【ストーカートラブル】元配偶者からのつきまとい|子の面会を口実にされる
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(職権による警告の創設など)を反映した内容です。
つきまといや待ち伏せ、しつこい連絡が続くと、「いつ、何があったのか」を後から思い出すのは意外と難しいものです。警察に相談したときや弁護士に依頼したときに、手元の記録が状況を伝える大きな手がかりになります。この記事では、ストーカー被害のメモをどのような項目で、どのように書いておけばよいのかを、記入例とあわせて解説します。
ストーカー被害で記録が役に立つ理由
ストーカー規制法は、つきまとい・待ち伏せ・押し掛け、面会や交際の要求、拒まれた後の連続した電話やメッセージなどを「つきまとい等」と定め、これを反復して行うことを「ストーカー行為」としています。つまり、法律上の判断では「一度何かがあった」ことだけでなく、「どのような行為が、どのくらいの間隔で繰り返されているか」が問われます。
繰り返しを示すには、出来事を一つひとつ積み重ねた記録が欠かせません。メッセージの画面や着信履歴だけでは分からない、待ち伏せやうろつきのような「その場で起きた出来事」は、ご本人のメモがほぼ唯一の手がかりになることもあります。
2025年12月30日施行の改正により、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できるようになりました。ただ、警察が警告の必要性を判断する材料は、やはり具体的な事実です。警告、禁止命令、刑事告訴、接近禁止の仮処分、慰謝料の請求のいずれの手続でも、日付と内容が特定された記録があると、事実関係を説明しやすくなります。
連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違い
メモに書いておきたい項目
| 項目 | 書き方の例 | 書くときのポイント |
|---|---|---|
| 日時 | 10月3日(金)21時10分ごろ | 分からなければ「21時台」など幅をもたせ、推定であることを書く |
| 場所 | 自宅マンションのエントランス前 | 駅名・建物名・出口など、後で第三者が特定できる程度に |
| 相手の行為 | 植え込みの横に立っており、私が近づくと名前を呼んできた | 見たこと・聞いたことを具体的に書く |
| 相手の言葉 | 「なんで返事くれないの」 | 覚えている範囲でそのまま書き、うろ覚えならその旨を添える |
| 自分の対応 | 返事をせずに管理人室へ入った | 相手に何かを伝えた場合は、その言葉も書く |
| 居合わせた人 | 管理人の〇〇さんが様子を見ていた | 名前が分からなければ特徴や立場を書く |
| 関連する記録 | 同日21時25分に着信2回(履歴を保存) | スクリーンショットや写真のファイル名と対応させる |
| 生活への影響 | 翌日、帰宅ルートを変えた | 通院、欠勤、転居の検討なども事実として書く |
すべての項目を毎回埋める必要はありません。最低限「いつ」「どこで」「何があったか」の3点があれば、記録として意味を持ちます。
書き方の5つのポイント
できるだけその日のうちに書く
時間が経つほど、日時や言葉の細部はあいまいになります。出来事があった当日か、遅くとも翌日までに書いておくと、記録の正確さを保ちやすくなります。すぐに書けない場合は、スマートフォンのメモに日時と一言だけ残しておき、落ち着いてから書き足す方法もあります。
見たことと推測を分けて書く
「相手の車が停まっていた」と書くより、「白いワゴン車が停まっていた。ナンバーの末尾が相手の車と同じ〇〇だった」と書くほうが、何を根拠にそう判断したのかが伝わります。顔をはっきり見ていない場合は「後ろ姿が似ていた」など、確かめられた範囲をそのまま書いてください。推測を事実のように書いてしまうと、記録全体の信用に影響するおそれがあります。
相手の言葉は言い換えずに残す
「脅された」「ひどいことを言われた」とまとめるのではなく、相手が実際に口にした言葉をそのまま書くことが大切です。どの言葉がどの行為類型にあたるのか、あるいは脅迫などの別の犯罪にあたる可能性があるのかは、具体的な言葉から判断されるためです。
感情ではなく出来事を中心に書く
怖かった、つらかったという気持ちを書いてはいけないわけではありません。ただ、記録の中心は出来事に置き、気持ちは「眠れなかった」「外出を控えた」など、生活への影響として書き添えると、第三者に伝わりやすくなります。
書き直さず、追記で残す
後から間違いに気づいたときは、元の記載を消さずに、訂正した日付と正しい内容を書き足してください。紙のノートであれば二重線で訂正し、パソコンやスマートフォンであれば、元のファイルを残したまま別の行に追記する方法が考えられます。きれいに清書し直すと、いつ書かれた記録なのかが分かりにくくなることがあります。
記入例
| 日時 | 場所 | 出来事 | 自分の対応 | 関連する記録 |
|---|---|---|---|---|
| 10月3日 21時10分ごろ | 自宅マンション前 | 相手が植え込みの横に立っていた。近づくと私の名前を呼び「なんで返事くれないの」と言った | 返事をせず管理人室へ入った | 管理人〇〇さんが目撃 |
| 10月3日 21時25分 | 自宅 | 相手の番号から着信2回 | 出なかった | 着信履歴のスクリーンショット(画像001) |
| 10月5日 8時ごろ | 〇〇駅南口改札 | 改札の外に相手がいた。目が合ったが声はかけられなかった | そのまま電車に乗り、職場の上司に連絡した | 上司へのLINE(8時15分) |
表の形にしておくと、回数や間隔がひと目で分かり、警察や弁護士に説明するときにもそのまま使いやすくなります。
紙・スマートフォン・パソコン、どれで残すか
| 方法 | 向いている点 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 紙のノート | 手書きの筆跡と書いた順序が残り、後から書き換えた形跡が分かりやすい | 紛失や持ち出しに備え、写真を撮って控えを残しておく |
| スマートフォンのメモ | 出来事の直後にすぐ書ける | 端末を相手に見られる環境にないか、同期先の設定も含めて確認する |
| パソコンの表計算ソフト | 時系列の一覧表にまとめやすい | 元のファイルを残し、日付ごとに保存しておく |
どの方法でも、保存先を1か所にしないことが大切です。また、交際中に相手とアカウントやパスワードを共有していた場合は、クラウドのメモや写真が相手に見られてしまうおそれもあります。保存場所を決める前に、ログイン情報や共有設定を見直しておくと安心です。
信頼できる家族や友人がいる場合は、出来事があった日に「今日こういうことがあった」と短く連絡しておく方法もあります。送ったメッセージには日時が残るため、メモを書いた時期を裏づける材料になります。また、周囲の人が事情を知っていれば、相手の姿を見かけたときに知らせてもらったり、帰宅時に付き添ってもらったりと、身の安全を守るうえでも助けになります。ただし、共通の知人を通じて相手に情報が伝わるおそれもあるため、伝える相手は慎重に選んでください。
【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止める
メモと一緒に保管しておきたいもの
- メッセージやSNSの画面(送信者のアカウント名と日時が写るように撮影したもの)。
- 着信履歴や留守番電話の録音。
- 手紙・贈り物・封筒(消印や差出人の記載を含めて、受け取ったままの状態で保管したもの)。
- 相手の姿や車両を撮影した写真・動画、防犯カメラの映像。
- 相手との会話の録音。
- 心身の不調で受診した記録や診断書。
- 警察や相談窓口に相談した日時、窓口名、担当者名、言われた内容のメモ。
メモの「関連する記録」の欄にファイル名や保管場所を書いておくと、証拠と出来事の対応関係が分かりやすくなります。電話や防犯カメラの記録の残し方は、次の記事でも解説しています。
【ストーカートラブル】無言電話・非通知の着信が続く|記録と止め方
【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点
記録をつけるときに避けたいこと
- 記録や撮影のために、自分から相手に近づいたり後を追ったりすることは避けてください。
- 証拠となる言葉を引き出そうとして、相手に返信や問いかけをすることは控えてください。相手が「やり取りが続いている」と受け止め、行為が長引くおそれがあります。
- 画面を整理するために、元のメッセージや画像を削除しないでください。
- 記録を続けることだけに専念し、相談を先延ばしにすることは避けてください。危険を感じたときは、記録より安全の確保を優先してください。
接触を断つときの基本的な考え方は、次の記事でも取り上げています。
ストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方
記録がそろっていなくても相談はできます
「最初のころの記録がない」「メモが途中で途切れている」という方も少なくありません。過去の出来事は、思い出せる範囲で書き出し、「後から思い出して書いた」ことを添えておけば十分です。当時のメッセージ履歴や予定表、交通系ICカードの利用履歴などから日付を確かめられることもあります。
以前に警察へ相談したことがある場合は、その相談記録が経緯を示す資料になることがあります。いったん収まったつきまといが再び始まったときも、以前の記録は今回の相談に生かせます。
【ストーカートラブル】警察への相談記録を手元に取り寄せる|開示請求の手順と黒塗りの読み方
【ストーカートラブル】数年ぶりにつきまといが再開した|以前の記録を生かす
弁護士にご相談いただいた場合は、お手元のメモやスクリーンショットをもとに時系列の一覧表を作り、どの出来事がどの行為類型にあたりうるのかを整理します。そのうえで、警察への警告や禁止命令の申出、告訴、相手方への通知、接近禁止の仮処分など、状況に応じた手段を一緒に検討します。警察と弁護士のどちらに先に相談するかで迷っている方は、次の記事も参考にしてください。
【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序
記録は、完璧な形で始める必要はありません。今日の出来事を一行書き留めることが、後の手続を進めるうえでの土台になります。一人で記録を続けることに負担を感じている方も、その段階でご相談いただいて構いません。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


