未成年の被害者と示談する|親権者の同意と書面の当事者

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

未成年の被害者と示談を進める場面では、話し合いの中身が固まっても、書面を誰の名前で作るのかで手が止まりがちです。本人と直接やり取りを重ねてきた場合はなおさらで、後から親権者に「聞いていない」と言われる展開まで想定しておく必要があります。

 迷いが生じるのは、示談書の「当事者」という言葉が、実際には三つの別々の問いを含んでいるからです。内容を決めるのは誰か(意思決定)、書面に署名するのは誰か(名義)、示談金を受け取るのは誰か(帰属)。この三つは重なることが多い一方で、ずれる場面もあります。

 さらに、2026年4月1日に施行された民法改正によって、親権の共同行使を定める条文の位置と中身が変わりました。それ以前に書かれた解説は改正前の条文を前提にしているものがあり、条番号がかみ合わないことがあります。この記事では、年齢の確認から書面の完成まで、実際に確認していく順序に沿って整理します。

この記事で扱うことと扱わないこと

 本稿が扱うのは、示談書の当事者を確定させるという一点です。誰と交渉し、誰の署名を得れば、その合意が後から覆りにくい形になるのか、という問題に絞ります。

 次の論点は主題が別なので、この記事では立ち入りません。

  • 示談条項そのものの中身(清算条項、宥恕条項、接触禁止条項などの書き方)。
  • 示談金の金額水準や、その算定の考え方。
  • 刑事処分の見通しや、示談が処分判断に与える影響の程度。
  • 加害者側が未成年である場合の手続(少年審判、責任能力、監督者の責任)。
  • 当事者の氏名を伏せた形で合意できるかという匿名化の可否。


 いずれも重要な論点ですが、当事者の確定という前提が固まらないうちに条項や金額の議論に入ると、後で書面を作り直すことになります。順序としては、当事者の確定が先に来ます。

はじめに確認するのは、示談する時点での年齢

 未成年かどうかは、事件が起きた時点ではなく、示談の合意をする時点で判断します。ここを取り違えると、必要のない同意を取りに行ったり、逆に必要な同意を落としたりします。

事件当時の年齢ではなく、合意する時点の年齢

 事件当時17歳だった被害者が、交渉の途中で18歳の誕生日を迎えれば、その後は本人が単独で示談の当事者になります。逆に、誕生日が近いことを見込まずに書面を先行して準備すると、署名の直前に前提が変わることもあります。交渉が数か月に及びそうな場合は、被害者の生年月日を早い段階で確認しておくと、作り直しを避けられます。

成年年齢が18歳になったことの影響

 民法上の成年年齢は、2022年4月1日から18歳です。それ以前に書かれた解説記事は20歳を前提にしていることがあるため、ネット上の情報を参照するときは執筆時期に注意が要ります。18歳と19歳は成年ですから、示談についても本人の意思だけで完結します。親が同席し、実際の交渉を親が主導していたとしても、合意の主体は本人です。

示談する時点の年齢民法上の区分示談書の当事者と確認事項
18歳以上成年本人が単独で当事者になる。親権者の同意は不要で、親が同席していても合意の主体は本人。
18歳未満未成年本人と法定代理人の双方が関わる。同意権と取消権が働くため、誰が親権者かの確認が先に来る。


なぜ未成年の場合に親権者の関与が問題になるのか

 未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意が要る、というのが民法5条1項の原則です。ただし同項にはただし書があり、単に権利を得るだけ、または義務を免れるだけの行為には同意が要りません。示談がこのただし書に当たるかどうかが、はじめの分かれ目になります。

示談は「単に権利を得る行為」に当たりにくい

 示談金を受け取るという側面だけを見れば、被害者は権利を得ているように見えます。しかし通常の示談書には、清算条項、つまり「本件に関し、当事者間に他に債権債務がないことを相互に確認する」という趣旨の定めが入ります。この条項は、将来の請求権を手放すという意味を持ちます。

 さらに、口外禁止条項や接触禁止条項が入れば、被害者側にも義務が生じます。したがって、示談は権利を得るだけの行為とは評価しにくく、法定代理人の関与を要する行為として扱うのが一般的です。

同意を欠いたまま結んだ場合の帰結

 法定代理人の同意を得ずに未成年者がした法律行為は、取り消すことができます(民法5条2項)。取り消されると、その行為ははじめから無効であったものとみなされます(民法121条)。もっとも、未成年者側が返還すべき範囲は現に利益を受けている限度にとどまるとされています(民法121条の2第3項)。

 つまり、同意を欠いた示談は、当面は有効に見えても、後から一方的に覆される余地を抱えたままになります。加害者側としては、支払を済ませた後に請求が再開する事態を想定しておく必要があります。

2026年4月から前提が変わった点

 親権の共同行使については、令和6年法律第33号による改正が2026年4月1日に施行されました。改正前は民法818条3項が「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う」と定めていましたが、現在この内容は民法824条の2に置かれています。

旧818条3項はどこへ行ったか

 現行の818条3項は養子の場合の親権者に関する規定であり、共同行使の根拠条文としては使えません。改正前の条文番号を引用している解説を参照するときは、この点に注意が要ります。824条の2は、共同行使を原則としたうえで、一方のみが親権者であるとき、他方が親権を行うことができないとき、子の利益のため急迫の事情があるときに単独行使を認めています。

論点2026年3月31日まで2026年4月1日から
共同行使の根拠条文818条3項824条の2第1項
離婚後の親権者父母の一方父母双方が親権者となる場合もある
単独行使が認められる場合条文上の整理は限定的一方のみが親権者のとき、他方が行使できないとき、子の利益のため急迫の事情があるとき
日常の行為明文なし監護および教育に関する日常の行為は単独で行使できる(824条の2第2項)
特定の事項明文なし家庭裁判所が親権を行う者を定めることができる(824条の2第3項)


 実務上の影響として大きいのは、離婚後の親権者が父母双方となる場合がある点です。「離婚しているから母だけが親権者である」という前提は、当然には成り立たなくなりました。

施行日より前に離婚していた場合

 ここで誤解が生じやすいのが、施行日より前に離婚した父母の扱いです。前掲のQ&Aは、施行日前に離婚し一方が親権者と定められていた場合、施行によって自動的に父母双方が親権者になるわけではないという整理を示しています。双方を親権者とするには、家庭裁判所に親権者の変更を申し立てる必要があるとされています。

 したがって、2026年4月1日より前に離婚した父母については、従来どおり一方のみが親権者である場合が多いことになります。離婚の時期と、現在の親権者が誰かは、あわせて確認しておくとよい事項です。

示談への同意は「日常の行為」として単独では扱いにくい

 824条の2第2項は、監護および教育に関する日常の行為であれば一方が単独で親権を行使できると定めています。ここに示談が含まれるなら、父母の一方の署名だけで足りることになります。

財産の管理は監護・教育に関する行為とは区別される

 この点について、法務省が公表しているQ&A形式の解説資料は、財産の管理は監護または教育に関する行為ではないという整理を示しています。示談は金銭の請求権の処分を含む財産上の行為ですから、日常の行為として単独で処理するのは難しいと考えられます。

 同じ資料は、824条の2第3項の「特定の事項」には法定代理権の行使のほか、民法5条の同意権や取消権も含まれるとしています。示談への同意をめぐって父母の意見が割れた場合、家庭裁判所に親権を行う者を定めてもらう道があるということです。

誰が親権者かをどう確かめるか

 共同行使が原則である以上、まず「誰が親権者か」を確定しなければ話が進みません。相手方の申告だけで進めると、後から別の親権者の存在が判明することがあります。

戸籍で分かること

 離婚後に親権者が定められた場合、その内容は子の戸籍に記録されます。したがって、被害者本人の戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)を確認すれば、誰が親権者かを読み取れる場面が多くなります。加害者側から直接取得することはできませんので、被害者側に提示を依頼する形になります。

戸籍では分からないこと

 一方で、親権者の情報は住民基本台帳には記録されません。住民票を見ても親権者は分かりません。また、824条の2第3項によって特定の事項について親権を行う者が定められた場合、その内容は戸籍には記載されず、調停調書や審判書に記載されます。この場合は、当該書面の写しを見せてもらう必要があります。

 なお、前掲のQ&Aは、相手方がどのように親権者を判断すべきかについて民法に規定はなく、父母の申告等に基づいて判断することになる、という趣旨を示しています。書面の提示を求めるのは、そのための現実的な手段という位置づけになります。

確認しきれなかった場合の相手方の立場

 同じQ&Aは、親権行使の相手方は親権や監護権に関する情報を知り得る立場にあるとは限らず、法的責任を負うことは多くないという整理も示しています。ただし、事情を知っていた場合の不法行為責任は個別の判断になるとされています。

 実務的には、確認を尽くしたという事実そのものが判断材料になります。どの書面を、いつ、誰から示されたのかを記録に残しておくと、後日の説明がしやすくなります。

署名の名義によって結論が変わる

 父母が共同して親権を行う場合に、実際にどのような名義で署名するかによって、後の扱いが変わります。整理すると次の三つになります。

  1. 父母双方が署名した場合。共同行使として問題が生じにくく、原則としてこの形が望ましいといえます。
  2. 父母の共同名義で作成されたが、実際には一方が他方に無断で署名した場合。民法825条により、他方の意思に反していたとしても効力は妨げられません。ただし、相手方がその事情を知っていた場合は保護されません。
  3. 父母の一方の単独名義で作成された場合。825条による保護は及びません。共同行使を要する場面での無断の代理は無権代理と扱われ、効果が子に帰属しないことがあります。もっとも、権限があると信ずべき正当な理由があれば、民法110条の表見代理が問題となる余地は残ります。


名義をめぐる最高裁の判断

 最高裁は昭和42年9月29日の判決で、共同親権者の名義を用いずに一方が単独でした未成年の子の財産に関する行為は無効である旨を判断しています。単独名義での署名が825条の枠外に置かれることを示したものと理解されています。

 もっとも、前掲のQ&Aは、「共同して行う」とは共同の意思で決定することを意味し、父母双方の署名押印が常に求められるわけではないとも述べています。一方が他方の同意を得て単独の名義で行使する場合も含まれ、その同意は黙示でもよいとされています。契約書に一方の署名押印があれば他方の黙示の同意を推定するという従来の実務を、改正法は変更するものではないという整理です。

 とはいえ、後日の争いを避けるという観点からは、双方の署名を得ておくほうが安定します。単独名義で進める場合は、他方の同意を裏づける資料を残しておくと、判断材料になります。

父母の意見が割れた、一方と連絡がつかない

 共同親権の場面では、片方の親が示談に前向きで、もう片方が態度を示さないという状況が起こります。

黙示の同意と評価できる場面

 前掲のQ&Aは、相当な期間内に反応がない場合には黙示の同意と評価できる場面も多い、という趣旨を示しています。ただし、これは事案ごとの評価であり、期間の長さだけで自動的に結論が出るものではありません。連絡を試みた日時と方法の記録を残しておくことが、後の説明材料になります。

家庭裁判所に定めてもらう方法

 意見が一致しない場合には、824条の2第3項に基づき、家庭裁判所に対して特定の事項について親権を行う者を定めるよう求めることが考えられます。示談への同意権や取消権の行使も、この「特定の事項」に含まれると整理されています。

 なお、同じQ&Aは、私的な文書で親権を行う者を指定することは想定されていないとしています。「父の権限で示談する」といった父母間の覚書を用意しても、それだけで単独行使が正当化されるわけではない点に留意が要ります。裁判を開始する行為については、双方の名義によるか、審判を得ることが求められるという整理も示されています。

親権者がいない場合と、利益相反になる場合


親権者がいないとき

 未成年者に対して親権を行う者がないときには、未成年後見が開始します(民法838条1号)。未成年後見人がいない場合、家庭裁判所が申立てにより選任します(民法840条)。この場合、示談の相手方は未成年後見人になります。選任には一定の期間を要しますので、時効の管理と並行して考える必要があります。

親権者と子の利益が相反するとき

 親権を行う父または母と子の利益が相反する行為については、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければならないとされています(民法826条1項)。同一の親権に服する複数の子の間で利益が相反する場合も同様です(同条2項)。

 示談の場面では、たとえば加害者が親権者の一方である場合や、同じ出来事で親自身も賠償を受ける立場にあり、限られた総額を分け合う関係になる場合が典型です。この規定に反してされた行為は無権代理行為と解されており、子が成年に達した後に追認することもできると判断されています。

示談金は誰のものか

 示談金は被害者本人の財産です。親権者は子の財産を管理し、その財産に関する法律行為について子を代表しますが(民法824条)、管理権は所有権とは別のものです。

受領の名義と振込先

 実務上は、親権者の口座に振り込む形が採られることが多くあります。この場合でも、示談書の文言では「被害者本人に対して支払う」ことと「受領を親権者が行う」ことを書き分けておくと、後の説明が付きやすくなります。領収の書面も、誰が誰の分として受け取ったのかが読み取れる形にしておくのが望ましいといえます。

 なお、民法828条は、子が成年に達したときは親権を行った者が遅滞なく管理の計算をしなければならないと定めています。ただし、子の養育および財産の管理の費用は、その子の財産の収益と相殺したものとみなされます。示談金の使途をめぐって親子間で後日問題が生じることもあり、加害者側としては受領の記録を整えておくことが自衛につながります。

刑事の場面では当事者が一致しない

 示談は民事の合意ですが、刑事事件が並行している場合、告訴の取扱いは別のルールで動きます。

告訴の取消しは示談書とは別の手続

 刑事訴訟法231条1項は、被害者の法定代理人は独立して告訴をすることができると定めています。「独立して」とは本人の意思にかかわらないという意味であり、法定代理人がした告訴を本人が取り消すことはできないと解されています。

 したがって、被害者本人が示談に納得していても、親権者が告訴を維持する場面があり得ます。告訴は公訴の提起があるまで取り消すことができ、取り消した者は再び告訴をすることができません(同法237条1項、2項)。示談書に宥恕の文言を入れることと、告訴を取り消してもらうことは、別々の作業として整理しておく必要があります。

公訴時効の期間が延びる場合

 性犯罪の一部については、被害者が犯罪行為の終了時に18歳未満であった場合、公訴時効の期間に、犯罪行為が終わった時から被害者が18歳に達する日までの期間に相当する期間が加算されます(同法250条4項)。被害者が幼いほど、時間の経過によって刑事手続が終わるという見通しは立ちにくくなります。

 また、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪は告訴がなくても起訴できる非親告罪です。示談が成立しても手続が当然に終わるわけではない点は、あらかじめ共有しておくほうが誤解を生みません。

取り消される可能性はいつまで残るか

 同意を欠いた示談が取り消され得るとして、その不安定な状態がいつまで続くのかを整理します。

追認によって確定する

 取消権を持つのは、未成年者本人、法定代理人、承継人などです(民法120条1項)。追認がされると、以後は取り消すことができなくなります(同法122条)。法定代理人が追認する場合は、取消しの原因となっていた状況が消滅する前、つまり本人が成年に達する前でも追認できます(同法124条2項1号)。

論点条文内容
誰が取り消せるか120条1項未成年者本人、法定代理人、承継人など
追認の効果122条追認により、以後は取り消すことができなくなる
追認できる時期124条2項1号法定代理人が追認するときは、本人が成年に達する前でも可能
法定追認125条履行や履行の請求などがあった場合に追認したものとみなされる場面がある
期間の上限126条追認をすることができる時から5年、行為の時から20年


 実務上は、法定代理人の同意を書面上で明確にし、あわせて追認の趣旨を記載しておくことで、この不安定さを早い段階で解消する扱いが採られます。

被害者側の親の立場から読むと

 ここまでは主に加害者側の視点で整理してきましたが、被害者側の親としても、同じ枠組みが判断材料になります。

  • 子が18歳以上であれば、親には同意権も取消権もない。子が単独で署名した示談は、親が知らなくても有効に成立する。
  • 子が18歳未満であれば、同意しないという選択によって示談の成立を止められる余地がある。
  • 父母双方が親権者である場合、一方だけで進めた合意は後に争われる可能性がある。あらかじめ双方で方針を揃えておくほうが安定する。
  • 示談金は子の財産であり、管理と所有は別である。使途と保管の記録を残しておくことが、後の説明につながる。
  • 告訴の取扱いは示談書とは別に判断できる。宥恕の文言に同意するかどうかと、告訴を取り消すかどうかは、分けて検討できる。


書面に落とし込むまでの確認順序

 ここまでの内容を、実際の作業手順として並べ直すと次のようになります。

  1. 示談の合意をする時点で被害者が何歳かを確認する。生年月日まで押さえ、交渉中に18歳になる可能性を見込む。
  2. 18歳未満の場合、誰が親権者かを確認する。戸籍全部事項証明書の提示を求め、特定の事項について定めがある場合は調停調書や審判書の写しも確認する。
  3. 父母双方が親権者である場合、双方の意向を確認する。連絡を試みた日時と方法は記録に残す。
  4. 利益相反に当たらないかを検討する。当たる場合は特別代理人の選任を経る必要がある。
  5. 署名の名義を決める。双方の署名を基本とし、単独名義とせざるを得ない場合は他方の同意を裏づける資料を残す。
  6. 示談金の支払先と受領名義を書き分ける。領収の書面の形式もあわせて決める。
  7. 刑事手続がある場合、告訴の取扱いを別項目として整理する。宥恕の文言と告訴の取消しを混同しない。
  8. 本人の署名と法定代理人の同意(または追認)の双方が書面上に表れているかを、署名前に読み返す。


よくある質問


被害者本人が「親には知られたくない」と言っています

 本人が18歳以上であれば、その意向に沿って本人だけで示談を進められます。18歳未満の場合は、法定代理人の関与なしに結んだ示談が取り消され得るため、加害者側にとっては支払後に請求が再開する危険が残ります。本人の気持ちは理解できるところですが、当事者の確定という点では別の判断になります。

交渉の途中で被害者が18歳になりました。書面は作り直しですか

 署名の時点で18歳であれば、本人が単独で当事者になります。それまでのやり取りを親権者と行っていた場合でも、書面の当事者は本人とし、本人の署名を得る形が整理としては素直です。過去の交渉経緯を無効にする必要はなく、最終の合意書面の名義を合わせれば足ります。

父母が離婚しているので、同居している親だけで足りますか

 離婚の時期によって結論が変わります。2026年4月1日より前に離婚し、一方が親権者と定められていた場合は、施行によって自動的に双方が親権者になるわけではありません。他方で、施行後は離婚後も父母双方が親権者となっている場合があります。同居の有無と親権の有無は別ですので、戸籍の記載で確認するのが安全です。

親権者の一方が海外にいて連絡がつきません

 親権を行うことができないときに当たるとして単独行使が認められる余地はありますが、その判断は事案によります。連絡を試みた記録を残したうえで、家庭裁判所に特定の事項について親権を行う者を定めるよう求める手続を検討する流れになります。時間を要する手続ですので、時効の管理と並行して考える必要があります。

まとめ

 未成年の被害者との示談は、条項の中身に入る前に、当事者の確定という段階を踏むことで安定します。

  • 判断の基準時は事件当時ではなく、示談の合意をする時点である。18歳以上なら本人が単独の当事者になる。
  • 示談は権利を得るだけの行為とはいえず、18歳未満の場合は法定代理人の関与を要する行為として扱うのが一般的である。
  • 親権の共同行使の根拠は、2026年4月1日以降は民法824条の2である。離婚後も父母双方が親権者となる場合がある。
  • 示談への同意は財産上の行為であり、日常の行為として一方が単独で処理するのは難しいと考えられる。
  • 親権者は戸籍で確認できるが、住民票では分からない。特定の事項についての定めは調停調書や審判書に記載される。
  • 署名の名義によって、825条の保護が及ぶかどうかが変わる。双方の署名を基本とするのが安定する。
  • 示談金は子の財産であり、管理と所有は別である。受領の記録を整えておく。
  • 告訴の取扱いは示談書とは別のルールで動く。宥恕の文言と告訴の取消しは分けて整理する。


 当事者の確定は、書面が後から覆るかどうかを左右する部分です。年齢と親権の確認を先に済ませておくことで、その後の条項や金額の話し合いに集中しやすくなります。判断に迷う点があれば、書面を作る前の段階で弁護士に相談し、確認すべき資料を整理しておくことをおすすめします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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