【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

家庭内の暴力や金銭の要求、長く続くひきこもりについて弁護士に相談しようと考えたとき、「弁護士が入ると、子との関係は切れてしまうのではないか」「子の生活はどうなるのか」と心配される親御さんは少なくありません。当事務所が親子の問題に取り組む際には、弁護士が親御さんの代理人を務め、民間の自立支援カウンセラーが子の側の日常を支えるという形で、担い手を分けています。

本記事は2026年9月時点の法令に基づいて記載しています。制度や運用は改正等により変わることがありますので、実際のご判断にあたっては最新の情報をご確認ください。


 弁護士に依頼すると何が変わり、何が変わらないのかについては、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で整理しました。本記事では、なぜ1人の専門家がすべてを担うのではなく役割を分けるのか、その理由を法律上の制約と支援の構造の両面から説明します。

親と子の双方に担い手が必要になる理由

 親子の問題では、親御さんが求めるものと、子の側に必要なものが一致しないことがよくあります。親御さんにとって差し迫っているのは、暴力から身を守ること、渡すお金の線を引き直すこと、場合によっては住まいを分けることです。一方で、子の側には、住む場所、収入の手段、日々のお金の使い方といった、生活そのものを組み立てる作業が残ります。

 親御さんの側だけを守れば、子は住まいも仕事もないまま切り離され、生活が立ち行かなくなるおそれがあります。反対に、子の側の支援だけを進めれば、親御さんは要求や交渉の矢面に立ち続けることになります。どちらか一方だけが取り残される形を避けるには、双方にそれぞれ伴走する人を置く必要がある、というのが当事務所の考え方です。親子が距離を取ることの意味については【親子問題】親子が離れて暮らすことの意味|距離という視点で扱っています。

弁護士が子の側の支援を兼ねられない理由


親の代理人は、子の代理人を兼ねられない

 弁護士は、依頼を受けた人の利益のために動く立場にあります。弁護士法25条や弁護士職務基本規程27条・28条は、利害が対立する当事者の双方から依頼を受けることなどを制限しています。親御さんの代理人として子に金銭の線引きや退去を求める弁護士が、同じ事件で子の相談に乗り、子の利益を代弁することはできません。仕組みの詳細は弁護士に相談を断られることはあるか|利益相反という仕組みをご覧ください。

立場を一つに絞るから伝わることがある

 制度上の制約とは別に、実際の関わり方の問題もあります。「これ以上の金銭は渡せない」「この日までに住まいを分けたい」と伝える役割と、「一緒に部屋を探そう」「今月の生活費をどう組むか考えよう」と寄り添う役割を同じ人が担うと、子の側からはどちらが本心なのか分かりにくくなります。弁護士は親御さんの側に立つことを明確にし、子の生活の相談相手は別に置く。立場を分けることで、それぞれの言葉が相手に届きやすくなると考えています。

カウンセラーが親の代わりに交渉しない理由

 反対に、カウンセラーが親御さんの代理人として子と交渉することもありません。弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事件に関して代理や和解などの法律事務を取り扱うことを業とすることを禁じています。親御さんに代わって子に金銭の返還を求める、退去の条件を取り決めるといった行為は、法律事務に当たり得るため、弁護士が担うべき領域です。

 また、弁護士の側にも、弁護士法27条や弁護士職務基本規程11条から13条により、弁護士でない者との提携、報酬の分配、依頼者の紹介に対する謝礼の授受が制限されています。チームを組むといっても、法律事務は弁護士、生活の支援はカウンセラーという線を守り、互いの領分に踏み込まないことが前提になります。

役割の分け方を表で整理する


項目弁護士自立支援カウンセラー
立つ側親御さんの代理人子の日常生活の伴走者
主な仕事受任通知の送付、金銭の線引きや住まいを分ける話の交渉、必要な法的手続、警察・行政への相談の整理住まい探し、仕事探し、生活保護の受給申請の同行、日々の金銭管理、悩みの相談
子との関わり代理人として向き合う生活の相談相手として関わる
親御さんとの関わり依頼者として方針を相談する必要に応じて状況を報告し、過度な干渉を遮断する
担わないこと子の生活の支援、子の代理法律上の交渉や代理、本人の意思に反する連れ出し


 表には載せていませんが、親御さん自身にも役割があります。弁護士に窓口を移した後は、子からの要求に直接応じないこと、子の生活への口出しを控えてカウンセラーに任せることが大切になります。長く続いた関わり方を変えるのは簡単ではありませんが、当事務所が目指しているのは子の自立だけでなく、親と子がそれぞれ自分の生活を取り戻すことです。弁護士は、親御さんがその方針を一人で抱え込まずに済むよう、判断の相談相手としても関わります。

支払う人と支援を受ける人が違うという構造への備え

 民間の自立支援サービスの多くは、親御さんが契約して費用を支払い、支援を受けるのは子という形をとります。親御さんと子の希望が食い違う場面では、事業者が支払う側の意向に沿って動きやすいという構造上のリスクがあります。この点は【親子問題】契約するのは親、支援を受けるのは子|この構造のリスクで詳しく説明しています。

 役割を分ける形をとっても、この構造がすべて解消されるわけではありません。ただ、親御さんの要望を実現する役割を弁護士が引き受けることで、カウンセラーは子の生活を組み立てることに専念しやすくなります。親御さんの意向を子に押し付ける役回りを、生活の支援者が背負わずに済むということです。

 なお、成人した子を本人の意思に反して家から連れ出したり、施設に入れたりすることは、弁護士にもカウンセラーにもできません。その理由は【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならないで解説しています。民間の施設との契約を検討している場合は、【親子問題】民間の自立支援施設を選ぶ前に確認すべきこと|契約・担い手・解約・本人の意思もあわせてご覧ください。

チームで動くときの情報の扱い

 弁護士には、依頼者について職務上知り得た秘密を守る義務があります(弁護士法23条、弁護士職務基本規程23条)。そのため、弁護士がカウンセラーと情報を共有するのは、依頼者である親御さんの了解があることが前提です。どの範囲の事情を共有するのかは、進め方を決める段階で確認しておくことが大切です。

 一方、カウンセラーが子から聞いた話は、子の生活の支援のために預かっている情報です。親御さんへの報告は必要に応じて行われますが、子が話したことのすべてが親御さんに伝わるとは限りません。子の側が安心して相談できる場を保つことも、自立に向けた支援の一部だからです。相談内容の扱いについては【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方もご参照ください。

役割を分けても約束できないこと

 人が関わることですので、結果をお約束することはできません。子がカウンセラーとの面談に応じない時期が続くこともありますし、住まいや仕事が決まるまでに時間がかかることもあります。

 それでも、親子が物理的な距離を取るだけで、双方に変化が現れる場面は少なくありません。距離が近すぎることと、互いに依存し合う関係が、問題の一因になっている場合があるためです。独立までの進め方は【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順で順を追って説明しています。

よくあるご質問


子がカウンセラーの支援を拒んだ場合はどうなりますか

 カウンセラーによる生活の支援は、子本人が関わることが前提になるため、強制することはできません。その間も、金銭の線引きや連絡の窓口の一本化など、親御さんの側で進められる対応はあります。子の反応を見ながら、支援につなぐ時期を探っていくことになります。

子の側から当事務所に相談することはできますか

 親御さんからご依頼をお受けしている事件について、同じ弁護士が子の側の相談に応じることはできません。子の側の生活に関する相談は、カウンセラーが受け止める形になります。

子が50歳を超えていても対応してもらえますか

 お子さんの年齢は問いません。当事務所では、未成年の子から50歳を超える子まで、幅広い年代の事案に取り組んできました。遠方にお住まいの場合は【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際をご覧ください。

親と子それぞれの自立に向けて

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、5年以上にわたり、北海道から沖縄まで各地の親子の問題に取り組んできました。弁護士が親御さんの側を守り、カウンセラーが子の側の生活を支えるという役割の分け方は、親と子のどちらも取り残さないための形です。取り組みの全体像は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応でご紹介しています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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