相手が18歳未満だった|「知らなかった」は通用する?児童買春・児童ポルノ禁止法
この記事は、2026年10月時点の民法・刑法・売春防止法・弁護士法の規定をもとに、店を通さず個人で営業している女性とのトラブルで、客の側が金銭を求められた場面を整理したものです。売春防止法については、「買う側」の勧誘行為にも罰則を設ける方向での見直しが法務省で検討されており、改正法が成立した場合は記事の内容が変わる部分があります。
SNSやマッチングアプリ、掲示板などを通じて、店に所属せず個人で客をとっている女性と会った後、「女性の知り合いだという男性から連絡が来た」「本人ではなく、マネージャーを名乗る人物から金額を示された」というご相談をいただくことがあります。風俗店であれば店が窓口になるのが通常ですが、個人で営業している女性との間では、誰が、どのような立場で請求しているのかが見えにくくなりがちです。
この記事では、請求してくる可能性がある人を立場ごとに分け、請求の根拠の見分け方と、誰と話をまとめれば終わりにできるのかを解説します。
個人で営業している女性とのトラブルが、店でのトラブルと違う点
間に立つ「店」がいない
風俗店でのトラブルでは、店が独自の損害(営業上の損害や規約違反の違約金など)を主張しつつ、女性本人の分も含めて請求してくる形がよく見られます。これに対し、個人で営業している女性との間には、客と女性本人のほかに当事者がいません。そのため、「店の損害」を理由とする請求は、本来それを主張できる立場の人がいないことになります。
一方で、連絡はLINEやSNSで直接届くことが多く、相手の本名が分からないまま話が進むこともあります。請求している人の立場を一つずつ確かめる作業が必要になります。
「個人」に見えても、背後に人がいることがある
個人を装っていても、実際には複数の女性を手配する人物やグループが関わっている場合があります。いわゆる「援デリ」と呼ばれる形で、トラブルの後に「運営」や「管理している者」を名乗る人物が出てくるのは、この類型であることが少なくありません。売春の周旋や管理は売春防止法で処罰の対象とされている行為であり(売春防止法6条、12条)、そうした人物からの請求は慎重に扱う必要があります。店を介さない形の危険については、援デリ・派遣型の個人売春トラブル|店を介さない危険で詳しく取り上げています。
請求してくる可能性がある人を立場ごとに分ける
誰から請求されたかによって、まず確かめることは次のように変わります。
| 請求してくる人 | 考えられる請求の根拠 | まず確かめたいこと |
|---|---|---|
| 女性本人 | 不法行為に基づく損害賠償(慰謝料・治療費など) | 請求の理由となる具体的な出来事と、損害の中身 |
| 女性の代理人弁護士 | 女性本人の損害賠償請求を代理するもの | 弁護士として登録されているか、本人から委任を受けているか |
| 交際相手・夫・知人を名乗る男性 | 原則として、本人に代わって自分の権利として請求する立場にない | 女性本人との関係と、本人の意思で動いているのか |
| 「運営」「管理者」を名乗る人物 | 店としての損害を主張できる立場にない場合が多い | どのような資格で、誰の損害を請求しているのか |
| 女性の親など家族 | 女性が18歳未満であれば、法定代理人として請求し得る | 女性の年齢と、請求している人との関係 |
女性本人からの請求
法的に請求の主体になり得るのは、基本的には女性本人です。同意の範囲を超えた行為があったとされる場合には、精神的な苦痛に対する慰謝料や、けがをした場合の治療費などを、不法行為に基づく損害賠償として求められることがあります(民法709条、710条)。もっとも、「傷ついた」と伝えられただけで支払義務が決まるわけではなく、どのような行為と損害があったのかが問題になります。慰謝料という名目での請求の考え方は、【風俗トラブル】女性を傷つけたとして「慰謝料」を求められたら、払う必要はある?をご覧ください。
女性の代理人弁護士からの請求
弁護士は本人から委任を受けて交渉する立場にあるため、窓口としては正当なものです。ただし、「弁護士に頼んだ」と言いながら名前を明かさない場合もあるため、日本弁護士連合会の弁護士情報検索などで登録の有無を確かめておくと安心です。確かめ方は【不当要求対応】『弁護士に相談した』と言われた|本当に代理人が就いたのかを確かめるで解説しています。
交際相手・夫・知人を名乗る男性からの請求
トラブルの後、「彼女の交際相手だ」「面倒を見ている者だ」などと名乗る男性から連絡が来ることがあります。こうした人物は、女性本人の損害について自分の権利として請求できる立場には、通常ありません。また、報酬を得る目的で本人に代わって示談の交渉をしたり示談金を受け取ったりすることは、弁護士法72条(非弁行為の禁止)との関係が問題になり得ます。
女性の夫を名乗り、不貞行為の慰謝料として請求してくる場合もあります。もっとも、夫が女性の営業を知っていたり、あらかじめ関わっていたりした事情があれば、夫が精神的な苦痛を受けたとはいいにくく、慰謝料は認められにくいと考えられています。いわゆる美人局の形であれば、請求そのものが恐喝に当たる可能性もあります(刑法249条)。対応の考え方は【風俗トラブル】キャストの交際相手・知人を名乗る男性から連絡が来たもご参照ください。
「運営」「管理者」を名乗る人物からの請求
個人を装った形で営業していたとしても、背後の人物が「営業できなくなった分を払え」「うちのルールでは罰金だ」と求めてくることがあります。私人が他人に罰金を科すことはできず、売春の周旋を前提とした取り決めは、公序良俗に反するものとして無効と判断される可能性が高いと考えられます(民法90条)。どのような資格で、誰の損害を求めているのかを確かめることが出発点になります。
女性の家族からの請求
女性が18歳未満だった場合には、親権者である親が法定代理人として請求の窓口になることがあります。この場合は児童買春・児童ポルノ禁止法などに基づく刑事手続も問題になり得るため、早めの相談をおすすめします。一方で、「実は未成年だった」という話が、金銭を求めるための口実として使われる例もあります。事実の確かめ方は「未成年だった」と脅された|事実確認と恐喝への対応をご覧ください。
請求の名目ごとに、誰の権利なのかを確かめる
主な名目について、請求できる立場の人と考え方を整理します。
- 慰謝料・治療費・休業による損害は女性本人の損害であり、請求できるのは本人か、本人から依頼を受けた弁護士です。
- 「罰金」「迷惑料」「営業損害」は、店が存在しない以上、主張できる立場の人がいないのが通常です。
- 約束した料金の残りは、売春を内容とする約束が公序良俗に反し無効とされる可能性が高く、法的な請求は認められにくいと考えられます。
- 「警察に言わないかわりに払え」という求めは、言い方や状況によっては恐喝に当たるおそれがあります。
なお、売春を内容とする約束が無効とされる場合、すでに支払った代金の返還を求めることも、不法原因給付として認められにくいと考えられています(民法708条)。お金の性質ごとの整理は、誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別でも解説しています。
刑事手続との関係
誰に払っても刑事手続が止まるとは限らない
同意のない性交があったと主張される場合には、不同意性交等罪(刑法177条)が問題になります。この罪は告訴がなくても起訴できる罪であり、示談が成立したかどうかにかかわらず、警察が捜査を進めることはあり得ます。示談が処分の判断で考慮される事情として意味を持つのは、被害を受けたとされる女性本人との間で成立した示談です。女性本人の意思が確認できない男性や「運営」に支払っても、刑事手続の面では評価されにくいことがあります。
客の側の売春防止法上の位置づけ
現行の売春防止法は、売春をすることや相手方になることを禁止していますが(売春防止法3条)、相手方となった客を処罰する規定は置いていません。ただし、冒頭で触れたとおり、「買う側」の勧誘行為に罰則を設ける方向での見直しが検討されています。詳しくは対価を払って本番に至った場合|売春防止法上、客はどう位置づけられるかをご覧ください。
連絡が来たときに確かめること・避けたいこと
最初に確かめておくこと
- 連絡してきた人が名乗った名前、女性本人との関係、連絡に使われたアカウントや電話番号。
- 請求された金額と、その理由として説明された内容。
- その請求が女性本人の意思によるものだと示す事情があるかどうか。
- 女性と知り合った経緯、やり取りの画面、支払いの記録など、当日の経過が分かるもの。
SNSのやり取りは、相手がアカウントを削除すると見られなくなるため、早めに画面を保存しておきます。
避けたいこと
- 求められるまま、その日のうちに支払うこと。
- 本人のものか分からない個人名義の口座に振り込むこと。
- 身分証の写真や勤務先の情報を送ること。
- 謝罪のつもりで、女性本人や相手方に何度も連絡を重ねること。
とくに支払いは、一度応じると「まだ足りない」と追加の請求が続くきっかけになることがあります。振込先の確かめ方は【風俗トラブル】振込先が個人名義の口座だった|払う前に確かめることで取り上げています。
誰と話をまとめれば終わりにできるのか
女性本人を当事者にした合意書を交わす
示談は契約であり、その効力は原則として合意した当事者の間にしか及びません。個人で営業している女性とのトラブルで後の請求を防ぐには、女性本人を当事者として合意書を作り、「本件に関し、ほかに債権債務がないことを相互に確認する」といった清算条項を入れておくことが基本になります。間に立った男性や「運営」を名乗る人物とだけ合意しても、女性本人が別に請求してくる余地は残ります。この点は【風俗トラブル】示談書に女性本人の名前がない場合、何が問題になる?で詳しく解説しています。
本名が分からない相手との合意
個人で営業している女性とは、SNS上の名前しか分からないことも少なくありません。合意書を交わすには、相手が誰なのかを確かめる必要があります。弁護士が窓口になれば、相手の身元を確認したうえで合意書を作るという進め方を取ることができます。当事務所でも、SNSで知り合った身元の分からない相手方について、身元を確認したうえで合意書を交わして解決した例があります。経過は【解決事例】SNSで知り合った女性に録音が知られ「警察か示談か」と迫られた|身元不明の相手方を確認し、受任から5日で合意書を締結をご覧ください。
よくあるご質問
女性本人ではなく、知り合いを名乗る男性に払ってしまいました。もう一度払う必要がありますか
男性に支払ったことで、女性本人との関係が当然に解決するとは限りません。一方で、女性本人が男性に受け取りを任せていたなどの事情があれば、本人に対する支払いとして扱われる可能性もあります。支払った経緯を整理したうえで、本人との間で改めて合意を確認するかどうかを検討することになります。払ってしまったお金を取り戻せるかについては、払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還もご参照ください。
まとめ
- 個人で営業している女性との間には店という当事者がいないため、「店の損害」を理由とする請求は、主張できる立場の人がいないのが通常です。
- 法的に請求の主体になり得るのは基本的に女性本人であり、慰謝料や治療費は不法行為に基づく損害賠償として問題になります(民法709条、710条)。
- 交際相手や知人を名乗る男性、「運営」を名乗る人物は、通常、自分の権利として請求する立場になく、報酬目的の交渉は弁護士法72条との関係が問題になり得ます。
- 不同意性交等罪は告訴がなくても起訴できる罪であり、刑事手続の面で意味を持つのは女性本人との示談です。
- 後の請求を防ぐには、女性本人を当事者とし、清算条項を入れた合意書を交わすことが基本になります。
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弁護士に相談するタイミング
個人で営業している女性とのトラブルでは、請求してくる人が途中で入れ替わったり、本人の意思が見えないまま金額だけが示されたりすることがあります。誰から、どのような立場で請求されているのかを整理する段階からご相談いただくことで、支払う必要があるのか、誰と話をまとめればよいのかを見通しやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


