【風俗トラブル】SNSで知り合った個人の「出張サービス」で金銭トラブルになったら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

SNSのDMや投稿をきっかけに、店舗を通さず個人で「出張」をうたう相手と会い、その前後でお金の問題が起きたというご相談が寄せられています。前払いしたのに相手が来なかった、会った後に約束と違う金額を求められた、断ったら「家族や職場に知らせる」と言われた、といった形です。店舗型の風俗店と違って間に事業者がいないため、誰と何を約束したのかがあいまいなまま話が進みやすく、対応の順序を誤ると請求が長引くことがあります。この記事では、個人の出張サービスで起きやすい金銭トラブルの型と、法律上の位置づけ、場面ごとの考え方を整理します。

本記事は2026年10月時点の法令に基づいています。刑法の改正により、2025年6月から懲役・禁錮は「拘禁刑」に一本化されています。また、売春防止法については、法務省の有識者検討会が2026年9月に「買う側」の勧誘行為にも何らかの規制を設けるべきとする報告書をまとめており、今後の法改正によって内容が変わる可能性があります。


店舗型と個人の「出張サービス」は何が違うのか

 風俗店であれば、料金表や利用規約があり、トラブルの際は店舗の責任者が窓口になります。これに対してSNSで個人が募集する「出張サービス」は、条件の多くがDMのやり取りだけで決まり、相手の本名や連絡先が分からないことも珍しくありません。

項目店舗型の風俗店SNSの個人の出張サービス
料金・ルール料金表や規約が示されていることが多いDMでの口約束が中心で、後から変わりやすい
相手の素性店舗の所在地や運営者がある程度分かるアカウント名しか分からないことが多い
トラブル時の窓口店舗の責任者本人か、後から現れる第三者
年齢の確認店舗側に確認する仕組みがある自己申告だけで確かめる方法がない
やり取りの記録店舗側にも予約の記録が残るアカウントの削除でやり取りが消えることがある


 この違いから、個人の出張サービスでは「何をいくらで約束したのか」「相手は誰なのか」という前提があいまいになりやすく、請求の根拠を確かめる段階でつまずくことが多くなります。

起きやすい金銭トラブルの型

 ご相談の内容を整理すると、おおむね次のような悩みに分かれます。

  • 交通費や予約金を先に送ったのに、当日相手が来ず連絡も取れなくなった。
  • 会った後に「延長した」「オプションがついた」と言われ、約束より多い金額を求められた。
  • 会う前に断ったら「キャンセル料を払え」「冷やかしでも損害賠償になる」と言われた。
  • 行為の後に「同意していない」「未成年だった」と言われ、示談金を求められた。
  • 男性が現れたり、車のナンバーや身分証を撮られたりして、家族や職場に知らせると言われた。


まず押さえておきたい法律上の位置づけ


対価を払う性交は売春防止法上どう扱われるか

 売春防止法は、対償を受けるか受ける約束で不特定の相手と性交することを「売春」と定め、売春をすることも、その相手方となることも禁じています(売春防止法2条・3条)。ただし、相手方となること自体に罰則はなく、現行法で処罰の対象となっているのは、公衆の目に触れる方法での勧誘や客待ち、あっせんなどです。冒頭で触れたとおり、SNSを通じた「買う側」の勧誘も含めて規制が検討されていますので、今後の動きには注意が必要です。

 客の立場については対価を払って本番に至った場合|売春防止法上、客はどう位置づけられるかで詳しく解説しています。

約束したお金は法律上請求できるのか

 性交を対価とする約束は、公の秩序や善良の風俗に反するものとして無効と考えられています(民法90条)。そのため、相手が「約束した料金を払え」と求めてきても、法律上の支払義務を根拠づけることは難しいと考えられます。

 一方で、無効な約束に基づいて先に支払ったお金は、不法な原因のために給付した者はその返還を請求できないという規定(民法708条)により、取り戻すことが難しくなる場合があります。つまり、払っていないお金は請求されにくく、払ったお金は取り戻しにくいという関係にあります。なお、性交を伴わない内容の約束であれば売春にはあたりませんが、約束の内容や経緯によって評価は分かれます。

相手が18歳未満だった場合は扱いが大きく変わる

 相手が18歳未満だった場合、対償を払って性交や性交類似行為をすると、児童買春として処罰の対象になります(児童買春・児童ポルノ禁止法4条、5年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)。SNSでは年齢を確かめる方法が限られ、自己申告の年齢が事実と違っていることもあります。「未成年だった」と言われたときは、それが事実かどうかで対応が大きく変わるため、一人で判断せず早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

 年齢の認識がどう評価されるかは相手が18歳未満だと知らなかった|年齢の確認と認識の評価で解説しています。

場面ごとの考え方


前払いしたのに相手が来ない・連絡が途絶えた

 交通費や予約金を先に送ったのに相手が来ないというご相談は多く見られます。前払いの目的が性交の対価であれば、前述のとおり返還を求めることが難しい場合があります。ただし、最初から会うつもりがなく、お金を受け取ることだけが目的だったのであれば詐欺にあたる可能性があり、振込先の口座やアカウントの情報が手がかりになります。

 このとき、別のアカウントを作って「警察に通報した」と偽って返金を迫るなど、相手をだましたり脅したりする方法をとると、今度は自分の行為が問題とされるおそれがありますので控えてください。前払いのトラブルについては前払いしたのに相手が来ない|個人間の前払いトラブルもご覧ください。

会った後に約束と違う金額を求められた

 延長やオプションを理由に、DMで決めた金額より多くの支払いを求められることがあります。まず確かめたいのは、事前のやり取りにその条件が含まれていたかどうかです。もともと請求の根拠が弱いうえ、合意のない上乗せであれば、応じる理由はさらに乏しくなります。

 その場でATMに行くよう求められたり、帰らせてもらえなかったりした場合は、恐喝などにあたり得る行為です。身の安全を優先し、警察への連絡も検討してください。ATMで金を下ろさせられる・カードを切らされる|悪質な恐喝からの離脱法もあわせてご覧ください。

会う前に断ったら「キャンセル料」「損害賠償」と言われた

 会う約束をしていたものの直前に取りやめたところ、「冷やかしでも訴えられる」「交通費とキャンセル料を払え」と言われる例もあります。約束の内容が性交の対価である場合、その約束自体が無効と考えられるため、キャンセル料を法的に請求される根拠は乏しいといえます。強い言葉で連絡が続く場合でも、慌てて送金せず、やり取りを保存しておくことが大切です。

「同意していない」「警察に行く」と言われ、示談金を求められた

 行為の後に「同意していなかった」と言われた場合、金銭の問題とは別に、不同意性交等罪などの刑事上の問題として扱われる可能性があります。相手の主張が事実かどうかにかかわらず、その場で示談書や念書に署名したり、言われた金額を払ったりすると、後から争いにくくなることがあります。DMの内容や当日の経緯をできるだけ具体的に書き留め、どう対応するかは弁護士に相談してから決めることをおすすめします。

男性が出てきた・個人情報を握られた

 会った場所に交際相手や知人を名乗る男性が現れる、車のナンバーや身分証を撮影される、といった形で金銭を求められるケースでは、いわゆる美人局の可能性も考えられます。家族や職場への連絡をほのめかされると、早く終わらせたい気持ちから支払ってしまいがちですが、一度応じると請求が繰り返されることもあります。

 こうした場面についてはマッチングアプリで美人局に遭った|「彼氏を名乗る男」への対処で解説しています。

請求が恐喝にあたる場合の考え方

 「払わなければ家族に知らせる」「職場に連絡する」といった言葉で金銭を求める行為は、恐喝罪(刑法249条、10年以下の拘禁刑)にあたる可能性があります。売春の約束が無効である以上、相手に正当な請求権がないことが多く、正当な権利行使として説明できる余地は小さくなります。

 脅されて払ってしまった場合でも、強迫による意思表示として取り消すことで(民法96条1項)、支払ったお金の返還を求められる場合があります。対価として前払いしたお金とは異なり、脅されて払ったお金は返還を求められる余地がある点が大きな違いです。詳しくは払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還をご覧ください。

トラブルになったときにしておきたいこと

 まずは次の点を意識してください。

  • DMやメッセージは削除せず、相手のアカウント名やIDを含めて画面を保存すること。
  • 相手のアカウントが消える前に、プロフィールや投稿も記録しておくこと。
  • 振込先の口座名義や送金の記録を残しておくこと。
  • 求められても追加で支払わず、一人で相手と会わないこと。
  • 家族や職場に知らせると言われても、その場で約束をしないこと。
  • 相手を脅したり、SNSで相手の情報を公開したりしないこと。


 とくに最後の点は見落とされがちです。返金を求める気持ちが強くなるあまり、相手を責める言葉を送ったり、相手の情報を公開したりすると、こちらが脅迫や名誉毀損を問われるおそれがあります。この境界については「金を返せ」と強く迫った|正当な債権回収と恐喝の境界で解説しています。

警察に相談するか迷ったとき

 自分にも後ろめたい事情があると、警察に相談しにくいと感じる方は少なくありません。成人どうしの売春の相手方となったこと自体には現行法上の罰則はなく、恐喝や詐欺の被害に遭っているのであれば、被害者として相談することができます。

 ただし、相手が18歳未満だった可能性がある場合や「同意がなかった」と言われている場合には、相談の場で自分の行為について話を聞かれることもあり得ます。どう伝えるかを整理してから相談したい場合は、先に弁護士へ相談する方法もあります。自分にも非がある場合の警察相談|恐喝被害を申告する際の障害もあわせてご覧ください。

弁護士に依頼した場合にできること

 弁護士が代理人になると、相手とのやり取りは弁護士が引き受けるため、ご本人が直接連絡に応じる必要はなくなります。請求の根拠を一つずつ確かめ、支払う理由のない請求には応じない姿勢を示したうえで、必要に応じて今後接触しないことなどを書面で取り決めます。

 相手の素性が分からない場合でも、残っている記録から確認できることがあります。脅されて払ったお金の返還を求めることや、警察への相談に同行することも、状況に応じて検討します。

よくあるご質問


前払いしたお金は戻ってきますか

 性交の対価として前払いしたお金は、不法原因給付として返還を求めにくい場合があります。ただし、最初からだますつもりだった場合や、脅されて払った場合は事情が異なりますので、経緯を整理したうえでご相談ください。

相手の本名が分からなくても対応できますか

 アカウント名やDMの内容、振込先の口座などから確認できることがあります。アカウントが削除される前に記録を残しておくことが大切です。

家族に知られずに解決できますか

 連絡方法や書面の送付先を工夫することで、ご家族に知られないよう配慮しながら進められる場合があります。ご依頼の際にご希望をお伝えください。

関連する解説記事



 SNSで知り合った個人とのトラブルは、相手の素性や約束の内容がはっきりしないまま、強い言葉で支払いを迫られる形になりがちです。払うかどうかを決める前に、何を根拠に請求されているのかを一度立ち止まって確かめることが、その後の選択肢を広げることにつながります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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