【親子問題】18歳未満の子が性的搾取の被害に遭っている場合の窓口
本記事は2026年10月時点の法令(2023年7月施行の性的姿態撮影等処罰法を含む)にもとづいて解説しています。個別の事案での判断は、事情によって変わることがあります。
「リビングや廊下に子がカメラを付けた」「出かけて帰ると、いつ出て誰と会ったのかを問い詰められる」「寝室の方を向いているカメラがあり、落ち着いて眠れない」。同居する成人した子が、家の中にカメラを置いて親の様子を見張っているというご相談は、家庭内暴力や金銭の要求と並行して寄せられることがあります。
本記事では、家族の間でもカメラによる見張りが法的な問題になる理由、場所や映るものによって評価がどう変わるか、親が自分でカメラを外すときに注意したい点、話し合いで外してもらえないときに取れる手段を順に整理します。
家族の間でも「見張られない利益」は守られる
法律上、人には私生活をみだりに見られたり記録されたりしない利益(プライバシー)があり、これは家族であっても失われるものではありません。同居していれば互いの姿が目に入るのは当然ですが、それと、カメラで常時撮影し、録画を残し、外出先からスマートフォンで確認できる状態に置くこととは、意味が大きく異なります。
本人の意思に反して私生活を継続的に撮影する行為は、民法709条の不法行為として慰謝料の対象になることがあります。また、侵害が続いている場合には、人格権にもとづいて撮影をやめること、つまりカメラの撤去を求められる場合があります。弁護士ドットコムにも、屋内の玄関に設置したカメラについて、同居人の代理人から「プライバシーの侵害にあたる」として撤去を求められたという相談が見られ、家族や同居人の間でもこの点が争いになることがうかがえます。
ただし、家族間のカメラがどこまで許されないかは、設置の場所、映る範囲、録音の有無、目的、映像の使われ方などを総合して判断されます。「家族だから何をしてもよい」とも、「家の中のカメラはすべて違法」とも言い切れない点に注意が必要です。
場所と映るものによって、評価は変わる
問題の大きさを考えるときは、まずカメラが「どこにあり、何を映しているか」を確かめます。おおまかな目安は次のとおりです。
| 設置場所・映るもの | 考えられる問題 |
|---|---|
| 玄関・廊下など家族が共用する場所 | 防犯目的と説明されることもありますが、親の出入りを常に記録し、それを材料に問い詰めるような使い方であれば、私生活への過度な介入と評価される余地があります |
| 親の寝室・居室 | 私生活の中心であり、撮影によるプライバシー侵害の程度は大きいと考えられます |
| 浴室・脱衣所・トイレ | 下着や裸が映るおそれがある場所で、民事上の問題にとどまらず、刑事上の罪が問われることがあります |
| 音声も記録できる機種 | 姿だけでなく、電話や来客との会話の内容まで記録される点で、侵害の程度が大きくなりやすいといえます |
刑事の罪にあたる場面は限られる
家族を見張るためのカメラであっても、刑事の罪が問われる場面はそれほど広くありません。たとえばストーカー規制法は、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みを目的とする行為を対象としているため、親子間の見張りには通常あてはまりません。
一方で、浴室や脱衣所など人が衣服を着けない場所にカメラを置き、ひそかに性的な姿態を撮影した場合には、性的姿態撮影等処罰法2条の撮影罪(3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金)が問題になります。撮影が未遂に終わった場合も処罰の対象とされています。このほか、場所によっては東京都の迷惑防止条例や軽犯罪法1条23号(のぞき見)にあたる可能性もあります。
また、撮った映像を示して「ばらされたくなければ金を出せ」などと迫る場合は、脅迫罪や恐喝罪の問題になります。録画や録音を材料にした脅しについては、【親子問題】子が家の中で親を録音・撮影し、それを材料に脅してくる|録音の評価と親が避けたい対応で詳しく解説しています。
親が自分でカメラを外してよいか
自宅の所有者や賃貸借の契約者が親である場合、家の使い方を決める立場にあるのは基本的に親です。親の寝室など、親が専ら使っている場所に置かれたカメラについて、電源を抜く、向きを変える、取り外して保管するといった対応をとること自体が、直ちに違法とされることは考えにくいでしょう。
ただし、カメラは子の持ち物です。壊したり捨てたりすると、器物損壊罪(刑法261条)として問題になる余地があり、子との対立も深まりやすくなります。外す場合は、壊さずに箱などに入れて保管し、本人に返せる状態にしておくことをおすすめします。自宅のWi-Fiが親の契約であれば、パスワードを変更して遠隔での閲覧を止めるという方法も考えられます。
何より注意したいのは安全です。暴言や暴力の傾向がある子の場合、親がカメラを外したことをきっかけに激しく反発することがあります。自分で動く前に、外したときに起きそうな反応と、そのときの避難先や連絡先を考えておいてください。力ずくで解決しようとすることの限界については、【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界もご参照ください。
外す前に残しておきたい記録
後で話し合いや法的な手続に進む場合に備えて、外す前に次のような記録を残しておくと役立ちます。
- カメラの設置場所と向きがわかる写真。
- 設置された時期と、設置に気づいた経緯のメモ。
- 録音機能や遠隔閲覧機能の有無がわかる機種名・アプリ名。
- 「見ているぞ」などの子の発言や、映像の内容を示して問い詰めてきたLINEなどのやり取り。
- 壁に穴を開けるなど、設置のために家が傷つけられた箇所の写真。
記録は、子に見つからない場所や、家族以外の信頼できる人に預ける形で保管しておくと安心です。警察に相談した場合は、その日時と担当部署も控えておきましょう。相談記録の意味については、【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続で解説しています。
話し合いで外してもらえないときに取れる手段
親から直接「外してほしい」と伝えても応じてもらえない、あるいは伝えること自体が怖いという場合には、次のような手段が考えられます。
- 弁護士が親の代理人として、撤去と今後の撮影の停止を書面で求める方法があります。
- 撤去や撮影しないことの約束を、合意書として書面に残す方法があります。
- 家庭裁判所の調停(親族関係調整調停)を利用し、第三者を交えて話し合う方法があります。
- 撤去に応じず侵害が続く場合には、撤去を求める仮処分や訴訟、慰謝料の請求を検討することがあります。
- 浴室などでの撮影や、映像を使った脅しがある場合には、警察への相談を並行して進めます。
親子の間で裁判手続まで進めるのは、時間や気持ちの負担が大きいのも事実です。実際には、代理人からの通知をきっかけに話し合いが動くこともあります。弁護士から子へ最初に連絡するときの考え方は【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えること、約束を書面にする際の注意点は【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で解説しています。
カメラの背景にあるものを見る
子が親を見張る理由は家庭によってさまざまです。親の外出や交友を制限したい、金銭の出入りを把握したいといった、親を思いどおりに動かそうとする気持ちの表れであることもあれば、「親が自分に何かするのではないか」という強い不安や不信から設置していることもあります。
前者の場合は、カメラを外しても別の形で行動を縛ろうとすることがあり、暴言や金銭の要求とあわせて対応を考える必要があります。後者の場合で、根拠の乏しい被害的な考えが強く見られるときは、精神保健福祉センターや保健所、医療機関へ相談することも選択肢になります。いずれの場合も、カメラだけを問題にするより、親子の距離の取り方を含めて考えた方が解決につながりやすいといえます。
当事務所では、弁護士が親の代理人として子と向き合い、自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支えるという形で、家庭内の問題に取り組んでいます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。
よくあるご質問
子が「防犯のためだ」と言っている場合はどう考えればよいですか
玄関の外側など、外からの侵入に備える位置であれば、防犯目的として理解できる場合もあります。ただ、親の寝室を映している、親の外出のたびに映像をもとに問い詰めるといった使い方をしているのであれば、防犯という説明だけでは正当化しにくいと考えられます。目的と実際の使われ方が合っているかを見ることが大切です。
撮られた映像をネットに出されたらどうすればよいですか
投稿の画面とURL、投稿日時を記録したうえで、サイト運営者への削除依頼や、内容に応じた法的な手続を検討します。具体的な進め方は【親子問題】子がSNSに家族の悪口や個人情報を書いている|削除の求め方と家族の守り方で解説しています。
カメラのことだけで弁護士に相談してもよいのですか
はい、ご相談いただけます。見張りが続く状態は、それ自体が大きな負担になるうえ、暴言や金銭の要求など別の問題とつながっていることも少なくありません。弁護士に窓口を任せることで何が変わるかは、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で紹介しています。
まとめ
家族であっても、意思に反して私生活を撮影され続けない利益は守られます。カメラの場所や映るもの、使われ方を確かめ、記録を残したうえで、安全に配慮しながら撤去を求めていくことが基本になります。親が一人で子と対峙するのが難しい場合には、第三者を間に入れることも検討してください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


