認めた場合の処分の見通し|罰金・略式・不起訴の分かれ目
この記事は、2026年10月時点の法令にもとづいて作成しています。不同意性交等罪は、2023年7月13日に施行された改正刑法によって設けられた罪名です。見通しは個別の事情によって変わりますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
「ホテルを出て駅に向かう途中で店から電話があり、『女の子が本番を強要されたと言っている』と告げられた」「利用から数日たって店長を名乗る人から着信があり、今日中に店に来るよう言われた」。風俗店を利用した方からのご相談は、このように一本の電話から始まることが少なくありません。突然のことに動揺し、電話口で謝ったり、事情を説明しようとしたり、言われた金額をその場で約束したりしてしまう方もいます。
こうした場面については、「その場でお金を払わない」「示談書に署名しない」と説明されることがよくあります。それ自体は誤りではありません。ただ、電話はすでに相手とつながった状態で始まるため、その数分間に何を聞き取り、何を口にしないかという点は、あまり語られていません。最初の電話で交わした言葉は、その後の交渉の前提として長く残ります。
この記事では、店から電話が来たときに、電話の最中と電話を切った後のその日のうちに何をすればよいかを、順を追って整理します。不同意性交等罪の成立要件、示談金の考え方、示談書の条項といった論点は、それぞれを扱う別の記事に委ねます。
まず、電話の言葉を三つに分けて聞く
店からの電話には、性質の違う話がいくつも混ざっています。慌てているとすべてを一つの「責められている話」として受け止めてしまいがちですが、「誰が言っているのか」「何があったと言っているのか」「何を求めているのか」の三つに分けて聞くと、その場で答えなくてよいことが見えてきます。
「女の子が言っている」は、店を通した話
電話をかけてきているのは店の人であり、行為の当事者である女性本人ではありません。店の人が伝えているのは、女性から聞いたとされる内容です。女性本人が実際に何を言っているのか、どこまで問題にしたいと考えているのかは、この段階では分かりません。
また、仮に同意のない行為があったとすれば、被害を受けたのは女性個人です。店がそのまま女性の代わりに交渉する立場になるわけではありません。店が女性に代わって示談交渉をすることの問題については、店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点で整理しています。
「本番」と「強要」は、別々の問い
「本番を強要された」という言葉には、二つの問いが含まれています。一つは、挿入を伴う行為があったかどうか。もう一つは、それが女性の同意のないものだったかどうかです。刑事上の責任で問題になるのは主に後者で、不同意性交等罪(刑法177条)は、同意しない意思を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態での性交等を処罰の対象としています。
これに対し、店の規約違反として金銭を求める話は、主に前者を問題にしています。電話の中で「本番はしたが、同意があった」と説明すると、前者を認めたうえで後者を争う形になり、その一言が金銭請求の根拠として扱われることがあります。どちらの問いについても、電話口で答えを出す必要はありません。
相手が求めているのは何か
電話の目的は、店によって異なります。来店を求める、身分証の提示を求める、金額を示す、警察に行くと告げる、といった形が多く見られます。求めている内容が分かれば、その日のうちに何を準備すればよいかも決まってきます。
電話の中で出てきやすい言葉ごとに、聞き取っておきたいことと、その場で答えなくてよいことをまとめると、次のとおりです。
| 電話の中の言葉 | 聞き取っておきたいこと | その場で答えなくてよいこと |
|---|---|---|
| 「女の子が言っている」 | 電話をかけてきた人の名前と立場、店名、折り返し先 | 女性本人への謝罪や事情の説明 |
| 「本番を強要された」 | いつの利用のことか、何があったと言われているのか | 行為の有無や、同意があったかどうか |
| 「店に来てほしい」「お金を払ってほしい」 | 求められている内容、金額、期限 | 来店の日時、金額、支払方法 |
| 「警察に行く」 | すでに相談したのか、これから行くのか | 警察に行くことへの賛否 |
電話の最中に避けたい三つのこと
電話の数分間で決まってしまうことを減らすために、次の三つは避けておくのが穏当です。
行為の中身を電話で説明しない
電話の相手は、多くの場合、こちらが何を認めるかに注意を向けています。謝罪の言葉や「少しだけ」「入ったかもしれない」といった曖昧な説明は、相手の側で録音されていれば、後になって行為を認めた発言として示されることがあります。
反対に、事実と異なる説明で強く否定することも、後で記録や相手の話と食い違ったときに、説明全体の信用に響きます。電話では行為の中身に立ち入らず、「いまは電話でお答えできない」と伝えるにとどめるのが無理のない対応です。すでに認める発言をしてしまった場合については、本番を認める発言をしてしまった後にできること|自認の撤回と限界をご覧ください。
金額・支払方法・来店の日時を決めない
「今日中に来れば話を収める」「いま振り込めば警察には行かない」と期限を切られることがあります。期限があると、その場で決めなければならないように感じますが、電話で約束した金額や来店の約束は、その後の交渉の出発点になります。即時の支払いを求められた場合の考え方は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で、夜間に呼び出された場合は【風俗トラブル】深夜に店から呼び出された|翌朝まで待ってよいかの判断で扱っています。
なお、脅されて約束したり支払ったりした場合には、強迫による意思表示として取り消しを主張できる場面もあります(民法96条1項)。ただ、これは後から争う道であり、最初から約束しないほうが話を進めやすいことに変わりはありません。
新しい個人情報を伝えない
店が把握しているのは、予約の際に伝えた電話番号や名前程度ということもあります。電話の中で勤務先、自宅の住所、家族の連絡先、身分証の写真などを求められても、その場で伝える必要はありません。予約時に伝えた情報がどう使われるかについては、【風俗トラブル】予約時に伝えた本名・電話番号はどう使われるのかで説明しています。
電話口で伝えてよいこと
何も言わずに電話を切ると、相手がさらに強い言葉で連絡を重ねてくることもあります。行為の中身には触れずに、こちらの状況だけを短く伝える形が考えられます。
- 突然のことなので、いま電話でお答えすることはできません。
- 内容を確認したうえで、改めてこちらから連絡します。
- お名前と、折り返す先の電話番号を教えてください。
弁護士に相談するつもりであることを伝えるかどうかは、状況によります。伝えたことで相手の態度が落ち着くこともあれば、強い口調で引き止められることもあります。後者の場合の受け止め方は、【風俗トラブル】店から「弁護士を入れたら話は終わりだ」と言われたで取り上げています。
また、相手が通話を録音していることもあるため、こちらも通話を録音しておくことが考えられます。自分が当事者である会話を録音すること自体は、一般に違法とはされていません。残し方の注意点は、録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方をご確認ください。
電話を切った後、その日のうちにすること
電話を切った直後は、何から手をつければよいか分からなくなりがちです。その日のうちに済ませておきたいのは、記録を残すことです。
通話の内容を書き出す
記憶は時間とともに薄れ、相手の言葉と自分の受け止め方が混ざっていきます。着信の時刻、相手の名乗り、言われたこと、求められたこと、期限を、できるだけ相手の言葉のまま書き出しておきます。着信履歴の画面を撮影しておけば、時刻の裏付けになります。
支払わなければ家族や勤務先に知らせる、といった言葉があった場合は、特に正確に書き留めておいてください。そのように告げて金銭を求めることは、言い方によっては恐喝罪(刑法249条)にあたり得るため、後の対応を考えるうえで大切な材料になります。
利用当日の記録を集める
予約の画面やメール、店とのやり取り、支払いの記録、ホテルの領収書など、利用当日の流れを示すものを一か所にまとめます。女性とのやり取りがメッセージで残っている場合も、削除せずに保存しておきます。不安から履歴を消してしまうと、後で自分の説明を裏付ける材料も失われます。
自分の記憶を時系列で残す
入室から退室までに何があったか、どのような会話があったかを、思い出せる範囲で時系列に書いておきます。思い出せないところは、思い出せないと書いておけば足ります。このメモは相手に送ったり見せたりするためのものではなく、相談のときに使うためのものです。整理の仕方は、【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料で詳しく紹介しています。
女性本人に直接連絡を取らない
事情を説明したい、謝りたいという気持ちから、女性本人のSNSや個人の連絡先を探して連絡を取ろうとする方もいます。しかし、店から問題を伝えられた後に本人へ直接連絡すると、口裏を合わせようとしている、申告を取り下げさせようとしていると受け取られるおそれがあります。
刑事手続に進んだ場合、被害を申告している人への働きかけは、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由(刑事訴訟法60条1項2号)があるかどうかの判断で考慮され得る事情です。謝罪や示談の話し合いは、代理人を通じて行うほうが、女性本人にとってもこちらにとっても負担の少ない進め方です。女性本人の方から個人的に連絡が来た場合については、【風俗トラブル】キャスト本人から個人のLINEで連絡が来た|店を通さない請求の扱いをご覧ください。
「警察に行く」と言われたかどうかで変わること
電話の中で警察の話が出たかどうかで、急ぐ度合いは変わります。不同意性交等罪は告訴がなくても起訴できる罪であり、女性や店が警察に相談すれば、捜査が始まる可能性はあります。一方で、「警察に行く」という言葉が、実際の相談を伴わずに支払いを促すために使われることもあります。
すでに相談したと言われたのか、これから行くと言われたのかで、その日の動き方は異なります。本当に相談したのかを確かめる方法については【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで、警察に行くと告げられた翌日の過ごし方については【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間で扱っています。
なお、警察から直接電話が来た場合は、店からの電話とは扱いが異なります。その場合は、「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのこともあわせてご確認ください。
電話に出られなかった場合、折り返すかどうか
着信に気づいても出られなかった、あるいは怖くて出なかったという方もいます。折り返すかどうかは、ここまでに述べた聞き取りの項目と、伝える言葉を決めてからでも遅くはありません。折り返す前に決めておくことは【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくことで、連絡に応じないまま時間がたった場合の流れは店からの電話・LINEを無視し続けるとどうなるか|放置の先に起きることの時系列で整理しています。
弁護士に相談すると変わること
店からの電話にどう応じるかは、ご自身で決めることができます。そのうえで、弁護士が間に入ると、次のような点が変わります。
連絡の窓口が弁護士に移る
弁護士が代理人として受任すると、店との連絡は弁護士を通して行うことになり、ご本人が電話に出て答える必要は基本的になくなります。相手が直接の連絡を続ける場合も、弁護士から控えるよう求めることができます。
女性本人の意思を確かめる道ができる
店の説明だけでは、女性本人が何を求めているのかは分かりません。代理人を通じて本人の意思を確かめたうえで、話を進めることができます。店と合意しただけでは女性本人との関係では終わっていない場合もあるため、誰と、何について合意するのかを整理することが、後に問題を残さないための要になります。
刑事手続の見通しを踏まえて動ける
被害申告の有無や、行為についての双方の言い分を踏まえて、示談を目指すのか、事実関係を争うのかといった方針を、刑事手続の見通しとあわせて検討できます。身に覚えがない場合の考え方は、やっていないのに本番・わいせつを疑われた|冤罪事件の戦い方で説明しています。
よくあるご質問
電話で「本番をした」と認めてしまいました。もう遅いのでしょうか
認める発言をしたからといって、それだけで結論が決まるわけではありません。どのような言葉で、何を認めたのかによって、その後の交渉や手続での意味は変わります。発言の内容をできるだけ正確に書き出し、その後は追加の説明をせずに、弁護士にご相談ください。
今日中に店に来るよう言われました。行かないとどうなりますか
店に出向く法的な義務はありません。行かないことで相手が連絡を重ねてくることはありますが、一人で店に出向くと、複数の人がいる中で書面への署名や支払いを求められることがあります。行かないと伝える場合も、「改めて連絡する」と伝えておけば足ります。
同意があったと思っています。そう説明してはいけませんか
同意があったという認識は、ご自身にとって大切な言い分です。ただ、その説明を店との電話で行う必要はありません。店に説明しても女性本人の認識が変わるわけではなく、行為があったことを前提とした請求につながることもあります。同意をどう捉えるかについては、不同意性交等罪とは?風俗の本番トラブルで問題になる点を弁護士が解説をご覧ください。
まとめ
- 店からの電話は、「誰が言っているのか」「何があったと言っているのか」「何を求めているのか」の三つに分けて聞く。
- 「本番を強要された」には行為の有無と同意の有無という二つの問いが含まれ、不同意性交等罪(刑法177条)で問題になるのは主に後者である。
- 電話の最中は、行為の中身の説明、金額や来店の約束、新しい個人情報の提供を避ける。
- 脅されてした約束は、強迫による意思表示として取り消しを主張できる場面がある(民法96条1項)。
- 支払わなければ家族や勤務先に知らせると告げて金銭を求めることは、恐喝罪(刑法249条)にあたり得るため、言葉をそのまま書き留めておく。
- 電話を切った後は、通話の内容、利用当日の記録、自分の記憶をその日のうちに残す。
- 女性本人への直接の連絡は控える。刑事手続では、罪証隠滅のおそれの判断で考慮され得る事情になる(刑事訴訟法60条1項2号)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルに関するご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。店からの電話に出てしまった方も、着信に気づいて折り返すかどうか迷っている方も、通話の内容を書き出したメモをお持ちいただければ、その後の進め方を一緒に整理します。
弁護士には守秘義務があり、ご相談いただいたことが店や女性本人、ご家族や勤務先に伝わることはありません。一人で電話に応じ続ける前に、まずはご相談ください。


