マナーうんちく話502≪会話の中に季節の話題を積極的に!≫
相変わらず厳しい残暑が続いていますが、空を眺めると、確実に季節が夏から秋へと移り変わっているのがわかります。
四季が明確に分かれている日本には、季節の移り変わりとともに姿を見せる鳥や虫がたくさんいます。
春の鶯や蝶、夏の時鳥や蝉、秋のセキレイや赤とんぼなどなど・・・。
私が住んでいる田園地帯では、秋を代表する虫「赤とんぼ」が悠々と飛んでいます。ちなみに「赤とんぼ」という名がついた種のトンボはいません。
赤とんぼとは、身体の色が赤い、秋を代表するトンボの総称です。
また日本では昔、とんぼのことを「あきづ(秋津)」と呼んでいたようで、これがやがて「あきつ」になり、日本のことを「秋津洲(あきつしま)」と呼んだ時期がありました。
「大和」という言葉と同じような、日本の美称の一つと認識していただいたらいいと思います。
「秋津」の名前の由来は、神武天皇が日本の国を見渡したら、トンボの雄と雌が連なっている形に見えたからだといわれていますが、さすが世界屈指の長い歴史を誇る日本には、神話のロマンが多くありますね。
ところで9月1日は雑節の一つ「二百十日」で、一年で最も台風の到来が多くなる時節です。
苦労して育てた稲が実りの時期を迎えているときの台風ですから、農家にとっては大変気がもめます。
だから「おわら風の盆」のような、風を収める催事が多くとり行われる時期ですが、二百十日を機会に、日頃のライフスタイルを自然や環境の視点で、真剣に考えてみることも大事なことではないでしょうか。
農耕文化で栄え、四季をめでる素晴らしい感性を備えた日本ですが、気が付けば、令和の今、四季の形が大きく崩れてしまった気がします。
以前は3か月毎、規則正しく推移していた季節が、大きく崩れてきたということです。
自然への感謝を持ち前の繊細な感性で表現し、人に対してのみならず、自然に対しても素敵なマナーを発揮してきた、先人の心を再度取り戻したいものです。
そのためにも、季節の変わり目や、季節の言葉や、自然に関心を持つことをお勧めします。
9月の初めは二十四節気では「処暑」で、厳しい暑さが和らぎ、朝夕には心地よい風が吹きわたる季節です。
季節が一生懸命秋になろうとしているわけですが、昔の人は無事に秋がやってくるよう、農耕に祈りを捧げ、季節の移ろいを手助けするとともに、季節に同化する努力をおこたりませんでした。
そして7日は「白露」で、野山の草木には朝の白露が宿り、いよいよ秋の気配が濃厚になってきます。
「白露」とは、露が玉のように白く輝いて見える様子で、秋の趣をひときわ感じることができます。
露を涙にたとえ、儚いものに例えられることも多々ありますが、とても美しい言葉だと思います。
さらにこの頃は、空気が澄んでお月様が大変美しく見える頃ですから、露は「月の雫(しずく)」とも表現されます。
これも美しい言葉ですね。
一方、現代人は「小さい秋」という言葉を生み出しました。
今から約70年前の1955年に、サトウハチロウ作詞の「小さい秋みつけた」という童謡が発表され、「小さい秋」という言葉が定着したわけです。
気温や紅葉やファッションなどが完全に秋らしくなる「本格的な秋」に対して、あまり目立たないけど空の様子や虫の声や日差しの衰退など、ささやかな秋の気配を表現した言葉です。
この言葉も、いかにも日本人らしい、ささやかな季節の移ろいを味わうことができる、美しい言葉だと思います。
地球温暖化の強い影響で、今後季節の移り変わりがどのように推移していくのか想像できませんが、これらの美しい言葉は、四季の国日本に、いつまでも残ってほしい言葉です。
加えて、この時期にふさわしい「一葉落ちて天下の秋を知る」という言葉があります。
一葉は桐の葉です。
私が住んでいる町の町花は「藤の花」ですが、毎年ゴールデンウイーク頃に紫の花を咲かせます・
そして桐の花も、ほぼ同時期に、同じような紫の花を咲かせます。
藤の花はブドウのように下に垂れ下がりますが、桐の花は上を向いて咲きますので容易に区別できます。
藤の花は多くの観光地で美しい花を咲かせるので大変有名ですが、桐の花は知名度が薄すく、人気もそんなに高くはないでしょう。
しかし桐は神聖で、縁起が良い木で、幸せをもたらしてくれる木でもあります。
さらに鳳凰がとまる木とされています。
また昔は女の子が生まれたら桐の木を植えて、その女の子が成長して嫁ぐ際には、桐の木でタンスを作り、花嫁道具として持参したわけです。
「一葉落ちて天下の秋を知る」という意味は、桐の葉は沢山ある広葉樹の中でいち早く紅葉して落葉するので、それを見て秋の到来を把握するという意味です。
大きな桐の葉が落ちるという些細な自然現象ですが、小さな事象から大きな出来事を察知するという意味で使用されます。
9月は猛暑、酷暑の疲れが出やすい時期でもあります。
身体の声にしっかり耳を傾け、体調管理にも心がけてくださいね。
また秋の風は豊穣を運んでくれる風です。
秋の風を迎える準備もお忘れなく。
最後に9月、10月、11月は過ごしやすい気温であり、収穫期でもあるので「スポーツの秋」「芸術の秋」「行楽の秋」「読書の秋」「食欲の秋」という言葉が定着していますが、旧暦の9月は「長月」と呼ばれます。
夜が長くなるので「夜長月」が短縮された名前ですので、「夜長の秋」という表現もお勧めです。
日ごとに長くなる秋の夜を充実してお過ごしください。


