マナーうんちく話2300《令和の今参考にしたい無病息災を祈願する初夏の風物詩》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:日常生活におけるマナー

稲作を中心とした農耕を主な生業とし、四季が明確に分かれ規則正しく推移する日本では、季節の移り変わりや、人生の節目・節目を大切にし、日々の生活に潤いを与えるとともに、様々な行事を執り行ってきました。

間もなく6月も終わり、令和8年の半分が過ぎようとしています。

改めて半年間蓄積した心身の穢れや過ちを悔い改め、祓い清めて、向こう半年間の無病息災を祈りたいものですね。

そこで「穢れ」を払うための、先人の生活の知恵を、いくつか取り上げてみたいと思います。

●夏越の大祓い
年末に行われる「年越しの大祓い」に対し、「夏越の大祓い」といいますが、大きな節目となる大祓の一つで、なじみの行事がいくつかあります。
「大祓い」とは日頃日常生活で犯している罪や穢れを追い払い、清めるための、日本の伝統行事で、ここでは代表的な2種の行事に触れておきます。

〇「茅の輪くぐり」
令和の今でも多くの神社で行われていますが、茅(かや)で作った大きな輪をくぐり、厄払いをする儀式です。
日時や作法は神社等により様々ですが、701年の大宝律令によって正式な宮中行事になった日本の伝統行事です。
ちなみに「茅」はイネ科の植物で「チガヤ」とも呼ばれ、今でも屋根をふくのに用いられています。
生命力が非常に強いので、それが穢れを払う力があると信じられてきたわけです。

〇形代流し(かたしろながし)
人の形を模した紙の形代に、氏名、年齢等を書き、息を吹きかけたり、体の不具合なところを撫でて、その穢れを人形に移し、神社に奉納したり、川に流したりします。
地域により厄払いの作法は異なりますが、大祓いの本来のやり方のようです。

3月3日の上巳の節句(桃の節句)の起源が「流し雛」といわれていますが、それと理屈が同じでしょう。

〇酒で穢れを払う方法
ぬるま湯の風呂に、酒を入れて、湯船にゆっくり浸かって汗を流し、湯船から出たら天然の塩で軽く身体をマッサージします。

日本酒は「お神酒」として使用されるように神様と縁が深いので、邪気を払う力が存在すると考えられていますが、実はワインにも同じ役割があります。

また「清め塩」があるように、塩には昔から邪気を払う力があると信じられていました。
酒と塩によるダブル効果を期待した邪気払いということでしょうか。
肌もつやつやしそうな気がしますね。

●水無月
6月の和風月名は「水無月」ですが、田植えを行うために、田んぼに水を張るという意味があります。

それと同じ名前の初夏を代表する和菓子です。

室町時代には御所では冬の氷を保管しておいて、夏になるとその冷たい氷を口にして暑気払いをしたといわれていますが、庶民にまねができることではありません。

そこで貴族の真似をしたのでしょう。
三角形の「ういろう」に、小豆を散りばめたお菓子を作ったわけです。

昨年は私が主催する講座の料理教室で、水無月を作って、それで「お抹茶カフェ」を行い好評を得ました。
ちなみに小豆には強い邪気払いの効果があります。

今では和菓子屋さんで手軽に手に入ります。
ぜひお試しください。


●扇子
中国で生まれた内輪は風を起こし蠅や蚊を打ち払いますが、扇子は風を起こし邪気を払う小道具として昔から重宝されています。

ちなみに「左うちわ」という言葉がありますが、利き腕でない左手にうちわを持っても、なにも打ち払えません。
従って「何もしないでも暮らせること」を、左うちわと表現するようになったわけです。

一方扇子は先細りすることなく、どんどん広がるので繫栄や幸福を呼び込む「末広がり」の象徴とされており、平安時代から儀式や芸能には不可欠になり、現在に至っています。

結婚式などで留めそでを着た時に、帯に扇子をさしますが、これは「良いご縁が広がりますように」との願いが込められています。

さらに茶道や日本舞踊等で正座して、前に扇子を置いて挨拶をしますが、これは扇子が結界となり「あなた」と「わたし」の境をつけるためです。
あなたが上座になるので、相手に対する敬意の表現です。

●風鈴
日本にはその昔、桜の花びらの散り方でコメの出来具合を占ったといわれていますが、中国でも2000年前に青銅で作った風鈴で吉凶を占ったそうで、それが仏教とともに日本に伝わり、寺院建築の一部になったといわれています。

さらに平安時代から鎌倉時代には、貴族が魔除けとして風鈴を屋敷につるしたともいわれています。

風鈴の音が聞こえる範囲は聖域であり、そこには邪気が来ないと信じられていたようです。

令和の今、扇子を用いて挨拶をするケースは少ないけど、夏の生活に風鈴を暑気払いの小道具として使用する人は多いと思います。

暑いさなか、涼しげな音を奏でて暑さを和らげてくれる風鈴は、昔も今も風情があっていいものですね・

素材もガラス、鉄、陶器など様々ですが、もとは青銅を使用した風鈴のようなものが、お寺の四隅に吊り下げられたのが起源とされています。

目的はズバリ邪気払いです。

その後大衆にも広がり邪気払いとしてより、涼しげな心地よい音を楽しむ小道具になり現在に至ります。

ちなみに今でも風鈴に空気を冷やす力は存在しません。
そこには日本人独特の「心の働き」があるわけで、AI全盛の今、改めてそのような文化の存在を実感したいものですね。


上記の風物詩は、いずれも1000年以上の長い歴史を有していますが、当時は令和の今と大きく異なり医学も科学も未発達です。

衛生状態も栄養状態も極端に悪い上に、物も乏しい状態です。

だから何か「良くないこと」が起きれば、お祓いをして、心も身体も清め、仕切り直しをしたのでしょう。

特に一年の半分が経過した境目において、きちんと節目をつけることは、今の私たちが想像するよりはるかに、大きな意味があったと考えます。

またAI全盛の今でも、折り返し点で、メリハリをつけて清々しい気分になることは、身も心も引き締まる気がします。

本格的な夏を迎えるにあたり、リフレッシュも兼ねて、近くの神社に参拝するのもいいですね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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