【親子問題】子が売春・パパ活に関わっていると分かった|親がとれる対応
この記事は、2026年10月時点の民法(2026年4月1日施行の改正を反映)、刑法、精神保健福祉法、弁護士職務基本規程と、厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック~寄り添うための羅針盤~」(令和7年1月)に基づいて書いています。支援の進め方は事案ごとに異なり、ここで紹介する内容がすべてのご家庭に当てはまるわけではありません。
「カウンセラーの方に来ていただく日を決めたのに、息子は部屋から出てこず、ドア越しに『会う気はない』と言うだけでした」。親御さんからは、このようなご相談をいただくことがあります。一方で、支援を受ける側の子からは、後になって「親が呼んだ人だと思うと、何を話しても親に伝わる気がした」という言葉を聞くこともあります。
ひきこもり支援の解説では、本人がカウンセリングを拒む場合、まず家族が相談を続け、本人のペースを待つことが勧められています。この考え方自体は誤りではありません。ただ、暴力や金銭の要求が続いているご家庭では、待つ間にも親御さんの負担が積み重なっていきます。また、「会わない」という子の意思を法的にどう扱うのか、待つ間に親の側で何を進められるのかについては、あまり触れられていません。
この記事では、当事務所の弁護士と自立支援カウンセラーがチームで関わる中で、子がカウンセラーと会うことを拒んだ場面に絞って、拒否の受け止め方と、その間に進められることを整理します。本人が相談そのものを拒んでいる段階での動き方は【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲で、本人の同意がない連れ出しの問題は【親子問題】本人の同意なく連れ出すことが違法とされる理由|親の依頼では代わりにならないで詳しく扱っています。
カウンセラーとの面会を拒むのは珍しいことではない
子が面会を拒む理由として考えられるもの
親御さんからの依頼で動く支援者は、子から見ると「親の側の人」に映りやすい立場にあります。面会を拒む背景には、次のような事情があることが少なくありません。
- 親に頼まれた人だから、話した内容が親にそのまま伝わると考えている。
- 家から出される、施設に入れられるといった話をされるのではと警戒している。
- 過去の相談や支援の場で、責められた、分かってもらえなかったという経験がある。
- 今の生活が変わることへの不安が大きく、話を聞くこと自体が負担になっている。
- 体調や精神的な不調があり、人と会う余力がない。
厚生労働省の補助事業による調査の概要では、相談機関で心が傷つく経験をした本人や家族がおよそ4割にのぼるとする家族会の調査が紹介され、それが支援の途絶えにつながる例もあるとされています。今回の拒否が、以前の支援でのつらい経験から来ている可能性も視野に入れておく必要があります。
拒否は支援の終わりではなく、進め方を考える材料
厚生労働省が令和7年に示した「ひきこもり支援ハンドブック」は、本人の意思を尊重することを、支援に関わる人が共有すべき考え方の一つに位置づけています。目指す姿についても、周囲がゴールを決めるのではなく、本人が自分の意思で生き方を決めていく「自律」を重視しています。
「会わない」という返事も本人の意思の表れであり、それを無理に覆すのではなく、なぜ会いたくないのかを手がかりに進め方を組み直すことが出発点になります。支援のゴールの考え方は【親子問題】「自立」と「自律」|支援のゴールをどこに置くかでも整理しています。
「会わない」という意思は法的にどう扱われるのか
成人した子に面会を強いる法的な手段はない
親権は、成年に達しない子についてのものです(民法818条1項)。成年年齢は18歳であり(同法4条)、18歳以上の子に対して、親が「カウンセラーと会いなさい」と命じる法的な権限はありません。親が費用を負担していても、支援を受けるかどうかを決めるのは子自身です。契約する人と支援を受ける人が異なるこの構造については、【親子問題】契約するのは親、支援を受けるのは子|この構造のリスクで整理しています。
未成年の子の場合でも、親権を行う者は子の人格を尊重し、年齢や発達の程度に配慮しなければならないとされています(同法821条)。親権があるからといって、本人が強く拒んでいる面会を力ずくで実現してよいことにはなりません。
同意のない連れ出しは選択肢にならない
面会を拒む子を、本人の同意なく自宅から連れ出して施設に入れる、いわゆる「引き出し」型の業者をめぐっては、違法と判断した裁判例が出ています。東京地裁は令和4年3月25日、ひきこもり支援をうたう業者が男性を力ずくで施設へ連れて行き、監視付きの部屋に閉じ込めたことを不法行為と認め、慰謝料など計110万円の支払いを命じました。
本人の意思に反して身体の自由を奪う行為は、逮捕監禁罪(刑法220条)にも関わり得ます。親が依頼したことは、本人の同意の代わりにはなりません。裁判例で示された判断の枠組みは、【親子問題】連れ出し型の支援をめぐる裁判例|「引き出し屋」訴訟で示された判断の枠組みで詳しく解説しています。
弁護士が親の代理人として子と話すことはできる
一方で、カウンセラーとの面会と、弁護士が親の代理人として子に連絡することは別の話です。弁護士は、金銭の要求には応じないことや家の中でのルールなど、親の意向を代わって伝え、子の言い分を聞く窓口になります。これは子に支援を受けさせる行為ではなく、親の側の意思を伝える行為ですので、子がカウンセラーとの面会を拒んでいても進めることができます。
なお、子が自分で弁護士を依頼した場合には、当事務所の弁護士はその弁護士を通じて話を進めることになります(弁護士職務基本規程52条)。カウンセラーの支援には子の同意が欠かせない一方で、親を守るための弁護士の対応は子の同意を待たずに進められる、という違いが、拒否が続く間の動き方を考える軸になります。役割を分ける理由は【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由で説明しています。
面会を拒まれたときのチームでの調整
訪問を一度で終わらせず、間隔を置いて重ねる
当事務所では、弁護士が親御さんの保護を、自立支援カウンセラーが子の日常生活の支援を受け持ち、必要に応じて一緒にご自宅を訪問しています。初めての訪問で子が話に応じるとは限りません。これまで関わったご家庭でも、時間をかけて本人と話し、数回の訪問を経て自宅を出て自活することを決めたケースがあります。返事がない日があっても、それだけで支援を打ち切るのではなく、訪問の間隔や時間帯を見直しながら接点を保つことを考えます。
カウンセラーが何をする人なのかを具体的に伝える
子が会いたがらない理由が「何をされるか分からない」という不安にある場合、カウンセラーの役割を具体的に伝えることで受け止め方が変わることがあります。当事務所と組むカウンセラーは、住まい探しや仕事探し、生活保護の申請のサポート、日々のお金の管理、日常の悩みの相談などを担い、親からの過度な干渉を遮る役割も持っています。
カウンセラーは親の代わりに説得する人ではなく、子の生活を立て直すための相手であることを伝えることが、面会への入り口になります。伝え方も対面にこだわらず、書面やメッセージなど、本人が受け取りやすい形を検討します。
話の入り口を本人の困りごとに置く
「家を出る」「働く」といった話から入ると、子は身構えやすくなります。体調、お金、携帯電話の料金、将来への不安など、本人が実際に困っていることを入り口にしたほうが、話が進む場合があります。また、弁護士が親の代理人として伝える内容と、カウンセラーが本人と話す内容を分けておくことで、カウンセラーが「親の使い」と受け取られにくくなります。実際の関わり方は【親子問題】弁護士とカウンセラーはどう介入するのか|4つの事例で見るサービスの実際でご紹介しています。
拒否が続いている間に親の側で進められること
金銭の要求への対応を弁護士に移す
子がカウンセラーとの面会を拒んでいても、親御さんへのお金の無心には弁護士が窓口となって対応できます。親御さんが直接断るたびに衝突が起きていたご家庭では、窓口を弁護士に移すだけで、やり取りの緊張が和らぐこともあります。要求に応じるかどうかを親御さんがその場で判断しなくてよい状態をつくることが、拒否が続く間の負担を減らすことにつながります。断ることの法的な位置づけは【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで解説しています。
暴力がある場合は安全の確保を優先する
暴力をふるう傾向がある場合には、面会の調整よりも親御さんの安全の確保を先に考えます。当事務所でも、事案によっては警察と連携を取りながら対応を進めています。身の危険を感じたときの動き方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録で整理しています。
親御さん自身の相談を続ける
厚生労働省の通知でも、ひきこもりの相談では本人だけでなく、世帯全体を支援の対象として捉える視点が求められています。子が面会を拒んでいる間も、親御さん自身が支援者とのやり取りを続け、家族会などで同じ立場の方とつながることには意味があります。家族会の役割については【親子問題】家族会・当事者会の役割|弁護士に頼む前にできることをご覧ください。
面会につなげようとして避けたい対応
信頼を損ないやすい対応
面会を早く実現したい気持ちから、かえって子の警戒を強めてしまう対応もあります。
- カウンセラーを知人や業者などと偽って家に招き、会わせようとする。
- 「会わないなら家から出ていけ」など、面会を条件にした言い方をする。
- きょうだいや親族を集め、大人数で面会を迫る。
- 本人の留守中に部屋へ立ち入り、私物を調べる。
- 本人のいない場で決めた方針を、決定事項として一方的に伝える。
こうした対応で一度会えたとしても、その後の信頼関係を築くことが難しくなるおそれがあります。
ルールを伝えることと面会を迫ることを分ける
お金の扱いや家の中でのルールを伝えることは、親として必要な場面があります。ただ、それを「カウンセラーと会うこと」と結びつけると、面会が罰のように受け取られかねないため、ルールの伝達は弁護士が担い、面会はあくまで本人の意思に委ねるという整理が考えられます。
よくあるご質問
子が「弁護士とは話すが、カウンセラーとは会わない」と言っています。どうすればよいですか。
弁護士との話し合いには応じるという場合、まずはその窓口を通じて、子の考えや不安を聞き取ることから始めます。カウンセラーと会いたくない理由が分かれば、時期や会い方を調整する手がかりになります。本人が望んだときに支援を始められるよう、準備を整えておく形になります。
何度断られたら、あきらめたほうがよいのでしょうか。
目安になる回数はありません。仕送りの見直しや生活環境の変化などをきっかけに、子の受け止め方が変わることもあります。回数で区切るよりも、ご家庭の状況や親御さんの負担を踏まえて、チームで進め方を定期的に見直すことが現実的です。
精神的な不調が疑われる場合、医療につなぐことはできますか。
精神科の受診も、原則として本人の同意に基づきます。本人の同意がない入院には精神保健福祉法の厳格な要件があり(医療保護入院は同法33条)、家族の希望だけで決まるものではありません。まずは保健所や精神保健福祉センターで家族として相談することも一つの方法です。判断の考え方は【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断で解説しています。
まとめ
- 子がカウンセラーとの面会を拒むのは珍しいことではなく、警戒や過去の支援での経験など、背景に理由があることが多い。
- 親権は成年に達しない子についてのもので(民法818条1項)、成年年齢は18歳であり(同法4条)、成人した子に面会を強いる法的な手段はない。
- 未成年の子であっても、人格の尊重と年齢・発達の程度への配慮が求められる(同法821条)。
- 同意のない連れ出しを不法行為と認めた裁判例があり、逮捕監禁罪(刑法220条)にも関わり得る。
- 弁護士が親の代理人として子に意向を伝えることは、子の同意がなくても進められる(子が弁護士を依頼した場合は、弁護士職務基本規程52条によりその弁護士を通じる)。
- 訪問の重ね方、カウンセラーの役割の伝え方、話の入り口を見直すことで、面会につながる場合がある。
- 拒否が続く間も、金銭要求への対応、安全の確保、親御さん自身の相談は進められる。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、子の家庭内暴力やひきこもり、お金の無心などに悩む親御さんからのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。北海道から沖縄まで全国のご家庭に関わってきた経験から、遠方の方からのご相談にも対応しています。ご相談から自立までの流れは【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご案内しています。
お子さんがカウンセラーと会うことを拒んでいて次の一手に迷っている方も、支援を始める前の段階で「子が拒むのではないか」と心配されている方も、まずは今のご家庭の状況をお聞かせください。


