マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
●若さをよみがえらせたい八十八夜の新茶
光がまぶしくなり、緑が一段と深さを増し、気温も上昇してきました。
いよいよ夏!ですね。
田植えへの準備が忙しくなる時期です。
立春から数えて八十八日目になる令和8年5月2日は雑節(マナーうんちく話2280)の一つ「八十八夜」です。
「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る、あれに見えるは茶摘みじゃないか・・・」と歌われたように、茶摘みの目安になる時期ですね。
ちなみにこの歌は、今から100年以上前の明治の終わりころ作られた尋常小学校唱歌です。
茶摘みの光景を歌った歌ですが、機械化されているとはいえ、茶摘みは今でもよく見られる光景で、日本人とお茶の深いかかわりを感じることができます。
日本人と米は切っても切れない関係ですが、「八」+「十」+「八」=「米」になるので、八十八夜の頃に摘んだお茶は大変縁起が良く、不老長寿につながると考えられたわけです。
確かに新茶にはみずみずしさがあり、何となく元気が出そうな気がしますが、科学的にも大変いいようです。
ところで以前にも触れましたが、この時期の言葉に「八十八夜の忘れ霜」があります。
急に気温が下がって遅霜が降り、農作物に被害が出るので、注意喚起を促した言葉です。
つまり「八十八夜」は「何事も油断大敵ですよ」という目的で作られた雑節ということになると思います。
●山滴る「夏」はいつから、いつまで?
先人は花が咲くことを「笑う」と表現し、春の山は「山笑う」といいましたが、鮮やかな緑で覆われた山は「山滴る」といっています。
若葉が茂り、瑞々しさが感じられる絶好の季節ではないでしょうか。
5月生まれは、穏やかで、協調性が高く、人当たりが良いといわれますが、このような環境下で生を受ければ何となく頷けますね・・・。
そして5月5日は二十四節気の一つ「立夏」です。
次第に夏めいて、暦の上では夏が産声をあげる日です。
日本は四季が規則正しく移り変わる国ですが、では、夏は何時から何時まででしょうか?
いろいろなとらえ方があります。
まず気象庁の区分や「感覚的」には6月、7月、8月ですが、最近の異常気象でもっと長く感じるようになりましたね。
また「旧暦」では夏は4月、5月、6月になります。
旧暦の5月は今の6月頃に当たり、6月頃の梅雨と梅雨の間の晴れ間を「五月晴れ」といいます。
そして「二十四節気」では夏は立夏から立秋の前日までです。
さらに「天文学的」なとらえ方もあり、それによると夏は夏至から秋分の前日までです。
●端午の節句と柏餅
端午の「端」は始めという意味で、昔は5月の最初の「午」の日を節句としてお祝いしたのですが、やがて縁起がいい奇数である5と5が重なる「5月5日」になったといわれます。
端午の節句は「柏餅」が行事食として有名ですが、柏の葉は秋には落葉しません。
春に新芽が出て落ちるので、子孫が絶えないと考えられ、縁起が良い食べ物として重宝されるようになったわけです。
今はスーパーや菓子屋さん等で購入することが多くなりましたが、江戸時代には手作りが多く、ご近所同士の女性が集い、おしゃべりをしながら作ったとか。
また江戸では柏餅、大阪は主として粽(ちまき)が主流だったといわれています。
いずれにせよ、新茶とともに家族で味わいたいものですね。
●夏を告げる鳥「時鳥(ほととぎす)」
いち早く春を知らせる縁起がいい鳥は「春告げ鳥」といわれる「鶯」ですが、夏が来たことを知らせてくれる鳥はほととぎす(杜鵑・時鳥・不如帰・霍公鳥)で、道元も「夏はほととぎす」と詠んでいます。
大変多くの異名を持つ鳥として有名で、多くの歌に詠まれています。
その魅力は独特の鳴き声にあるようですが、大食いの鳥でもあるようです。
《あの声で 蜥蜴食らうか 時鳥》(其角)
そして田植えの時期を知らせてくれるので「早苗鳥」や「田長鳥(たおさどり)」とも呼ばれます。また鶯は「時鳥」と表現されることが多いようですが、まさに田植えの時を知らせてくれるのでしょうね。
ところで「時鳥」といえば、三人三様の性格を表す言葉としてよくたとえに出される句がありますね。
「鳴かぬなら殺してしまえ時鳥」(織田信長)
「鳴かぬなら鳴かしてみしょう時鳥」(豊臣秀吉)
「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥」(徳川家康)
鳴き声が美しい時鳥をプレゼントした人がいました。
しかし時鳥は泣きませんでした。
では、〇〇〇ということで、3人の天下人の性格に照らし合わせて作られた俳句なのでしょうか・・・。
今から200年前くらいの話です。
戦国時代の武将の戦略がAI全盛の令和の今、参考になるかどうかはわかりませんが、どの句を詠んだ武将が、この激動の時代を上手に収めてくれるのでしょうか・・・。
●新緑から万緑に変わる小満
5月21日は二十四節気の一つ「小満」。
麦の穂が実って、少し満ちてきたという意味で、それが転じ、すべてのものが成長し、天地に満ち始める頃という意味になりました。
日ごとに気温も増し、新緑が万緑に移り変わる頃で、麦の穂が実り始めます。
昔は米と麦を作る二期作が多く、ちょうどこの時期に麦の穂が出るわけですが、それを確認したら気分が少し満足するので、「小さい満足」が転じて小満になったわけです。
「緑」は、本来は色ではなく、瑞々しさを表現する言葉で、それが転じて新芽の色を示すようになったといわれています。
萌え出たばかりの初々しい新芽は「萌黄色(もえぎいろ)」といいますね。
さらにこの時期に吹いてくる強めの南風は青嵐(せいらん)と呼びます。
麦の穂を揺らしながら吹く風は「麦嵐」といい、その風を受けてそよぐ穂は「麦の波」です。
さらにこの時期には梅雨前のぐずついた天気になることが多いのですが、梅雨前の雨は「走り梅雨」と呼ばれ、田植えの準備をする目安になります。
いずれも四季が豊かで農耕文化で栄えた日本ならではの、大変美しい言葉だと思います。
この時期はまさに、一年で一番命が生き生きとみなぎっている時節です。
そんな感覚を五感で確認できるのが、今の季節の大きな特徴です。
前向きに元気に歩んでください。


