【ストーカートラブル】被害者等通知制度を使う|相手の処分や出所の時期を知る
車の点検で見覚えのない小さな機器が見つかった、スマートフォンに「不明なトラッカーが一緒に移動しています」という通知が出た、行き先を知っているかのような連絡が届く。こうしたきっかけで、車にGPS機器や紛失防止タグが付けられていたと分かることがあります。見つけた瞬間は動揺しやすいものですが、その後の数日の動き方によって、警察や弁護士が取れる手段の幅が変わることがあります。この記事では、車に位置情報を把握する機器を付けられていた場合に、まず何をしておくとよいか、法律上どのように扱われるのかを順に整理します。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(紛失防止タグの規制追加・職権による警告の創設)を反映した内容です。個別の事案での扱いは、事情によって異なることがあります。
車にGPSを付けられていたと気づく場面
車に取り付けられる機器には、通信回線を使って位置を送るGPS発信機と、AirTagのように周囲のスマートフォンを介して位置を知らせる紛失防止タグの大きく2種類があります。どちらも小型で、磁石や両面テープで簡単に固定できるため、気づかないまま使い続けているケースも少なくありません。
気づくきっかけとして多いのは、車検や修理の際に整備士から指摘される場面、スマートフォンの追跡検知機能による通知、そして相手が自分の行き先を知っているような言動を見せる場面です。弁護士ドットコムなどの相談事例でも、「車の下に磁石で取り付けられていた」「車検に出したら見つかった」といった経緯が多く見られます。
取り付けられやすい場所
位置情報の機器は、短時間で取り付けられ、目に付きにくい場所に置かれる傾向があります。点検するときは、次のような場所が目安になります。
- 車体の下部や、金属部分に磁石で貼り付けられた箱型の機器。
- バンパーの裏側やタイヤハウスの内側。
- 座席の下、トランク、スペアタイヤの周辺。
- シガーソケットや車両診断用の端子に差し込まれた機器。
自分で探しても見つからない場合でも、不安が続くようであれば、整備工場や専門の調査業者に確認を依頼する方法もあります。
見つけた直後にしておきたいこと
機器を見つけたときに大切なのは、身の安全を優先しつつ、あとで「誰が、いつ、何をしたか」を確かめられる状態を残しておくことです。慌てて外して捨ててしまうと、相手をたどる手がかりが失われることがあります。
まず自分の安全を確かめる
機器が付いていたということは、相手が自宅や勤務先、よく行く場所をすでに把握している可能性があります。相手が近くにいる気配がある、脅すような連絡が来ているといった差し迫った状況であれば、ためらわずに110番通報をしてください。また、機器を外すと位置情報が途絶えるため、相手がそれに気づいて行動を変えることも考えられます。外すかどうかは、安全の確保とあわせて考えることが大切です。
外す前に写真と動画で記録する
機器が付いていた位置と状態を、外す前に撮影しておきます。車全体と取り付け位置の両方が分かる写真があると、どこに付けられていたかを説明しやすくなります。
- 取り付けられていた位置を、車全体と近くからの両方で撮影すること。
- 発見した日時、場所、気づいたきっかけをメモに残すこと。
- 機器にはなるべく素手で触れず、手袋を使うか袋に入れて保管すること。
- 最近、車をどこに停めていたか(自宅の駐車場、勤務先など)を書き出すこと。
- 相手からの連絡や、行き先を知られていると感じた出来事を時系列で整理すること。
取り外すかどうかは警察と相談する
差し迫った危険がない場合は、機器を付けたまま、または記録を取ったうえで保管した状態で、最寄りの警察署に相談する流れが考えられます。警察相談専用電話「#9110」で相談先を案内してもらうこともできます。機器そのものが重要な手がかりになるため、壊したり捨てたりせず、そのまま持参できるようにしておくとよいでしょう。証拠の残し方については証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはでも整理しています。
車へのGPS取り付けは法律上どう扱われるか
他人の車に無断でGPS機器を取り付けて位置を把握する行為は、取り付けた人の目的や関係性によって、問題になる法律が変わります。
ストーカー規制法の「位置情報無承諾取得等」
以前は、車にGPSを付けて位置を把握する行為がストーカー規制法の「見張り」にあたるかが争われ、最高裁判所が2020年7月に、これにあたらないとする判断を示しました。この判断を受けて法改正が行われ、2021年8月26日から、相手の承諾なくGPS機器等で位置情報を取得する行為や、GPS機器を取り付ける行為が規制の対象になりました(ストーカー規制法2条3項)。
さらに、AirTagのような紛失防止タグは従来の規制では対象外とされていましたが、2025年の法改正により、2025年12月30日から紛失防止タグを使った位置情報の無承諾取得や取り付けも規制対象に加わっています。
これらの行為は、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みを晴らす目的で行われた場合に規制の対象になります。1回の取り付けでも警告や禁止命令の対象となり得るほか、繰り返されて「ストーカー行為」にあたる場合は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。禁止命令に違反した場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と、より重く扱われます。法改正の詳しい内容はGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪で解説しています。
恋愛感情が目的ではない場合
探偵による調査、夫婦間の浮気調査、職場の人間関係など、恋愛感情以外の目的で取り付けられた場合は、ストーカー規制法の対象にならないことがあります。ただし、その場合でも何も問えないわけではありません。
| 場面 | 問題になり得る主な法的手段 |
|---|---|
| 恋愛感情や恨みによる取り付け | ストーカー規制法による警告・禁止命令・刑事処罰 |
| 配偶者による取り付け | ストーカー規制法・DV防止法の対象となる場合がある |
| マンションの駐車場や自宅の敷地に入っての取り付け | 住居侵入罪などが問題になる場合がある |
| 目的を問わず無断で位置を把握された | プライバシー侵害を理由とする損害賠償請求 |
どの法律で扱えるかは、相手が誰か、どこで取り付けられたか、ほかにどのような行為があったかによって変わります。判断に迷う場合は、記録を持って専門家に確認するのが確実です。配偶者からの場合の考え方はストーカー規制法とDV防止法の違い|自分のケースはどっちで守られる?もご覧ください。
警察に相談した後の流れ
警察に相談すると、事情の聴き取りや機器の確認が行われ、状況に応じて相手への警告や、公安委員会による禁止命令へと進むことがあります。2025年12月30日からは、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できるようになりました。危険が差し迫っている場合には、事前の聴聞を経ずに出される緊急の禁止命令という仕組みもあります。手続の流れは【ストーカートラブル】禁止命令を出してもらうには|申出の方法と出るまでの期間や【ストーカートラブル】緊急の禁止命令とは|聴聞を経ずに出る場面で詳しく説明しています。
「様子を見ましょう」と言われたとき
相談事例の中には、機器を持って警察に行ったものの、ほかに実害がないとしてパトロールの強化にとどまったという声もあります。その場合でも、相談した記録は残ります。その後に新たな接触や不審な出来事があれば、日時と内容を記録し、改めて相談することで対応が進むことがあります。次に取れる手段は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段でまとめています。
弁護士に相談するとできること
弁護士は、警察の手続と並行して、または警察が動きにくい場面で、民事の手段を組み立てることができます。
- 相手が分かっている場合は、代理人として連絡をやめるよう求め、接触禁止や違約金を定めた合意書を取り交わすことを目指します。
- 無断で位置を把握されたことによる精神的苦痛について、慰謝料などの損害賠償を請求できる場合があります。
- 接近を止めたいときは、警察の禁止命令とは別に、裁判所の仮処分を検討することもあります。
- 相手が誰か分からない場合は、警察への相談を後押ししながら、たどれる手がかりを整理します。
どちらに先に相談するか迷うときは、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序も参考にしてください。
よくあるご質問
見つけたGPS機器を自分で壊したり捨てたりしてもよいですか
お勧めしません。機器は、誰が契約したものかをたどる手がかりになることがあり、捨ててしまうとその手がかりが失われます。また、機器そのものは取り付けた人の所有物である場合もあるため、壊さずに保管し、警察に相談する際に持参するのが無難です。
車以外にも何か仕掛けられていないか心配です
車に機器が付いていた場合、スマートフォンの位置情報共有の設定や、持ち物、自宅の周辺なども確認しておくと安心です。位置情報以外の経路については【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで、室内の機器については【ストーカートラブル】自宅に盗聴器が仕掛けられているかもしれない|調べ方と法的な手段で解説しています。
誰が付けたのか心当たりがありません
心当たりがない場合でも、警察への相談は可能です。発見した場所や時期、駐車場所の記録が、相手を絞り込む手がかりになることがあります。相手が分からないときの進め方は【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方をご覧ください。
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車に機器を見つけたら、まず記録と相談を
車にGPS機器や紛失防止タグが付けられていたと分かったときは、身の安全を確かめたうえで、外す前に記録を残し、機器を保管して相談につなげることが大切です。法改正によって、GPS機器だけでなく紛失防止タグを使った追跡も規制の対象となり、警察が職権で警告できる仕組みも整いました。一人で抱え込まず、早めに相談することをお勧めします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


