【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

本記事は、2026年10月時点の「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(令和7年法律第83号による改正を反映。職権による警告などは2025年12月30日施行)に基づいて作成しています。個別の事案における警察の判断を示すものではありません。


「警察署で事情を話したのに、相手に警告が出たのかどうか分からない」「しばらく様子を見ましょうと言われて帰ってきた」。ストーカー被害のご相談では、こうした声を伺うことが少なくありません。ご家族から「本人が警察に行ったが、その後も状況が変わらない」とご相談いただくこともあります。

 警察が動かない理由として、ストーカー規制法の要件や証拠の問題がよく挙げられます。それ自体は誤りではありませんが、実際には「相談として受け付けられただけで、警告を求める申出にはなっていなかった」という手続上の行き違いが見落とされている場面もあります。

 この記事では、警察に相談したのに警告が出ないときに、まず何を確認し、警告のほかにどのような手段があるのかを、ストーカー規制法の仕組みに沿って整理します。弁護士が代理人として入る場合の対応は警察に相談しても動いてくれないとき|弁護士ができることで扱っていますので、あわせてご覧ください。

「相談した」ことと「警告を求めた」ことは手続上は別のもの

警告は「申出」を受けて判断される仕組み

 ストーカー規制法の警告は、つきまとい等をされた方から警告を求める申出を受け、規制に反する行為があり、かつ相手が更に繰り返すおそれがあると認めるときに、警察署長などが行うものとされています(ストーカー行為等の規制等に関する法律4条1項)。申出は、国家公安委員会規則で定められた警告申出書という様式で受け付けるのが一般的な運用です。

 そのため、警察署で被害の状況を話したものの、申出書を書いた覚えがない場合には、相談として記録されただけで、警告の手続には進んでいない可能性があります。また、警察官が相手に電話で注意を伝える対応がとられることもありますが、これは法律上の警告とは別のもので、その後の手続とのつながりも異なります。

令和7年の改正で、申出がなくても警告できるようになった

 2025年12月30日施行の改正により、被害を受けた方からの申出がなくても、警察本部長等の職権で警告を行えるようになりました(同法4条)。申出をためらう方にも対応できるようにする趣旨です。

 もっとも、改正の際の国会の附帯決議では、職権による警告を検討する場合にも被害を受けた方の心情を丁寧に把握し、その意思を尊重することが求められています。警察の判断を待つだけでなく、警告を求める意思をご自身から明確に伝えることが、手続を前に進める出発点になります。

警告が出なかったときは、理由を書面で知らせる定めがある

 申出をしたのに警告が出なかった場合、警察本部長等は、その旨と理由を申出をした方に書面で通知しなければならないとされています(同法4条4項)。手元にこの書面がなければ、そもそも申出として扱われていない可能性を考える必要があります。書面が届いている場合は、記載された理由が次の見直しの手がかりになります。

警告が出ない主な理由と、見直しの方向

 警告に至らない理由は事案ごとに異なりますが、主に次のように整理できます。

警告に至らない理由見直しの方向
好意や怨恨の感情による行為と確認できないやり取りの文面など、動機をうかがわせる記録を集める。規制法以外の法令も検討する
行為が繰り返されるおそれが認められない日時・場所・内容を時系列で一覧にし、回数と継続性を示す
相手が誰か特定できていないアカウントや車両などの手がかりを残し、相手をたどる手段を検討する
警告を求める申出になっていない警告申出書による申出であることを明確にして手続を行う


目的の要件が確認できない場合

 ストーカー規制法の「つきまとい等」は、恋愛感情その他の好意の感情、又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われることが要件です(同法2条1項)。相手が「恋愛感情はない」と説明している場合や、トラブルの発端が金銭や仕事上の対立にある場合、警察は要件の確認に慎重になります。

 交際を求める文面、別れた後に関係の再開を迫る内容、拒絶されたことへの反発を示す言葉などは、目的をうかがわせる材料になり得ます。

行為の回数や継続性が伝わっていない場合

 警告には、相手が更に繰り返すおそれがあると認められることが必要です。被害を受けている方にとっては毎日のことでも、相談の場で断片的にしか伝わっていなければ、警察には一時的な出来事に見えることがあります。警察が判断に使えるのは、相談の場で伝わった事実と、それを裏付ける記録です。

 日時・場所・行為の内容・そのときに感じた不安を一覧にし、メッセージの画面や写真などと対応させておくと、反復の状況が伝わりやすくなります。記録の作り方は証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはで詳しく説明しています。

相手が特定できていない場合

 警告は相手に対して行うものですから、相手が誰か分からなければ出すことができません。匿名のアカウントや見知らぬ人物によるつきまといでは、まず相手をたどる手続が必要になります。この点は【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で扱っています。

警告を経ずに取れる手段

公安委員会に禁止命令等を求める

 禁止命令等は、都道府県公安委員会が相手に対し、行為を繰り返さないことなどを命じるものです。平成28年の改正(2017年施行)により、警告を経ていなくても、被害を受けた方の申出又は職権で出せるようになっています(同法5条1項)。身体の安全などを守るために緊急の必要があるときは、事前の聴聞を行わずに出す仕組みもあります(同条3項)。

 警告が出ないからといって、禁止命令等を求める申出ができなくなるわけではありません。禁止命令等の申出に対して命令が出なかった場合にも、その旨と理由が書面で通知されます(同条7項)。命令に違反してストーカー行為をすると、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金の対象となります(同法19条1項)。警告と禁止命令の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れもご参照ください。

刑事告訴・被害届で処罰を求める

 つきまとい等を繰り返してストーカー行為に当たる場合、それ自体が犯罪となり(同法18条)、2017年施行の改正以降は告訴がなくても起訴できる罪になっています。また、行為の内容によっては、脅迫、住居侵入、名誉毀損、器物損壊などの罪に当たることもあります。

 行政上の手続である警告とは別に、捜査を求める手続として告訴や被害届があります。どちらを選ぶかは被害届と告訴の違い|ストーカー・脅迫でどちらを選ぶで整理しています。

規制法の対象にならない場合に検討する定め

 好意や怨恨の感情によるものとはいえないつきまといについては、東京都の迷惑防止条例が、ねたみや恨みなどの悪意の感情によるつきまとい行為を規制しています(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条の2)。相手が配偶者や元配偶者、生活の本拠を共にする交際相手であった場合には、DV防止法による保護命令を検討できることもあります。違いはストーカー規制法とDV防止法の違い|自分のケースはどっちで守られる?で説明しています。

警察の手続と並行して進められること

援助の申出と、勤務先・学校の協力

 警察には、被害を自ら防ぐための措置の教示などの援助を求めることもできます(同法7条)。また、2025年12月30日施行の改正で、被害を受けている方を雇用する者や、在籍する学校の長も援助に努める主体に加えられました(同法9条3項)。勤務場所や時間への配慮、学校のホームページに氏名を載せないといった協力を求めやすくなっています。

弁護士の名前で通知し、合意書を作る

 警察の判断とは別に、弁護士が代理人として相手に連絡や接触の中止を求める通知を送り、接触しないことを約束する合意書を交わす方法があります。警察への申出に向けて、記録や時系列の整理を弁護士と一緒に進めることも考えられます。

 警察の手続と弁護士による対応は、どちらか一方を選ぶものではなく、並行して進めることができます。代理人を立てる意味は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で、実際の経過は【解決事例】警察に相談しても止まらなかった職場への押しかけが、弁護士の迅速な介入により約2週間で解決した事例で紹介しています。

裁判所に接近の禁止を求める

 民事の手続として、裁判所に接近や連絡の禁止を命じる仮処分を申し立てる方法もあります。警察の判断を待たずに進められる一方、被害を裏付ける資料の準備や、担保金が必要になることがあります。使い分けは接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けをご覧ください。

改めて警察に申し出るときに整えておきたいこと

持参するものと伝え方

 改めて申し出る際は、時系列の一覧、記録の写し、相手について分かっている情報、以前に受け取った書面があればその書面を持参します。そのうえで、相談ではなく「警告を求める申出をしたい」こと、あるいは「禁止命令等を求めたい」ことを最初に伝えると、手続の行き違いを防ぎやすくなります。

申出先は一つに限られない

 警告は、申出をした方の住所地、相手の住所地、行為が行われた場所などを管轄する警察本部長等が行うことができます(同法14条)。窓口は警察署の生活安全課のほか、警察相談専用電話(#9110)でも案内を受けられます。対応に疑問が残る場合には、都道府県公安委員会に苦情を申し出る制度もあります(警察法79条)。

 なお、身の危険を感じる場面では、手続の検討よりも110番通報による安全の確保を優先してください。

よくあるご質問

警告を求めると、相手を刺激してしまわないか心配です

 警告をきっかけに行為がやむこともあれば、反発が強まることもあり、どちらになるかを事前に見通すことは難しいのが実情です。申出の際に不安を伝え、避難先や連絡方法、援助の内容をあわせて相談しておくと、警告後の動きに備えやすくなります。

一度警告が出なかった場合、もう申し出ることはできませんか

 新たな行為があった場合や、記録を整えて事情が変わった場合には、改めて申し出ることができます。書面で通知された理由を踏まえ、何を補えばよいかを整理してから臨むことが大切です。

警察の判断を待つ間に、弁護士へ相談してもよいのでしょうか

 警察への申出と弁護士への相談は両立します。警察の手続を進めながら、通知や合意書、民事の手続を並行して検討することができます。相談先の使い分けは警察に相談すべきか、弁護士に相談すべきか|窓口の使い分け早見表で整理しています。

まとめ


  1. 警告は、警告を求める申出を受け、規制に反する行為と反復のおそれが認められるときに出されます(ストーカー規制法4条1項)。
  2. 2025年12月30日から職権による警告も可能になりましたが、警告を求める意思を明確に伝えることが出発点です(同法4条)。
  3. 申出をして警告が出なかったときは、その旨と理由が書面で通知されます(同法4条4項)。
  4. 警告が出ない主な理由は、目的の要件、反復のおそれ、相手の特定、申出の有無に整理でき、それぞれ見直しの方向が異なります(同法2条1項)。
  5. 警告を経なくても、公安委員会に禁止命令等を求めることができます(同法5条1項)。
  6. ストーカー行為罪による告訴のほか、他の罪、迷惑防止条例、DV防止法も選択肢になります(同法18条)。
  7. 弁護士による通知や合意書、裁判所の仮処分は、警察の手続と並行して進められます。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカー被害に関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。警察に相談したものの手続が進まない方、申出や記録の整え方に迷っている方は、これまでの経過が分かる資料をお持ちのうえでご相談ください。

警察の手続と並行して、相手への通知や合意書の作成など、弁護士が代理人として取れる対応もご案内します。ご本人だけでなく、ご家族からのご相談もお受けしています。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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