【風俗トラブル】出張マッサージで性的な行為を求めたとして請求されたら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は2026年10月時点の法令をもとにした一般的な解説です。実際の評価は、利用したサービスの種類、当日のやり取り、残っている記録によって変わります。


自宅やホテルに施術者が来る出張マッサージを利用した後、店から「施術者に性的な行為を求めた」として、罰金や慰謝料の名目でお金を求められたというご相談があります。言葉で頼んだだけなのか、体に触れたのか、断られた後にどうしたのか。請求に応じるかどうかを考える前に、当日の出来事をこの3点で切り分けることが出発点になります。

 この記事では、出張マッサージに特有の事情を踏まえて、請求の名目ごとの考え方、その場と後日の対応、示談に進む場合の注意点を解説します。

出張マッサージのトラブルが店舗型と違う点

 出張マッサージは、店舗に出向くサービスと比べて、トラブルになったときの状況がいくつかの点で異なります。

  • 施術の場所が利用者の自宅や宿泊先で、店側に住所や部屋番号を知られています。
  • 部屋の中は利用者と施術者の二人だけで、やり取りを見ていた第三者がいません。
  • 近くにドライバーやスタッフが待機していることが多く、施術者からの連絡ですぐに部屋へ来ることがあります。
  • 利用規約への同意が、書面ではなく予約サイトや電話で済まされていることがあります。


 また、出張マッサージには、性的なサービスを提供しないリラクゼーションとして営業しているものと、無店舗型性風俗特殊営業の届出をして性的なサービスを前提に営業しているものがあります。前者で性的な行為を求めれば店の規則に反する行為と受け止められやすく、後者ではサービスの範囲内か範囲外かという話になります。利用した店がどちらだったのかは、請求の中身を考えるうえで最初に確かめておきたい事情です。届出の有無と客の立場の関係は、【風俗トラブル】メンズエステの『無店舗型』と『店舗型』|届出の有無で客のリスクはどう変わるかでも解説しています。施術者から被害を訴えられた場面については、【風俗トラブル】出張型のメンズエステで施術者から被害を訴えられたもご参照ください。

「求めた」だけなのか、触れたのかで評価は大きく変わる

 同じ「性的な行為を求めた」という言い方でも、実際に何があったかによって、法的な評価は大きく異なります。目安を整理すると次のとおりです。

当日の出来事刑事上の評価の目安請求との関係
性的なサービスを言葉で頼み、断られてすぐにやめたそれだけで犯罪が成立する場面は限られる規則違反を理由とする請求の当否が中心になる
断られた後も繰り返し求めた、帰ろうとする施術者を引き留めた言動の内容によっては別の罪が問題になることがある精神的苦痛を理由とする請求が問題になりうる
同意なく体に触れた、自分の体に触れさせた不同意わいせつ罪に問われるおそれがある刑事手続を見据えた示談を検討する場面になる


 不同意わいせつ罪(刑法176条)は、同意しない意思を形成・表明・全うすることが難しい状態で行われたわいせつな行為を処罰するもので、法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。言葉で頼むこと自体は通常これに当たりませんが、相手に自分の体を触らせる行為は対象になりえます。施術者から誘われたように感じた場合や、その場で嫌がる様子が見えなかった場合でも、それだけで同意があったと扱われるわけではありません。

 出張マッサージは密室で行われるため、「頼んだだけ」か「触れた」かの境目について、利用者と施術者の言い分が食い違うことが珍しくありません。記憶があいまいな部分は、無理に断定せずに残しておくことが、後の判断を誤らないために大切です。体に触れてしまった場合の考え方は、メンズエステでお触りをして「触られた」と言われた。不同意わいせつ罪のリスクと対応もあわせてご覧ください。

請求の名目ごとの考え方


「罰金」「違約金」と言われた場合

 罰金は国が科す刑罰であり、店が客に科すことはできません。店が「罰金」と呼んでいるものは、法的には違約金か損害賠償として扱うことになります。違約金を支払う義務が生じるのは、事前にその内容に合意していた場合です。予約サイトや電話の案内で規約が示されていたとしても、金額まで具体的に示され、同意したといえるのかは確認が必要です。また、合意があったとしても、行為の内容に比べて高額すぎる部分は、公序良俗に反するとして効力が否定される余地があります。

「慰謝料」と言われた場合

 慰謝料は、施術者本人が受けた精神的苦痛に対する賠償です。言葉で一度頼んですぐにやめた場合と、断られた後も執拗に求め続けた場合とでは、苦痛の程度の評価も変わります。また、店が施術者の代わりに請求してきた場合、店にその権限があるのか、施術者本人がその請求を望んでいるのかも確かめておきたい点です。

「休業補償」「売上の補償」と言われた場合

 施術者が仕事を休んだ分や、予定していた予約が入らなくなった分を求められることもあります。この種の請求は、当日の出来事と休業との結びつきや、金額の裏付けがあって初めて成り立つものです。根拠となる資料の提示を求めずに、言われた金額をそのまま受け入れる必要はありません。

その場で支払いを求められたときに避けたいこと

 施術の直後に施術者やスタッフから強く迫られると、早く終わらせたい気持ちから求めに応じてしまいがちです。しかし、その場で決めたことは後から覆すのに手間がかかります。少なくとも次のことは、いったん保留にしておくことをおすすめします。

  • 求められるまま現金を渡すこと、ATMまで同行して引き出すこと。
  • 金額や支払期限が書かれた念書・借用書・示談書に署名すること。
  • 運転免許証などの身分証を預けること、撮影させること。
  • 勤務先や家族の連絡先を伝えること。
  • スマートフォンのロックを外して渡すこと。


 自宅で起きた場合、部屋は利用者が管理している場所ですので、話し合いを続けるかどうかは利用者が決められます。スタッフが大声を出す、帰ろうとしない、物を壊すといった状況になったときは、ためらわずに110番してください。ホテルであれば、フロントに連絡することも選択肢です。身に覚えのない請求で強く迫られている場合には、警察が間に入ることで、かえって状況が落ち着くこともあります。

 その場の判断については【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断、スタッフが部屋に来た場面については【風俗トラブル】ホテルの部屋に店のスタッフが来た|ドアを開ける前に考えること、すでに書面に署名してしまった場合は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで詳しく解説しています。

後日、電話やメッセージで請求されたとき

 出張マッサージでは、その場では何も言われず、数日たってから店を名乗る人物から電話やメッセージが届くこともあります。その場合はまず、店名、施術者の名前、利用した日時を相手に確認してください。これらを答えようとしない場合は、実際の店とは関係のない第三者が、流出した利用者の情報を使って連絡してきている可能性も考えられます。身に覚えのない請求への向き合い方は、【風俗トラブル】利用していない店から請求が来た|身に覚えのない請求への対応でも触れています。

 実際に利用した店からの連絡であっても、すぐに支払いや面談に応じる必要はありません。次のような記録を手元にそろえてから、対応を考えても遅くはありません。

  • 予約の履歴と、利用した店名・コース・時間の記録。
  • 支払いの記録(現金であれば金額と日時のメモ)。
  • 店や施術者とのメッセージ、着信履歴、留守番電話。
  • 当日の出来事を時刻ごとに書き出したメモ。


 住所を知られていることから、「家に行く」「家族に知らせる」と告げられて不安になる方も少なくありません。実際に来訪があっても応対する義務はなく、危険を感じるときは警察に相談してください。正当な請求であっても、家族や勤務先に知らせると告げて支払いを迫るやり方は、それ自体が問題になることがあります。

示談に進む場合に確認したいこと

 体に触れてしまったなど、利用者の側にも責任がある場合には、適切な内容で示談をしておくことが、刑事手続への発展や後日の蒸し返しを防ぐうえで大切です。示談書では、少なくとも次の点を確認してください。

  • 合意の当事者に、店の運営者と施術者本人の両方が入っていること。
  • 支払う金額の名目と内訳が明らかになっていること。
  • この合意以外に互いに請求しないことを確かめる清算条項があること。
  • 被害届や告訴をしないこと、出している場合は取り下げることについての条項があること。
  • 今後の接触を禁止する条項があること。
  • 住所・電話番号・身分証の画像などの個人情報を削除する条項があること。


 店とだけ合意しても、施術者本人からの請求や被害届まで当然に止まるとは限りません。条項の具体的な書き方は、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで解説しています。

弁護士に相談することでできること

 弁護士が代理人になると、店や施術者とのやり取りの窓口は弁護士に移り、ご本人が直接連絡を受ける必要はなくなります。そのうえで、請求の根拠と金額を確認し、身に覚えのない部分は争い、責任がある部分については相手方の言い分を踏まえて示談の条件を調整していきます。自宅への来訪や家族への連絡をやめるよう求めることも、弁護士を通じて行えます。

 もっとも、どのような結果になるかは事案によって異なり、相談したからといって必ず請求がなくなるわけではありません。自分で対応するか弁護士に任せるかの考え方は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情も参考にしてください。

よくあるご質問


冗談のつもりで一度聞いただけでも、払わなければならないのですか

 言葉で一度尋ね、断られてすぐにやめたのであれば、それだけで高額な支払い義務が生じる場面は限られます。ただし、利用規約の内容や、その後のやり取りによって評価は変わります。言われた金額で応じる前に、何を理由にした請求なのかを確かめてください。

施術者の方から誘うようなそぶりがあった場合でも、問題になりますか

 誘われたように感じたことは、当日の経緯として意味を持つことがあります。しかし、それだけで同意があったと扱われるわけではなく、特に体に触れた場合は慎重に考える必要があります。当日のやり取りをできるだけ具体的に書き出したうえで、ご相談ください。

住所を知られているので、払わないと家に来られそうで不安です

 来訪があっても、ドアを開けて応対する義務はありません。インターホン越しに対応せず、危険を感じたら110番してください。弁護士が窓口になった後は、自宅への来訪をやめるよう相手方に求めることもできます。

まとめ

 出張マッサージで「性的な行為を求めた」と請求されたときは、言葉で頼んだだけなのか、体に触れたのか、断られた後にどうしたのかを切り分けたうえで、請求の名目ごとに根拠を確かめることが大切です。その場で支払いや署名をせず、記録をそろえてから対応を考えることで、取れる手段は広がります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【風俗トラブル】出張マッサージで性的な行為を求めたとして請求されたら?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼