【ストーカートラブル】自宅に盗聴器が仕掛けられているかもしれない|調べ方と法的な手段

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点の法令(刑法、有線電気通信法、電波法、ストーカー行為等の規制等に関する法律、民法ほか)に基づいて作成しています。2025年6月1日に施行された刑法の改正(懲役・禁錮の拘禁刑への一本化)と、2025年12月30日に施行されたストーカー規制法の改正(紛失防止タグによる位置情報の無承諾取得等の追加、職権による警告の創設)を反映しています。


「家の中でしか話していないことを、別れた相手に言われた」「部屋の物の位置が少し変わっている気がする」。盗聴を疑うご相談は、多くの場合こうした小さな違和感から始まります。一方で、「業者に調べてもらったが何も出てこなかった。それでも落ち着かない」というお声をいただくこともあります。

 盗聴器の探し方については、防犯会社や調査業者が詳しく解説しており、仕掛けられやすい場所の情報はそれ自体として役に立ちます。ただ、見つけた後にどう扱えば証拠として生きるのか、日本には盗聴そのものを処罰する規定がない中で何を手がかりに相手の責任を問うのか、という部分は見えにくいところです。

 この記事では、自宅で盗聴を疑ったときの調べ方の順序と、盗聴器が見つかった場合・見つからなかった場合のそれぞれで取れる法的な手段を整理します。位置情報の追跡についてはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪で、スマホや共有サービスから情報が漏れる経路については【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで扱っていますので、あわせてご覧ください。

盗聴を疑ったとき、探す前に整理しておくこと

何が、いつ、誰に知られたのかを書き出す

 最初に行いたいのは、盗聴器を探すことよりも、「相手が知っていた情報」を具体的に書き出すことです。どの会話の内容を、いつ、どのような形で相手が口にしたのか。その会話は室内での対面の会話だったのか、固定電話だったのか、スマホの通話やメッセージだったのかを、日付とあわせて記録しておきます。

 何が漏れたのかを特定できれば、盗聴器を探すべき部屋や、疑うべき経路が大きく絞られます。寝室でしか話していない内容であれば寝室を、電話でしか伝えていない内容であれば電話回線やスマホを、という具合に調べる範囲を決めやすくなります。この書き出しは、後に警察や弁護士へ相談する際にもそのまま使える記録になります。

盗聴器以外の経路も同時に確かめる

 実際のご相談では、盗聴器ではなく別の経路から情報が伝わっていたと分かることも少なくありません。次のような経路は、盗聴器の調査と並行して確認しておくと安心です。

  • 交際中に共有していたアカウントやクラウド、家族共有の設定が残っていないか。
  • スマホに見覚えのないアプリや、遠隔で端末を管理する設定が入っていないか。
  • 位置情報の共有アプリや、紛失防止タグが持ち物に付けられていないか。
  • SNSへの投稿や写真の背景から、生活の様子が読み取れる状態になっていないか。
  • 共通の知人を通じて、話した内容が伝わっていないか。
  • 別れた相手が合鍵を持ったままになっていないか。


 合鍵が残っている場合の対応については、【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断で詳しく扱っています。

調べ終わるまでの過ごし方

 調査の結果が出るまでは、引っ越しや転職の予定、今後の対応方針など、相手に知られたくない話は自宅の中で口にしないようにします。また、疑っている相手に「盗聴しているでしょう」と問いただすことは控えてください。相手が機器を回収して証拠がなくなったり、行動が別の形に変わったりするおそれがあるためです。

自宅の盗聴器を調べる方法と、それぞれの限界

自分で目視確認できる範囲

 まずは、普段の生活で見慣れている物に変化がないかを確認します。防犯会社などがよく挙げる確認場所は、次のようなところです。

  • 見覚えのない電源タップや延長コード、コンセントに挿さったままの電源アダプター。
  • 置物、ぬいぐるみ、時計、ペン、USB機器など、いつの間にか増えている小物。
  • 照明器具の周辺、エアコン、テレビの裏、ソファやテーブルの下。
  • 不自然な位置にある、あるいは数が多い火災報知器。
  • 固定電話機やその周辺の配線。


 ただし、コンセントの内部や照明器具の取付部品を自分で開けることは避けてください。電気工事の資格が必要な作業にあたる場合があり、感電の危険もあります。また、見つけた物を分解すると、後で証拠として扱う際の支障になることがあります。

市販の発見器で分かること・分からないこと

 市販の盗聴器発見器は、主に盗聴器が発する電波を拾う仕組みです。電波を出し続けるタイプの機器には反応しやすい一方、音声を本体に録音して後で回収するタイプや、携帯電話の回線・インターネット回線を使って音声を送るタイプは、発見器では見つけにくいことがあります。

 発見器が反応しなかったことは、「盗聴器がない」ことの証明にはなりません。市販品で確認したうえで不安が残る場合は、専門業者による調査を検討することになります。

専門業者に依頼するときの確認点

 専門業者に調査を依頼する場合は、契約前に次の点を確認しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。

  • 料金が間取りや調査範囲でどう決まるのか、追加費用が生じる条件は何か。
  • 盗聴器だけでなく、盗撮用のカメラも調査の対象に含まれるか。
  • 調査結果を書面の報告書として出してもらえるか。
  • 機器が見つかった場合に、すぐ取り外さず、写真で記録を残す対応をしてもらえるか。
  • その場で高額な追加の契約や機器の購入を求められないか。


 法的な手続を見据えると、とりわけ大切なのは、発見時の状況を写真と書面で残してもらえるかどうかです。設置されていた場所、機器の状態、発見した日時が客観的に記録されていれば、警察への相談や相手への請求の場面で、その記録が出発点になります。

盗聴器が見つかったときの対応

すぐに外さず、まず記録を残す

 盗聴器らしき物を見つけると、すぐに取り外したくなるのが自然な反応です。ただ、外したり壊したりする前に、設置されていた場所と周囲の様子、機器の外観や型番が分かるように、複数の角度から写真を撮っておきます。発見した日時、立ち会った人、見つけたきっかけもメモに残しておきます。

 警察に相談する予定であれば、機器にはできるだけ触れず、先に相談して扱いを確認するのが確実です。指紋などの痕跡が、設置した人物を特定する手がかりになることがあるためです。それまでの間は、その部屋で重要な話をしないようにして過ごします。記録の残し方の全体像は、証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはでも解説しています。

警察への相談と、被害届・告訴

 警察に盗聴器の捜索そのものを依頼しても、応じてもらえないことが多いのが実情です。一方で、盗聴器が実際に見つかり、無断で家に入られた形跡や、設置のために物を壊された形跡があれば、犯罪の捜査として扱われる可能性があります。相談の際は、書き出しておいた「相手が知っていた情報」の記録と、発見時の写真を持参すると話が伝わりやすくなります。

 設置のために家具や家電を壊された場合の器物損壊罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない罪とされており(刑法264条)、告訴は原則として犯人を知った日から6か月以内に行う必要があります(刑事訴訟法235条)。相手の見当がついているときは、告訴の期間を意識して早めに相談することが大切です。被害届と告訴の違いについては、被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶで詳しく扱っています。

鍵と住まいの安全を確保する

 盗聴器が室内から見つかったということは、誰かが部屋に入った可能性を示しています。鍵の交換を検討するとともに、賃貸住宅であれば管理会社や貸主にも事情を伝えておきます。入居して間もない時期に見つかった場合は、前の入居者の時期に設置された可能性もあるため、設置時期の見当をつけるうえでも管理会社への連絡は欠かせません。マンションでの防犯対策については、【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることもご参照ください。

盗聴そのものは罪にならないのか|相手の責任を問える法律

「盗聴罪」がないことの意味

 日本には、他人の室内の会話を盗み聞きすること自体を直接処罰する「盗聴罪」という規定はありません。そのため、盗聴器が見つかった場合には、設置や利用に伴う行為が別の罪にあたらないかを一つずつ確認していくことになります。主なものを整理すると、次のとおりです。

相手の行為問われ得る罪など
無断で住居に入り、盗聴器を設置・回収した住居侵入罪(刑法130条)
設置のために壁や家具・家電を壊した、改造した器物損壊罪(刑法261条)
固定電話の回線に細工して通話を聞いた有線電気通信法違反(同法9条、14条)
無線で傍受した通話の内容を他人に漏らした、利用した電波法違反(同法59条、109条)
聞いた内容を伝えて、監視していることをほのめかしたストーカー規制法の「つきまとい等」(同法2条1項2号)


 相手の責任を問ううえで鍵になるのは、盗聴器があったことそのものよりも、どうやって部屋に入ったのか、何を壊したのか、聞いた内容をどう使ったのかという点です。だからこそ、発見時の記録と、相手が知っていた情報の記録が重要になります。

同居していた相手や、合鍵を持つ相手が設置した場合

 交際相手と同居していた期間に、その相手が置いた機器である場合には、住居侵入罪が成立しにくいことがあります。共に暮らしていた人がその住まいに立ち入ること自体は、通常は問題とされないためです。

 一方で、別れて相手が出て行った後に、合鍵を使って無断で入り込んだのであれば、事情は異なります。どの時期に設置されたのか、当時相手がその部屋に出入りできる立場にあったのかによって評価が分かれるため、時期の見当をつける材料(家具の配置を変えた日、来客の記録、管理会社への出入りの記録など)を集めておくことが役に立ちます。

ストーカー規制法が使える場面

 ストーカー規制法は、GPS機器や紛失防止タグによる位置情報の無承諾取得を規制の対象としていますが、盗聴器を仕掛ける行為はそれ自体としては挙げられていません。ただし、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みから、盗聴で知った内容を本人に伝えたり、SNSに書いて本人が知り得る状態にしたりする行為は、「その行動を監視していると思わせるような事項を告げ」る行為として、つきまとい等にあたる場合があります(同法2条1項2号)。

 2025年12月30日の改正により、警察は被害者の申出がなくても職権で警告できるようになりました。警告や禁止命令に加えて、裁判所を通じた接近禁止を検討する場面もあります。両者の使い分けは、接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。

民事で求められることと、弁護士が関わる意味

プライバシー侵害としての損害賠償

 自宅での会話をひそかに聞かれることは、私生活の平穏を害するものとして、不法行為にもとづく損害賠償の対象となり得ます(民法709条、710条)。精神的な苦痛に対する慰謝料のほか、盗聴器の調査費用や鍵の交換費用なども、事情によっては請求の対象として検討できます。どこまでが相手の行為によって生じた損害といえるかは個別に判断されるため、領収書や見積書は保管しておきます。

相手が誰か分からないとき

 盗聴器は見つかったものの、誰が設置したのか見当がつかない、ということもあります。その場合でも、警察への相談の記録や、発見時の写真・報告書を残しておくことには意味があります。後になって相手が特定できたときに、その記録が請求や手続の土台になるからです。相手をたどる手段と、たどれない間の身の守り方については、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で詳しく扱っています。

代理人を立てて相手との接点を断つ

 相手の見当がついている場合、ご本人が直接連絡を取ると、かえって相手を刺激したり、こちらの動きを知らせることになったりしかねません。弁護士が代理人として窓口に立つことで、ご本人は相手と接触せずに、今後盗聴や接触をしないことの約束、機器や録音データの消去、慰謝料の支払いといった条件の交渉を進めることができます。代理人を立てる意味については、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味もご覧ください。

よくあるご質問

調査で何も見つからなかったのに、不安が消えません。どう考えればよいですか。

 発見器や業者の調査で見つからなかった場合は、盗聴器以外の経路、つまりスマホの設定や共有アカウント、SNS、共通の知人などを改めて確認することをおすすめします。「相手が知っていた情報」の記録を見返すと、経路の見当がつくこともあります。不安で眠れないなど生活に支障が出ているときは、医療機関や相談窓口で心身の負担について相談することも、ご自身を守る準備の一つです。

盗聴器を見つけたら、自分で壊してしまってもよいですか。

 お勧めしません。壊してしまうと、設置した人物を特定する手がかりや、相手の責任を問うための証拠が失われるおそれがあります。まずは写真で記録を残し、警察や弁護士に扱いを相談してください。それまでの間は、その部屋で重要な話をしないことで対応できます。

入居したばかりの賃貸住宅で盗聴器が見つかりました。前の入居者の物かもしれません。

 設置された時期が分からない場合も、まずは記録を残したうえで、管理会社や貸主、警察に連絡してください。前の入居者の時期に置かれた物か、入居後に誰かが入って置いた物かによって、その後の対応は変わります。入居後の設置が疑われる場合は、鍵の交換もあわせて検討します。

まとめ


  1. 盗聴器を探す前に、相手が知っていた情報を日付とともに書き出すと、調べる範囲と経路が絞れる。
  2. 市販の発見器は電波を出す機器向けで、反応がないことは盗聴器がないことの証明にはならない。
  3. 見つけた機器はすぐに外さず、写真と記録を残してから警察や弁護士に扱いを相談する。
  4. 盗聴自体を処罰する規定はないが、住居侵入罪(刑法130条)や器物損壊罪(刑法261条)、有線電気通信法違反(同法9条、14条)などが問題になり得る。
  5. 器物損壊罪は告訴が必要な罪で(刑法264条)、告訴は原則として犯人を知った日から6か月以内に行う(刑事訴訟法235条)。
  6. 盗聴で知った内容を伝えて監視をほのめかす行為は、ストーカー規制法のつきまとい等にあたる場合がある(同法2条1項2号)。
  7. 私生活の平穏の侵害として、損害賠償を求められる場合がある(民法709条、710条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。盗聴器が見つかった後の警察への相談の進め方や、相手への請求、接触を断つための交渉まで、状況に応じてご一緒に整理します。

まだ盗聴器が見つかっていない段階や、相手が誰か分からない段階でも、ご相談いただけます。違和感の記録を一緒に見直すことが、身を守るための次の一歩につながります。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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