別れた後も位置情報を見られている|共有アプリ・見守りアプリの解除と法的対応

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

 交際していたときに、お互いの安心のために位置情報共有アプリを入れた。家族の見守り機能に相手を追加した。当時は自然な流れだったのに、関係が終わった後もその共有が生きたままになっている——こうしたご相談は、男女どちらの立場からも寄せられます。

 「行った先を後から言い当てられた」「引っ越したのに新しい住所を知られていた」。そこで初めて共有が残っていたと気づく方も少なくありません。

 このコラムでは、自分が同意して始めた共有が別れた後も続いているという状況に絞って、法的な位置づけと、実務上どう動くかを整理します。

この記事の要点

  • 「無断で取り付けられた」場合と「自分で共有をオンにした」場合は、法的な評価の入口が違います
  • 一度した承諾は後から撤回でき、撤回後の取得は「承諾を得ないで」の取得と評価され得ます
  • 解除の前に、位置情報が伝わり得る経路を棚卸ししておくことが重要です
  • アプリの解除だけでは止まらないケース(アカウントや契約名義を相手が握っている場合)があります
  • 位置情報に関する類型は、他のつきまとい行為と違って「不安を覚えさせるような方法」という限定が付きません

1.「取り付けられた」型と「共有をオンにした」型を分けて考え

 位置情報の追跡というと、車やかばんに機器を取り付けられる、無断でアプリを入れられる、といった場面が思い浮かびます。この型は、相手が最初から隠れて行うため、違法性を指摘しやすい類型です。

 一方で、ご相談として多いのは次のような型です。

  • 交際中に、自分でアプリをインストールし、相手をメンバーに追加した
  • スマートフォンの標準機能で、相手と位置情報を共有する設定にした
  • 家族向けの見守り機能・ファミリー共有に、相手を加えた

 この型では、開始時点では確かに本人の同意があります。そのため「自分が同意したのだから文句を言えないのではないか」と考えて相談をためらう方がいらっしゃいます。ここが最初の分岐点です。

 なお、無断で機器やアプリを仕込まれた型や、紛失防止タグを使われた型については、別のコラム(GPS・紛失防止タグによる位置情報の無承諾取得)で扱っています。

2.一度した承諾は、後から撤回できる

撤回後の取得は「承諾を得ないで」の取得と評価され得る

 ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、相手方の承諾を得ないで、その所持する位置情報記録・送信装置に係る位置情報を取得する行為などを「位置情報無承諾取得等」として規制しています(同法2条3項)。

 ここでいう「位置情報記録・送信装置」は、専用のGPS機器に限られません。同法施行令1条は、衛星測位の技術によって得られる位置情報を記録し、または送信する機能を有する装置と定めており、その機能を備えたスマートフォンも含まれ得ると解されています。取得の方法についても、画面上で位置情報を見る行為などが施行令で定められています。

 そして、承諾は将来に向かって撤回することができると考えられます。交際中に共有を承諾していたとしても、関係が終わり、共有をやめてほしいと伝えた後は、承諾がない状態です。その後も相手が位置情報を見続けている場合、「承諾を得ないで」取得しているという評価に至り得ます。

 もっとも、実務では撤回を伝えた事実が残っているかが分かれ目になりやすいところです。設定だけを静かに切った場合、後から「やめてほしいと言われていない」と主張される余地が残ります。この点は後述します。 

位置情報の類型には「不安を覚えさせるような方法」の限定が付かない

 ストーカー規制法のつきまとい等のうち、待ち伏せ、監視していると告げる、面会を要求するなどの類型は、身体の安全・住居等の平穏・名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で行われた場合に限って規制対象になります。

 これに対し、位置情報無承諾取得等には、この限定が付いていません(警視庁の解説でも、限定は電子メールの送信等までの行為に係るものとされています)。位置情報を無断で取得されれば監視されていると感じるのが通常だという考え方によるものです。

 つまり、直接の接触や暴言がなく、ただ黙って見られているだけの状態でも、規制の対象になり得ます。「何もされていないから相談しても仕方がない」と考える必要はありません。

3.解除の前に、位置情報が伝わり得る経路を棚卸しする

 一つのアプリを消して安心してしまうと、別の経路が残ったままになります。相談の前に、次の観点で洗い出しておくと話が早く進みます。

アプリ・OSの共有設定

  • 位置情報共有アプリのメンバー一覧(招待中・保留中も含む)
  • スマートフォン標準の「探す」系機能の共有相手
  • 地図アプリの現在地共有(期限を設けていない設定になっていないか)

アカウントとファミリー機能

  • 同じアカウントで相手の端末にログインしたままになっていないか
  • ファミリー共有・見守り機能の管理者が相手になっていないか
  • 保護者向け管理アプリが入っていないか

契約・名義

  • 端末や回線の契約者・支払者が相手になっていないか
  • 通信会社の見守り系オプションが付いていないか

モノに紐づくもの

  • 紛失防止タグ、スマートウォッチ、イヤホンなど位置が分かる機器
  • 自動車のコネクテッドサービス、自転車・バイクのGPS機器
  • 相手が管理者になっているスマート家電・見守りカメラ

情報として漏れるもの

  • 写真の位置情報(ジオタグ)、共有アルバム
  • SNSの投稿に写り込む生活圏の手がかり
  • 家族カードや共同利用サービスの利用明細

 このうちどの経路が残っていたのかが分かると、相手の行為をどう位置づけるかも整理しやすくなります。

4.解除しただけでは止まらないケース

 設定を解除しても、相手が再び設定できる状態が残っていることがあります。

  • パスワードを相手が知っている、または推測できる
  • アカウントの復旧用の連絡先が相手の電話番号やメールアドレスになっている
  • 二段階認証の受け取り先が相手の端末になっている
  • 端末の管理者権限や契約名義が相手にある

 この場合は、解除と同時に、パスワードの変更、復旧用連絡先の変更、二段階認証の設定変更、必要に応じて契約名義の整理まで進める必要があります。名義や支払いが絡む場合は時間がかかるため、早めに着手しておくほうが安全です。

5.行為別の法的な位置づけ

 同じ「位置情報を見られている」でも、相手が何をしたかによって適用される規定が変わります。

共有が残っているのを利用して見続けている
 撤回を伝えた後も継続していれば、位置情報無承諾取得等に当たり得ます。これを反復して行った場合はストーカー行為として処罰の対象になり、ストーカー行為罪の法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。禁止命令等に違反した場合は、より重い刑が定められています。

自分のアカウントに入って共有を再設定した
 他人のIDとパスワードを入力してサービスにログインする行為は、不正アクセス禁止法に触れるおそれがあります。同法は「何人も」を対象としており、元交際相手であっても例外ではありません。

監視・遠隔操作のアプリを無断で入れられていた
 無断でこうしたアプリをインストールし、動作させる行為は、不正指令電磁的記録供用罪に該当し得ます。過去にも、交際相手や配偶者の端末に遠隔操作アプリを入れたとして摘発された例が報道されています。

「今どこにいるか知っている」と告げてきた
 行動を監視していると思わせるような事項を告げる行為は、つきまとい等の類型に含まれます。位置情報の取得自体を立証しにくい場合でも、この発言が手がかりになることがあります。

 民事上の責任 私生活上の行動を継続的に把握される状態は、プライバシーの侵害として不法行為(民法709条・710条)を構成し得ます。認められる金額は事案の内容によって幅があります。

 なお、令和7年12月30日施行の改正で、紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等が規制対象に加わり、被害者の申出がなくても警察が職権で警告を行える仕組みが設けられました。援助の努力義務の主体に勤務先の雇用者や学校の長が加わっています。令和8年3月10日からは、警察本部長等が、情報を提供するおそれがある者に対して提供しないよう求めることができるようになりました。警察庁によると、紛失防止タグの悪用に関する相談は近年増加していると報告されています。

 同棲していた相手が対象である場合には、DV防止法の保護命令という別の系統も検討できます。この点は別のコラム(デートDVと保護命令)をご参照ください。

6.「黙って解除する」か「伝えてから解除する」か

 ここは判断が分かれるところで、それぞれに理由があります。

 黙って解除する利点は、相手を刺激しにくいことです。一方で、承諾を撤回した事実が記録に残らず、後から「知らなかった」と言われる余地が残ります。

 伝えてから解除する利点は、撤回の時点が明確になることです。ただし、連絡そのものがやり取りの再開のきっかけになってしまうおそれがあります。

 実務的な折衷案としては、やめてほしいという内容を一度だけ簡潔に、記録の残る形で伝え、その後は返信しないという進め方が挙げられます。長い説明や理由づけは、反論の余地を作り、やり取りが続く原因になりがちです。すでに相手の言動に危険を感じている場合は、自分から連絡せず、警察や弁護士に相談してから方針を決めることをお勧めします。

 避けたほうがよいのは、確認のために相手のアカウントや端末をのぞく行為です。事実を確かめたい気持ちは自然ですが、立場が入れ替わってしまうおそれがあります。

7.残しておいたほうがよい記録

 位置情報のケースでは、次のようなものが手がかりになります。

  • 共有相手の一覧、設定画面、招待の履歴のスクリーンショット(解除する前に撮影)
  • アカウントのログイン履歴・アクセス通知
  • 相手が居場所を知っていることをうかがわせる発言(日時が分かる形で)
  • 共有をやめてほしいと伝えたときのやり取り
  • 気づいた経緯と時期を、日付とともに書き留めたメモ

 元のデータは消さず、画面の撮影とあわせて保管しておくと安心です。記録の残し方については別のコラム(刺激を避けた接触遮断と証拠の残し方)で詳しく扱っています。

8.相談の進め方

 警察に相談する場合は、警察相談専用電話#9110、または最寄りの警察署の窓口が入口になります。相談したこと自体が記録として残るため、まだ被害届を出すか決めていない段階でも意味があります。

 弁護士に相談する場合は、経路の整理、撤回の伝え方や代理での通知、警告や禁止命令に向けた資料の準備、民事の請求、住まいの安全確保といった選択肢を、状況に応じて組み合わせて検討します。

 すでに住所を知られてしまっている場合、警察が動いてくれないと感じる場合については、それぞれ別のコラムで扱っています。

よくあるご質問

Q.交際中に自分で共有を許可していました。それでも問題にできますか。

 開始時に承諾があったことは、その後の取得すべてを正当化するものではありません。承諾は撤回できると考えられ、撤回後の取得は「承諾を得ないで」行われたものと評価され得ます。

Q.解除するとき、相手に通知されますか。

 サービスによって挙動が異なり、通知の有無も変わります。通知されるかどうかを気にして解除を先延ばしにするよりも、解除前に画面を保存しておくこと、再設定される経路を塞ぐことを優先されるとよいでしょう。

Q.一度見られただけでは、相談しても意味がないでしょうか。

 処罰の対象となるストーカー行為には反復が必要ですが、繰り返されるおそれがある段階でも警告等の対象になり得ます。早い段階で相談歴を残しておくことに意味があります。

Q.相手が「心配だから見ていた」と言っています。

 動機として心配を挙げていても、恋愛感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を充足する目的が認められれば、規制の対象から外れるわけではありません。目的の評価は、それまでの経緯や言動を踏まえて判断されます。

相談窓口

  • 緊急時:110番
  • 警察相談専用電話:#9110
  • 配偶者暴力相談支援センター(同棲していた相手からの被害を含む場合)

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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