【ストーカートラブル】家族がストーカー被害に遭っている|家族が代わりに相談するとき
この記事は、2026年10月時点のストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「ストーカー規制法」)と探偵業の業務の適正化に関する法律(以下「探偵業法」)に基づいて書いています。2025年12月に公布された改正ストーカー規制法のうち、職権による警告(2025年12月30日施行)と、警察から探偵業者等への通知の仕組み(2026年3月10日施行)を反映しています。
「相手の姿は見かけないのに、引っ越したばかりの住所や新しい勤務先を知られていた」「同じ車が何日も近くに止まっている」。ストーカー被害のご相談では、相手本人ではなく、相手が雇った人が見張っているのではないかという不安を伺うことがあります。反対に、交際相手の家族などから「探偵に頼んで調べただけで、本人は何もしていない」という説明を受け、それで終わりにしてよいのか迷っている方もいらっしゃいます。
探偵業そのものは届出をして営まれる適法な仕事であり、尾行や張り込みがすべて違法になるわけではありません。ただ、調査の結果がつきまといに使われる場面について、法律はいくつかの歯止めを設けています。2026年3月からは、警察が探偵業者に直接働きかける仕組みも加わりました。
この記事では、相手が探偵などの第三者を使って見張らせている場合に、法律上どう扱われるのか、被害を受けている側がどの順序で動けばよいのかを整理します。GPS機器や紛失防止タグによる追跡はGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪で、スマホや共有サービスからの漏れは【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで詳しく扱っています。
探偵を使ったつきまといとは|本人の姿が見えない見張り
探偵を使ったつきまといは、相手本人が現れないため、被害を受けている側が状況をつかみにくいという特徴があります。まずは、依頼を受けた探偵が何をするのか、どのようなきっかけで気づくことが多いのかを見ておきます。
依頼を受けた探偵が行うこと
探偵業法は、探偵業務を、他人の依頼を受けて特定の人の所在や行動に関する情報を集めるため、聞込み・尾行・張込みなどの実地の調査を行い、その結果を依頼者に報告する業務と定めています(探偵業法2条1項)。つまり、探偵が調べた住所や勤務先、行動の時間帯は、最終的に依頼者の手元に届きます。
依頼者が交際の解消を受け入れられずにいる人である場合、その報告が待ち伏せや押しかけの準備になってしまうおそれがあります。見張っているのが第三者でも、その情報の行き先は相手本人であるという点が、この問題の出発点です。
本人が来ていなくても起きていること
探偵による調査は、自宅や勤務先の近くでの張り込み、移動中の尾行、近所や職場での聞込みといった形で行われるのが一般的です。相手本人が姿を見せていないため、「つきまといはもう止まった」と受け止めてしまい、転居先の情報が伝わっていることに気づかないまま過ごしている場合もあります。
気づくきっかけになりやすいこと
ご相談の中では、次のような事情から第三者の関与に気づくことが多くあります。
- 相手に伝えていないはずの転居先や新しい勤務先を、相手が知っていた。
- 相手本人がその場にいるはずのない時間帯の行動を、相手が把握していた。
- 見覚えのない人や同じ車両が、自宅や勤務先の近くで繰り返し見かけられた。
- 近所の人や同僚から、自分のことを尋ねる人が来たと聞かされた。
一方で、「誰かに見られている気がする」という感覚だけでは、第三者が関わっているかどうかの判断は難しいところです。不安を気のせいだと片づける必要はありませんが、決めつけて動くのではなく、具体的な出来事を一つずつ記録し、警察や弁護士と一緒に確かめていくことが大切です。相手がそもそも誰なのか分からない場合は、【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方もあわせてご覧ください。
ストーカー規制法では誰の行為として扱われるのか
第三者が見張っている場合、「本人がやっていないから規制法の対象外ではないか」という疑問が生じます。ここでは、依頼した側と依頼を受けた側に分けて考えます。
依頼した側の目的が問われる
ストーカー規制法の「つきまとい等」は、恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で、特定の人やその家族などに対して、待ち伏せ・見張り・押しかけなどの行為をすることを指します(ストーカー規制法2条1項)。2021年の改正で、住居や勤務先の付近だけでなく、相手が現に所在する場所の付近での見張りも対象に加わっています。
探偵自身には通常こうした目的はありません。他方で、依頼者がこの目的を持ち、探偵に見張りや尾行を行わせて自分の代わりに動いてもらっている場合には、依頼者自身のつきまとい等として評価される余地があると考えられています。最終的には、依頼の内容、依頼者の指示の具体性、報告を受けた後の依頼者の行動などを踏まえて判断されます。「探偵に頼んだだけ」という説明があっても、それだけで対象外になるとは限りません。
依頼を受けた探偵が問われる場面
ストーカー規制法は、ストーカー行為等をするおそれがある者であると知りながら、その者に相手方の氏名や住所などの情報を提供することを禁じています(同法6条1項)。この禁止は探偵業者に限らず誰にでも及びます。
警察庁と各県警が探偵業者向けに示している資料では、この規定に違反した情報提供は、提供を受けた者がストーカー行為等をした場合に幇助などに当たり得ること、探偵業法に基づく営業停止などの行政処分の対象になり得ることが説明されています。実際に情報提供をした探偵業者が検挙された例があることも示されています。
情報の取り方そのものが違法になる場合
探偵業法は、探偵業者であっても、他の法令で禁止・制限されている行為ができるようになるわけではないと定めています(探偵業法6条)。2012年に逗子市で起きたストーカー殺人事件では、調査を請け負った人物が被害者の夫を装って市役所に電話をかけ、閲覧制限のかかった住所を聞き出していました。この人物は偽計業務妨害などの罪で有罪判決を受けています。この事件は、住所の情報がどのような経路で漏れるのかを考えるうえで、今も参考にされています。
探偵業法が定める歯止め
探偵業法には、調査の結果が違法な目的に使われないようにするための規定がいくつかあります。被害を受けている側が動く際の手がかりにもなるため、主なものを確認しておきます。
違法な目的に使わない旨の書面
探偵業者は、依頼者と契約を結ぼうとするときに、調査の結果を犯罪行為や違法な差別的取扱いその他の違法な行為に使わない旨を示す書面を、依頼者から受け取らなければなりません(探偵業法7条)。依頼者がつきまといの目的で調査を頼んでいた場合、この書面の内容と実際の利用が食い違うことになります。
違法な目的を知ったときは調査ができない
探偵業者は、調査の結果が犯罪行為その他の違法な行為に使われることを知ったときは、その探偵業務を行ってはならないとされています(同法9条1項)。探偵業者が「知った」時点から、調査を続けることが許されなくなるという点は、後で述べる通知の場面で意味を持ちます。
秘密の保持と行政処分
探偵業者の従業者には、業務上知った人の秘密を正当な理由なく漏らしてはならない義務があります(同法10条1項)。法令違反があった場合、公安委員会は指示や6か月以内の営業停止を命じることができ(同法14条、15条1項)、一定の行政処分は各都道府県警察や公安委員会のウェブサイトで公表されています。
2026年3月から始まった警察から探偵業者への通知
2025年12月に公布された改正ストーカー規制法により、探偵業者などを通じた情報の流れを警察が止めるための規定が新しく設けられました。
情報提供をしないよう求める通知の仕組み
2026年3月10日から、警察本部長等は、警告などを受けた者であって現にストーカー行為等をするおそれがある者に対し、相手方の情報を提供するおそれがある者を把握した場合、その者に対して「依頼者がストーカー行為等をするおそれがある者であること」を通知し、情報提供をしないよう求めることができるようになりました(ストーカー規制法6条2項)。対象となる情報には、氏名や住所のほか、勤務先・通学先・避難先、通勤や通学の経路、電話番号、SNSのアカウント名、車両の番号、駐車場所なども含まれると説明されています。
警察から通知を受けた探偵業者は、依頼の目的を知った状態になります。そのため、探偵業法9条1項との関係でも、調査を続けることは難しくなります。また、この通知を適切に行うため、警察が探偵業者に依頼者の情報の開示を求める場合があることも示されています。
前提として「警告等」が出ていること
この通知は、依頼者が警告などを受けていることが前提になっています。相手に対してまだ何の措置もとられていない段階では、使えないことがあります。被害の状況を早めに警察へ伝え、警告などの措置につなげておくことが、探偵業者への働きかけを可能にするうえでも重要です。
申出がなくても警告できるようになった
同じ改正で、2025年12月30日からは、被害を受けている方からの申出がなくても、警察が職権で警告を出せるようになりました。報復を恐れて申出をためらっている場合でも、相談の内容によっては警察が措置をとれる余地が広がっています。
被害を受けている側がとれる手順
第三者による見張りが疑われるとき、最も大切なのはご自身の安全です。そのうえで、後から警察や弁護士が動ける材料を残していきます。
見張っている人に直接確かめに行かない
近くに止まっている車や見覚えのない人物に、直接声をかけたり写真を撮ろうと近づいたりすることは避けてください。相手が誰であっても、思わぬトラブルにつながるおそれがあります。身の危険を感じたときは、ためらわずに110番通報してください。
記録の取り方
安全な場所から確認できた範囲で、日時、場所、人物の特徴、車両の色や車種、見えた場合は車両の番号などを、その都度メモしておきます。あわせて、相手が知るはずのない情報を知っていたことを示すメッセージなどは、消さずに保存しておきます。一つ一つは小さな出来事でも、日付つきで積み重ねることで第三者の関与が見えてくることがあります。記録の残し方は証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはでも詳しく説明しています。
お住まいが集合住宅であれば、管理会社に状況を伝え、防犯カメラの映像の保存を依頼しておくことも考えられます。具体的な進め方は【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることをご覧ください。
住所の情報を守る手続
ストーカー行為等の被害を受けている方は、市区町村に対して、住民票の写しや戸籍の附票の写しの交付・閲覧を制限する「支援措置」を申し出ることができます。申出にあたっては、警察などの相談機関の意見を求められるのが一般的です。転居を予定している場合は、転居の手続とあわせて早めに検討しておくと安心です。
警察への伝え方
警察に相談する際は、「相手本人ではなく、雇われた人が見張っているように思う」という点をはっきり伝えます。その根拠として、相手が知っていた情報の内容や、見かけた人物・車両の記録を示します。第三者の関与を伝えておくことで、6条2項の通知を含めた対応を検討してもらいやすくなります。
弁護士が関わる場面
警察の対応と並行して、弁護士が代理人として動くことで、第三者を通じた見張りに対応できる場面があります。
探偵業者への通知
調査を行っている探偵業者が特定できた場合、弁護士から書面で、調査の結果がつきまといに使われている事情を伝えることが考えられます。探偵業者がその事情を知れば、探偵業法9条1項により調査を続けることは許されなくなります。どの業者か分からない場合でも、相手方本人への通知の中で、第三者を使った調査をやめるよう求めることができます。
合意書や仮処分で「第三者を介して」を含める
相手方と交渉して接触しない旨の合意書を作る場合、「自ら又は第三者を介して」接触や調査をしないという形で範囲を定めておくことが大切です。本人が近づかないという約束だけでは、探偵を使った見張りを防ぎきれないためです。裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てる場合も、同じ観点から求める内容を組み立てます。警察の手続と裁判所の手続の使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで説明しています。
損害賠償の請求
つきまといの目的で調査を依頼し、平穏な生活を害した相手方に対しては、不法行為に基づく損害賠償を求めることが考えられます(民法709条)。違法な手段で情報を取得した探偵業者が関わっている場合には、その責任が問題になることもあります。代理人を立てることで何が変わるのかは【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。
よくあるご質問
探偵に調べられること自体は違法ではないのですか。
探偵業は届出をすれば営むことができ、尾行や張り込みがそれだけで直ちに違法になるわけではありません。ただし、探偵業者は人の生活の平穏を害するなど個人の権利利益を侵害しないようにしなければならず(探偵業法6条)、違法な目的を知った後は調査ができません(同法9条1項)。調査の目的や方法によって評価が変わるため、個別の事情を踏まえて判断することになります。
どの探偵社が関わっているのか分からなくても対応できますか。
対応できる場合があります。警察に第三者の関与を伝えておけば、警察が探偵業者を把握したときに通知などの措置を検討してもらうことができます。また、相手方本人に対して、第三者を使った見張りや調査をやめるよう求めることもできます。業者が分からないことを理由に、相談を先送りにする必要はありません。
相手方が「探偵に頼んだだけで自分は何もしていない」と言っています。
依頼者がつきまといの目的を持ち、探偵に見張りや尾行を行わせていた場合には、依頼者自身の行為として評価される余地があります。相手方の説明だけで判断せず、相手方が知っていた情報や見張りの状況を記録したうえで、警察や弁護士にご相談ください。相手方を刺激せずに関係を断つ方法はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方でも扱っています。
まとめ
- 探偵が調べた住所や行動の情報は、最終的に依頼者に報告される(探偵業法2条1項)。
- 依頼者がつきまといの目的で探偵に見張りや尾行を行わせた場合、依頼者自身のつきまとい等として評価される余地がある(ストーカー規制法2条1項)。
- ストーカー行為等をするおそれのある者と知りながら相手方の情報を提供することは禁止されている(同法6条1項)。
- 探偵業者は、調査結果が違法な目的に使われると知ったときは調査を行えない(探偵業法9条1項)。
- 2026年3月10日から、警察は探偵業者等に情報提供をしないよう通知できるようになった(ストーカー規制法6条2項)。
- 見張っている人に直接近づかず、日時・場所・車両などを安全な範囲で記録し、警察に第三者の関与を伝える。
- 合意書や仮処分では「自ら又は第三者を介して」と範囲を定め、必要に応じて損害賠償も検討する(民法709条)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。相手本人の姿は見えないのに行動を把握されている、探偵などの第三者が関わっているのではないかと感じている、といった段階からご相談いただけます。
見張られている不安を抱えているご本人はもちろん、ご家族や職場の方がこうした状況に気づいた場合も、警察への相談と並行して弁護士が何をできるのか、一度お話をお聞かせください。


