マナーうんちく話499≪習慣は第二の天性なり≫
梅の実が黄色く熟す頃になりました。
万葉集の中に登場する多くの花の中で、萩に続いて2番目に多く詠まれている梅は、日本では「春告げ草」と呼ばれ、松や竹と同じように縁起がいい植物の代表格です。
また梅は生食には不向きですが、成熟過程において様々な利用が楽しめます。
例えば「梅酒」ならまだ熟す前の青い梅を、「梅干し」なら熟した梅を、さらに完熟した梅は「ジャム」として加工します。
ちなみに江戸時代になると梅干しは食生活のみならず、薬としても不可欠になったようで、特に「つわりの女性」の特効薬になったとか・・・。
さらに梅酒はのどの痛みにもよく聞くので、私もセミナーや講演後には自家製の梅酒をいただくことが多々あります。
「塩梅(あんばい)」という言葉は、今では程よい加減という意味で使用されることが多いようですが、もとは塩と梅酢の味加減の意味です。
つまり梅の塩漬けがうまくいったことを表現するときに使用されたわけです。
塩は塩味、梅は酸味で、味付けの基本となる塩と梅酢を意味しますが、古来より雅楽の奏法においても塩梅という名があったとか・・・。
この場合は「えんばい」と読むそうですが、「メリハリ」という言葉も邦楽や雅楽が由来の言葉といわれています。
ところで「梅干し」をつけた経験のある方はピンと来られると思いますが、明治から大正時代にかけて、尋常小学校の国語の教科書に「梅干しの歌」が掲載されています。
2月3月花盛り 鶯鳴いた春の日に 楽しい時も夢のうち 5月6月実がなれば 枝からふるい落とされて 近所のまちに持ち出され 何升何合計り売り もとより酸っぱいこの体 塩につかってからくなり 紫蘇に染まって赤くなり 3日3晩の土用干し 思えばつらいことばかり それも世のため人のため しわは寄っても若い気で 小さい君らの仲間入り 運動会にもついていく まして戦のその時は なくてはならぬこの私
※歌は複数存在します。
梅干しの起源は2000年前の中国だといわれていますが、それが日本に伝わり、奈良時代には梅干しの製法が確立され、保存食として今でも貴重な漬物の一つです。
その梅の花が2月から4月にかけて咲いて、6月になると実が成り、梅干しになって、世のため人のためになっている様子が、上手に描写されていると思います。
《情けは人のためにならず》という言葉があります。
「人に情けを掛けると、結局、その人のためにならない」と、意味を勘違いされている人もいますが、本来の意味は「人に親切にすると、巡り巡って、それが良い形で自分に返ってくる。だから誰にでも親切にしなさい」という意味です。
ちなみに「情け」とは「親切」や「思いやり」です。
この言葉の語源は定かではありませんが、おそらく庶民の生活の知恵から生まれた言葉ではないでしょうか。
いかにも日本人らしい発想です。
一方「情け無用」という言葉もあります。
時代劇、勝負事等でよく耳にしますが、「無用」とは「いらない」とか「してはならない」という意味ですから、同情や手加減を一切しないで、厳しく対処する意味で使用されます。
若い時には未来に備えて、キャリアをしっかり築いていただきたいと思いますが、次第に年を重ねてきたら、徐々に「利他の精神」を持っていただきたいものです。
「衣食足りて礼節を知る」という言葉もあります。
そして高齢期になって第一線を離れたら、できる限り「社会のための時間」を持ち合わせていただければと思います。
つまり長年築いてきた様々な経験、スキル、知識、知恵を、世のために役立たせることによって、結局は人生百歳時代を豊かに、有意義に過ごすことができるということです。
人に喜んでいただく、人の役に立つ。
この生き方こそ幸福度を上げる最良の方法だと思うのですが、いかがでしょうか。
つまり「マナー美人」を目指せばいいわけです。
《誰だって、本当にいいことをしたら幸せなんだねえ》 宮沢賢治


