【ストーカートラブル】加害者が私の親や兄弟に連絡してくるときは?
この記事は、2026年10月時点の「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下「ストーカー規制法」)、刑法、東京都の迷惑防止条例をもとにしています。2025年6月1日施行の刑法改正により、懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されており、罰則はその表記で記載しています。
帰り道の駅の改札、自宅マンションの前、勤務先の通用口。ご相談の場では「別れた相手が何も言わずに立っていた」「偶然を装って何度も同じ場所に現れる」という声を多く伺います。その一方で、「話をしたかっただけなのに、ストーカー扱いされた」とおっしゃる方からのご相談もあり、待ち伏せをめぐる受け止め方には大きな開きがあります。
待ち伏せへの対処としては「警察に相談する」「証拠を残す」という説明が広く知られています。それ自体は誤りではありませんが、実際に相手が目の前に現れたその瞬間に何を優先し、何を避ければよいのかまで具体的に書かれたものは多くありません。
この記事では、待ち伏せをされた「その場」での行動を中心に、その日のうちにしておきたいこと、繰り返される場合に使える手続までを順に整理します。ストーカー規制法の制度全体については、元交際相手のつきまとい・待ち伏せ|ストーカー規制法でできる対応で解説しています。
待ち伏せはストーカー規制法が定める行為のひとつ
条文に「待ち伏せ」が明記されている
ストーカー規制法は、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの怨恨の感情から行われる一定の行為を「つきまとい等」と定め、その最初の類型に「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり」といった行為を挙げています(ストーカー規制法2条1項1号)。待ち伏せは、法律がはっきりと名前を挙げて規制している行為です。
この規制は、住居の付近に限られません。勤務先や学校、駅や店舗など、その人が普段いる場所や現にいる場所での待ち伏せも対象になります。
一度でも警告の対象になり得る
つきまとい等を繰り返す「ストーカー行為」に当たると、刑事罰の対象になります(同法18条)。一方で、反復していない段階であっても、相手に不安を覚えさせるつきまとい等があれば、警察は相手に警告を出すことができます(同法4条)。「一度だけだから相談するほどではない」と考える必要はなく、最初の一回から相談の対象になり得ます。
なお、恋愛感情とは無関係の嫌がらせとして待ち伏せが行われる場合でも、東京都では迷惑防止条例がつきまといなどを禁じており(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例5条の2)、ストーカー規制法の枠外でも対応の道は残っています。
その場で優先したいのは「離れること」と「人のいる場所へ移ること」
立ち止まって話し込まない
相手が声をかけてきたとき、「ここで一度きちんと話せば分かってもらえるかもしれない」と考えて足を止める方は少なくありません。しかし、待ち伏せをしてまで接触しようとする相手との話し合いは、その場で区切りがつきにくく、長引くほど相手の要求が具体的になったり、感情が高ぶったりすることがあります。
その場では、短く断って歩き続けるのが基本です。「今は話しません」「連絡もしないでください」のように、理由を説明しすぎず、相手の言葉に一つひとつ反論しない対応が、結果として安全につながりやすくなります。
人の目がある場所へ向かう
相手から離れるときは、人通りの少ない道や自宅の方向ではなく、明るく人の多い場所へ向かうことを意識してください。
- 駅の改札付近や駅員のいる窓口。
- 交番。
- コンビニエンスストアや深夜営業の店舗。
- 勤務先の受付や警備員のいる建物の入口。
店舗に入った場合は、店員に「知人につきまとわれていて外に出にくい」と伝えるだけでも、店内で待たせてもらえたり、店員が通報してくれたりすることがあります。タクシーを使って移動するのも、相手との距離をとる有効な方法です。
危険を感じたら迷わず110番する
腕をつかまれた、進路をふさがれて動けない、刃物のような物を持っている、「殺す」などの言葉を向けられた。こうした場面は、ストーカー規制法の問題にとどまらず、暴行罪(刑法208条)や脅迫罪(同法222条)などに当たり得る状況です。身の危険を感じたときは、相談電話ではなく110番を選んでください。
通報の際は、今いる場所、相手の特徴と人数、何をされているかの三点を短く伝えると、警察官の到着につながりやすくなります。110番を呼ぶかどうか迷う段階の考え方は、【ストーカートラブル】夜道でつけられている気がする|警察に相談してよい段階かでも取り上げています。
その場で避けたい行動
自宅や新しい住まいへまっすぐ帰らない
相手を振り切ったつもりでも、後をつけられていることがあります。とくに転居したばかりの方や、相手に住所を知られていない方は、そのまま自宅に向かうと住まいを特定されるおそれがあります。
しばらく人の多い場所で様子を見る、家族や友人に迎えに来てもらう、遠回りをしてから帰るといった工夫が考えられます。
手を出したり、言い返し続けたりしない
恐怖や怒りから、相手を突き飛ばしたり、スマートフォンを奪い取ったりしてしまう場面もあり得ます。正当防衛が認められるのは、急迫不正の侵害に対し、やむを得ずにした行為に限られ(刑法36条1項)、その範囲は思われているほど広くありません。結果として、被害を受けた側が暴行や傷害の疑いをかけられ、話が複雑になることもあります。
大声で非難を重ねることも、相手の感情を刺激し、その後の行動をエスカレートさせるきっかけになりかねません。
渡された物を受け取らない・後を追わない
次のような行動も、その場では避けておきたいところです。
- 手紙やプレゼントをその場で受け取る。
- 次に会う約束や、連絡先の交換に応じる。
- 立ち去った相手を追いかけて、行き先を確かめようとする。
- その場の様子を、相手が特定できる形でSNSに投稿する。
受け取りや約束は、相手に「関係が続いている」と受け止められる余地を残します。後を追うことやSNSへの投稿は、ご自身の安全を損ねたり、別のトラブルを招いたりするおそれがあります。
その場でできる範囲の記録と、帰宅後すぐの書き残し
撮影や録音は安全が確保できる範囲で
待ち伏せの様子を写真や動画で残せれば、後の相談や手続で役立ちます。自分が当事者となっている会話を録音することも、一般に違法とされるものではありません。
ただし、スマートフォンを相手に向けたことで相手が逆上し、取り上げようと近づいてくることもあります。記録は、離れる・人のいる場所へ移るという行動より優先するものではありません。撮影が難しければ、録音アプリをポケットの中で動かしておくだけでも十分です。
帰宅したらその日のうちにメモを残す
記憶は時間とともに薄れます。安全な場所に着いたら、次の内容をメモやスマートフォンに書き残しておきましょう。
- 日付、時刻、場所(駅名や出口、建物の名前まで)。
- 相手の服装、持ち物、乗っていた車やナンバー。
- 相手が口にした言葉と、自分が返した言葉。
- その場にいた人や、助けを求めた店舗・駅の名前。
- 感じた恐怖の程度や、その後の体調の変化。
一回ごとのメモが積み重なると、「反復」の有無や相手の行動の傾向を、警察に具体的に示す材料になります。
防犯カメラの映像は早めに保全を
駅や店舗、マンションの防犯カメラは、一定期間で上書きされる仕組みのものが多くあります。映像が残っている可能性がある場合は、管理者に保存をお願いするとともに、早めに警察へ相談しておくとよいでしょう。映像の扱いについては、【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点で詳しく解説しています。
その日のうちと、翌日以降にしておきたいこと
警察への相談
110番するほどの緊急性がなかった場合でも、最寄りの警察署の生活安全課や、警察相談専用電話(#9110)に相談しておくことをおすすめします。相談の記録が残ることで、次に同じことが起きたときに、警察が過去の経過を踏まえて対応しやすくなります。
| 状況 | 主な相談先 |
|---|---|
| その場で危険が迫っている | 110番 |
| 危険は去ったが不安が続いている | 最寄り警察署の生活安全課 |
| どこに相談すればよいか迷う | 警察相談専用電話(#9110) |
| 相手との交渉や法的手続を検討したい | 弁護士 |
警察と弁護士のどちらに先に相談するかで迷う場合は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序もあわせてご覧ください。
家族や職場と情報を共有する
待ち伏せの場所が自宅付近や勤務先であれば、同居する家族や職場の上司、警備担当に事情を伝えておくと、相手が再び現れたときに周囲が気づき、対応しやすくなります。勤務先への伝え方や配慮の求め方は、【ストーカートラブル】勤務先に配慮を求める|勤務地や勤務時間の変更で取り上げています。
帰り道と生活の動線を見直す
待ち伏せをする相手は、こちらの行動の決まった時間や経路を把握していることが少なくありません。帰宅時間や利用する駅、出口を変える、一人で帰る時間帯を減らすといった見直しが考えられます。
自宅マンションの前で待たれている場合は、管理会社への相談やオートロック、防犯カメラの活用も選択肢になります。具体的な方法は【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで解説しています。
待ち伏せが繰り返されるときに使える手続
警告と禁止命令
警察に相談した結果、相手に対して警告が出されることがあります(ストーカー規制法4条)。警告に従わない場合や、より強い対応が必要な場合には、公安委員会が禁止命令を出すことができ(同法5条)、禁止命令に違反してストーカー行為をすると、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金の対象になります(同法19条)。
緊急の禁止命令
相手の行動が差し迫っていて、通常の手続を待っていては被害の防止が難しい場合には、事前の聴聞を経ずに禁止命令が出される仕組みもあります(同法5条3項)。詳しくは【ストーカートラブル】緊急の禁止命令とは|聴聞を経ずに出る場面をご覧ください。
弁護士を通じた対応
警察の手続と並行して、弁護士が代理人として相手に接触をやめるよう求める通知を送る、接触禁止や違約金を定めた合意書を結ぶ、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てるといった方法もあります。ご本人が相手と直接やり取りをせずに済むようにすることは、待ち伏せの再発を防ぐうえでも意味があります。代理人を立てる意味は、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。
よくあるご質問
偶然会っただけかもしれず、待ち伏せだと言い切れません。相談してもよいのでしょうか。
相談してかまいません。一度目の段階では偶然と区別がつきにくいことも多く、警察も相談の内容から状況を確認していきます。同じ場所や時間帯で繰り返し現れる、こちらの予定を知っているようなそぶりがあるといった事情があれば、それを伝えてください。日時と場所のメモがあると、話が伝わりやすくなります。
その場で「もう二度と来ないで」とはっきり伝えた方がよいですか。
拒否の意思を短く伝えること自体は、意味のある対応です。ただし、その場で長く言い合いをしたり、相手を責め続けたりすると、かえって感情を刺激することがあります。一言伝えたら離れることを優先し、それ以上の意思表示は、警察の警告や弁護士からの通知といった形に委ねる方が安全です。
相手は元交際相手で、別れ話がまだ終わっていません。それでも待ち伏せとして相談できますか。
相談できます。交際関係の清算が終わっていないことは、待ち伏せを許す理由にはなりません。むしろ、話し合いが残っている場合ほど、相手は「会って話す必要がある」と考えやすく、待ち伏せが繰り返されることがあります。直接会わずに話を終える方法として、弁護士が間に入る選択肢もあります。
まとめ
- 待ち伏せは、ストーカー規制法が「つきまとい等」の一つとして明記している行為です(ストーカー規制法2条1項1号)。
- 反復していない段階でも、警察が相手に警告を出せる場合があります(同法4条)。
- その場では立ち止まって話し込まず、短く断って人のいる場所へ移ることを優先します。
- 身の危険を感じたら110番します。暴行や脅迫に当たる行為があれば、刑法の罪も問題になります(刑法208条、222条)。
- 手を出すと正当防衛の範囲を超えるおそれがあり、自宅へまっすぐ帰ると住所を知られるおそれがあります(刑法36条)。
- 帰宅後すぐに日時・場所・相手の言動をメモし、防犯カメラの映像は早めに保全を求めます。
- 繰り返される場合は、禁止命令や緊急の禁止命令(同法5条)、弁護士による通知や仮処分を組み合わせて対応します。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、ストーカーやつきまといに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。待ち伏せをされて不安が続いている方、警察に相談したものの今後の対応に迷っている方は、状況を整理するところからお手伝いします。
ご本人だけでなく、ご家族が被害に気づいて心配されている場合のご相談も承っています。相手と直接やり取りをせずに済む方法を含め、一緒に考えていきましょう。


