立ちんぼ・SNS個人売春でのトラブル|客が問われ得る罪と対処

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

 風俗店を介さず、街頭やSNSで直接個人とやり取りをして会う——いわゆる「立ちんぼ」や個人売春と呼ばれる形態をめぐるトラブルのご相談が増えています。

 店舗型の風俗であれば、料金も年齢確認も、トラブルが起きたときの窓口も、一応は店が間に入ります。ところが個人間のやり取りには、その緩衝材がありません。何かが起きたとき、すべてが自分と相手の一対一の問題として立ち上がってきます。

 この記事では、性風俗を利用される男性の立場から、買う側が問われ得る罪と、トラブルが起きたときに何をして何をしないかを整理します。

1. 前提:買う側に売春防止法の罰則はない。ただし「リスクが

 まず、多くの方が疑問に思われる点から確認します。

 売春防止法3条は「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」と定めています。条文上、買う側の行為も禁止されています。しかし同法には、売春行為そのもの・買春行為そのものを処罰する規定が置かれていません。

 罰則が向けられているのは、周辺行為です。

条文対象となる行為法定刑
5条売春目的の勧誘・客待ち(いわゆる立ちんぼ)6月以下の拘禁刑又は2万円以下の罰金
6条売春の周旋(仲介)2年以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金
11条情を知って場所を提供する行為3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金(業として行った場合は加重)
12条管理売春10年以下の拘禁刑及び30万円以下の罰金

 ※5条の罰金額は、条文上は「1万円以下」ですが、罰金等臨時措置法により2万円以下として扱われます。 ※2025年6月1日施行の改正刑法により「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されています。

 東京都の迷惑防止条例も同様で、規制されているのは「売春類似行為をするため、公衆の目に触れるような方法で客引きをし、又は客待ちをすること」(同条例7条1項2号)であり、罰則は50万円以下の罰金又は拘留・科料です(同8条4項5号)。これも、勧誘や客待ちをする側に向けられた規定です。

 つまり現行法上、処罰対象の中心は売る側と周辺の第三者にあり、買う側の行為そのものを直接処罰する規定は置かれていません。

 ただし、ここから「客には何のリスクもない」という結論は出てきません。買う側の刑事責任は、売春防止法とは別の法律によって、しかも重い刑罰をもって問われることがあるからです。

2. 買う側が問われ得る4つの罪

(1)相手が18歳未満だった場合|児童買春罪

 対償を供与し、又はその約束をして18歳未満の者と性交等をした場合、児童買春罪が成立します(児童買春・児童ポルノ禁止法4条)。法定刑は5年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。

 押さえておきたいのは次の点です。

  • 相手の同意の有無は成否を左右しません。 相手から誘ってきた、金額の交渉が対等だった、といった事情も同じです。
  • 「知らなかった」で当然に免れるものではありません。 児童買春罪は故意犯であり、成立には「18歳未満であること」の認識が必要です。もっとも、ここでいう認識には未必の故意——18歳未満かもしれないと思いながら、それでもかまわないとして行為に及んだ場合——が含まれます。年齢を確かめないまま進めた経緯そのものが、認識を推認する事情として評価されることがあります。
  • なお、同法9条は「児童の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることができない」と定めていますが、この規定が対象としているのは児童を使用する者であり、条文に掲げられているのも5条・6条・7条2項以下・8条です。4条(児童買春)は含まれていません。この点は解説によって説明が混同されがちなところですが、条文の作りとしては買春者に直接適用されるものではありません。

 別のレイヤーとして、各都道府県の青少年健全育成条例(いわゆる淫行条例)があります。 東京都では2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が定められています(内容は都道府県により異なります)。こちらは、年齢について過失があった場合——知り得たのに確かめなかった場合——にも成立しうると解されており、児童買春罪より成立の幅が広い規定です。

 さらに、その場で撮影をしていれば児童ポルノ製造の問題が、金銭以外の形で関わっていれば児童福祉法の問題が、それぞれ別に生じます。

 年齢に少しでも不確かなところがある場面は、自己判断で対処できる領域を超えています。

(2)相手が16歳未満だった場合|不同意性交等罪

 2023年7月施行の改正刑法により、性交同意年齢は16歳に引き上げられました。16歳未満の者との性交等は、13歳以上16歳未満については行為者が5歳以上年長である場合に、不同意性交等罪(刑法177条)が成立します。法定刑は5年以上の有期拘禁刑で、罰金刑はありません。

 相手が同意する言動をしていたとしても、有効な同意とは扱われません。金銭を支払ったことも同様です。

(3)同意の範囲を超えたと主張された場合|不同意性交等罪・不同意わいせつ罪

 相手が成人であっても、行為の途中で拒まれたのに続けた、当初の合意になかった行為に及んだ、といった場合には不同意性交等罪・不同意わいせつ罪(刑法176条・177条)が問題になります。これらは非親告罪であり、告訴の取下げによって当然に終わるものではありません。

 個人売春の場面で難しいのは、店の記録も第三者もいないため、判断材料が当事者双方の説明とやり取りの履歴しかないという点です。料金を支払ったこと、相手が自分から場所を指定したことは、いずれも同意の証明にはなりません。
(4)場所や態様に由来する罪

  • 屋外や車内など、公然性が認められる場所での行為は公然わいせつ罪(刑法174条)
  • 相手を撮影していれば性的姿態等撮影罪(3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金)
  • 相手の求めに応じず場所に留まった、連れ回したといった事情があれば、逮捕監禁罪や強要罪の問題

 いずれも、売春防止法とは無関係に、単独で成立し得る罪です。

3. 客の側が「被害者」になるトラブル

 ご相談として実際に多いのは、むしろこちらの類型です。

① 事後に「未成年だった」と金銭を要求される
 関係を持った後で本人や同伴者から連絡が入り、「警察に言う」「会社に伝える」と告げたうえで金銭を求められるものです。相手が本当に18歳未満だったのかは、まず切り分けが必要な事実問題です。そのうえで、要求の態様によっては恐喝罪(刑法249条・10年以下の拘禁刑)、脅迫罪(同222条・2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)、強要罪(同223条・3年以下の拘禁刑)が問題になります。

② 美人局(つつもたせ)
 夫や交際相手を名乗る人物が現れ、慰謝料名目で金銭を求める類型です。

③ 前払い後に相手が来ない、金品を持ち去られる
 詐欺や窃盗の被害にあたり得る場面ですが、届け出にくい立場であることを見込んで仕掛けられている面があります。

④ 撮影されていた、身分証や勤務先を把握された
 その後の要求の材料として使われることがあります。

 これらに共通するのは、「自分にも後ろめたいところがある」という事情そのものが人質になっている構造です。そして、一度支払っても要求が終わらないケースが少なくありません。

 相談をためらう方に申し上げておきたいのは、相手が成人であれば、売買春そのものに罰則はなく、被害を相談すること自体に法律上の支障はないということです。弁護士には守秘義務もあります。ただし18歳未満が関わる可能性がある場合は、上記のとおり全く別のレイヤーの問題が重なりますので、自己判断せず、早い段階で弁護士に事実関係を伝えたうえで方針を決めてください。

4. トラブルが起きたときの対処

その場で避けたいこと

  • 要求に応じてその場で支払う、ATMに同行する
  • 内容を確認しないまま念書・示談書にサインする
  • 身分証を渡す、撮影させる
  • 一人で長時間交渉を続ける、暴力的な相手に力で抗う

その場ですべきこと

  • まず安全を確保する。危険を感じたら110番する
  • 誰が、何を根拠に、いくらを、いつまでに求めているのかを確認する
  • やり取りの時刻と内容を記録に残す

後日にかけて

  • 記録を消さない。 メッセージや履歴の削除は、後に罪証隠滅と評価されるおそれがあるだけでなく、自分に有利な事実を裏づける材料まで失わせます。
  • 相手や関係者に直接連絡しない。 感情的なやり取りは、それ自体が新たな証拠になります。
  • 窓口を一本化する。 個別に対応するほど、こちらの情報だけが相手に渡っていきます。
  • 警察から連絡があった場合は、即答せず、被疑者としての呼び出しか参考人としてのものかを確認する。 そのうえで、出頭前に弁護士に相談してください。

5. 法改正の議論が進んでいます

 法務省は2026年3月24日に「売買春に係る規制の在り方検討会」の初会合を開き、同年5月29日の第4回会合で法改正に向けた論点を取りまとめました。論点には、買う側の処罰規定を導入することの是非と、売春として禁止する行為の範囲(現行法の「性交」の解釈)が含まれています。同検討会は同年7月3日の第6回会合まで開催されており、議論は続いています。

 現時点で結論は出ていません。ただ、「買う側には罰則がない」という現行法の前提そのものが検討の対象になっている、という点は押さえておいてよいと思います。掲載時点の最新情報は法務省のページでご確認ください。

6. まとめ

  • 売春防止法は買う側の行為そのものを処罰していません。しかしこれは、買う側に刑事責任が生じないという意味ではありません。
  • 相手の年齢と、同意の有無。この二つが、客側にとって最も重い問題です。いずれも店が代わりに担保してくれるものではなく、個人間のやり取りでは自分の側に判断が委ねられます。
  • 事後の金銭要求は、態様によっては恐喝罪等にあたり得ます。相談しづらい立場であることを見込んで仕掛けられている以上、一人で判断しないことが結果的に被害を小さくします。
  • 支払う前、サインする前、そして警察に出向く前に、一度ご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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