさせる
立会人が反対しても、手続は進みます。錠を外し、封を開き、その他必要な処分をすることもできるとされていますので(刑事訴訟法111条1項、222条1項による準用)、鍵をかけた場所を開けない、という対応も通りません。
弁護人としての立会権を主張する
起訴後の段階については、検察官・被告人・弁護人が差押状や捜索状の執行に立ち会うことができるという規定があります(刑事訴訟法113条1項)。しかし、捜査段階に関する準用規定である222条1項は、この113条を準用していません。
つまり被疑者段階では、弁護人であることを理由に立会いを求める法律上の根拠がありません。「弁護士が来るまで待ってください」という申入れが通らないのは、このためです。
押収される物を選ぶ
どの物を差し押さえるかは、令状の記載と事件との関連性をもとに捜査機関が判断します。立会人が「これは持って行かないでほしい」と述べることはできますが、選別する権限はありません。
| できること | できないこと |
|---|---|
| 令状の記載を読んで確認する | 捜索を止める、延期させる |
| 範囲を超えていないか指摘する | 令状の写しや写真を必ず受け取る |
| 押収品目録と実物を突き合わせる | 弁護人としての立会権を主張する |
| 目録の交付を求める | 押収される物を選ぶ |
| その場で弁護士に連絡する | 捜索中に自由に出入りする |
立会人になること自体は断れますが、代わりの人が呼ばれます
114条2項は、立会人を置くことを捜査機関に義務づけた規定であって、住居主に立ち会う義務を課したものではありません。そのため、立会人になることを断ること自体は可能です。ただし、断れば捜索が中止されるわけではなく、隣人または地方公共団体の職員が立ち会うことになります。実務でも、市区町村の職員が立会人となる例があります。
- 自分が立ち会えば、令状の記載や押収の経過を自分の目で確認できる
- 立ち会わなければ、何が持ち出されたのかを目録でしか把握できない
- 一方で、隣人が立会人になれば、近隣に事情が伝わる可能性が生じる
本人が不在のとき・会社や店舗のとき
同居する家族が立ち会うことも珍しくありません。この場合、家族は「住居主に代わるべき者」として立ち会っていることになります。事件の内容を知らないことが多く、分からないことを推測で答える必要はありません。
会社や店舗が対象になった場合は、看守者またはこれに代わるべき者が立会人になります。書類やサーバーが対象になると営業への影響が長引くため、押収の範囲と返還の見通しを早めに確認しておく必要があります。
弁護士に立ち会ってもらうことはできるのか
弁護人としての固有の立会権がないことは前述のとおりです。もっとも114条2項は、立会人として「住居主若しくは看守者又はこれらの者に代わるべき者」を挙げています。住居主から委任を受けた代理人として、弁護士が立ち会うことは可能と解されています。委任状など、代理人であることを示せる資料を求められることがあります。
ただし家宅捜索は予告なく行われるのが通常で、連絡から到着までには時間がかかりますから、最初から立ち会えるケースは限られます。それでも、途中からの立会いや電話での助言に意味がないわけではありません。押収の範囲についてのやり取りが残っている段階であれば確認できることがありますし、その後に続く手続に向けた準備を、その日のうちに始められます。
スマートフォン・パソコンをめぐる場面
差し押さえるべき物が電磁的記録に係る記録媒体であるときは、執行をする者は、処分を受ける者に対し、電子計算機の操作その他の必要な協力を求めることができるとされています(刑事訴訟法111条の2、222条1項による準用)。条文は「協力を求めることができる」という書き方であり、応じなかった場合の罰則は定められていません。ロックを解除しなかったこと自体が犯罪になるわけではありません。
もっとも、拒めば有利になると単純に言えるものでもありません。端末そのものは差し押さえられ、解析が進むこともあります。その後に逮捕・勾留の要否が検討される場面では、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかどうかも判断材料になります。黙っていること自体は権利ですが、現場での対応の全体が後の判断に影響し得るという関係にあり、事案ごとに助言を受けたほうがよい部分です。
なお、捜索中の「これは何ですか」といったやり取りは、形式上の取調べではありませんが、聞き取った内容は報告書などの形で残ります。分からないことは「はっきり覚えていません」と述べておくほうが、結果として正確です。
現場で避けたほうがよい行動
- 実力で押し戻す、腕をつかむなどの有形力を用いる(公務執行妨害罪が問題になり得ます)
- 物を隠す、壊す、データを削除する(復元されることがあり、罪証隠滅のおそれの評価にも直結します)
- 関係者に連絡して口裏を合わせようとする
- 記憶があいまいなまま、断定的に説明する
- 示された書面に、内容を読まずに署名する
最後の点について補足します。捜索差押調書や押収品目録の受領書に署名を求められることがありますが、内容を読み、事実と違う記載があればその場で述べてから対応するのが基本です。押収された物の数や品目が実物と違うと感じたときは、署名の前が申し出るタイミングになります。
捜索が終わった後にできること
目録を保管し、その日のうちに記録を残す
交付された押収品目録交付書を確実に保管してください。あわせて、捜索の開始・終了時刻、捜査官のおおよその人数、告げられた警察署名、どの部屋がどの程度調べられたか、どのようなやり取りがあったかを、覚えている範囲で書き残しておくと役に立ちます。
還付・仮還付を求める
押収物で留置の必要がないものは、事件の終結を待たずに還付しなければならないとされています(刑事訴訟法123条1項)。また所有者などの請求により、仮に還付することもできるとされています(同条2項)。これらは捜査機関の押収についても準用されており(同222条1項)、最高裁も捜査機関に対する還付請求権を認める判断を示しています(最高裁平成15年6月30日決定)。
仕事で使うパソコンなどが押収されて業務に支障が出ている場合には、返還時期の見通しを尋ねたり、必要な範囲でのデータの複製を相談したりすることが考えられます。応じられるかは捜査の状況によりますが、何も言わなければ検討されない部分でもあります。
また、司法警察職員がした押収に関する処分に不服がある者は、その所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所に、処分の取消しまたは変更を請求することができます(同430条2項)。準抗告と呼ばれる手続です。
その後の展開は一つではありません
家宅捜索を受けたことは、逮捕を意味しません。その日のうちに逮捕に至る例もありますが、次のように分かれます。
- その場で逮捕され、身体拘束のまま手続が進む
- その日は逮捕されず、後日、任意の出頭や取調べを求められる
- 押収物の解析に時間がかかり、しばらく連絡がない
三つ目の場合、連絡がないことは事件が終わったことを意味しません。解析の結果を踏まえて動きが出ることがあります。落ち着いた時間があるうちに準備を進められる期間、と捉えたほうが現実に近いといえます。
早い段階で弁護士に相談する意味
家宅捜索が行われたということは、裁判官が令状を発付する程度には証拠の存在が疑われている状況だということです。その一方で、その時点で事件の見通しが決まっているわけでもありません。
- 令状の記載から、どの範囲の事件として扱われているのかを整理できる
- 押収された物から、今後どのような立証が試みられるのかを想定できる
- 逮捕の可能性がある場合に、身元引受けや監督の体制を先に整えられる
- 出頭や取調べを求められたときの受け答えを、事前に準備できる
当事務所では初回のご相談を無料でお受けしており、24時間体制でご相談を受け付けています。出頭や自首への同行は全国で対応しており、状況により夜間・早朝の対応が可能な場合もあります(移動にかかる費用は別途となります)。
まとめ
- 令状に基づく捜索差押えは強制的な処分であり、断ることも延期させることもできない
- 立会人は捜査機関に課された手続上の要件であり(刑事訴訟法114条2項)、被疑者本人の立会いは捜査機関が必要と認めたときの措置である(同222条6項)
- 立ち会いでできるのは、令状の記載の確認、範囲についての指摘、押収品目録との突き合わせ、弁護士への連絡である
- 捜索を止めること、弁護人としての立会権を主張することはできない(222条1項は113条を準用していない)
- 立会人になること自体は断れるが、隣人や地方公共団体の職員が立ち会うことになる
- 弁護士は、住居主の「代わるべき者」として立ち会える場合がある
- 終わった後は、目録の保管、還付・仮還付の請求、押収に関する処分への準抗告といった手続がある
その場でできることは限られています。だからこそ、限られた範囲で何を確認し、何を残しておくかが、その後の手続に効いてきます。捜索を受けた日のうちに、記憶が新しいままご相談いただくことをお勧めします。


