マナーうんちく話485≪上座に勧められたら、どのように対応する?≫
以前、邪気を払い不老長寿をもたらす桃の花に触れましたが、今回は「菜の花」と「もてなし」のお話です。
お茶を嗜しなわれる方はピンと来られたと思いますが、菜の花と「もてなし」がどのように結びつくのかということは、雛祭と桃の花の関係のように一般的には知られていないと思います。
我が家の畑も菜の花が春の訪れを実感させてくれていますが、いつものことながら鮮やかな黄緑色のソフトな葉っぱの菜の花は格別です。
桃は実も花も葉も全て重宝されますが、菜の花も花ばかりではありません。
4月に雛祭を開催するところもあるようですが、桃と菜の花を一緒に活けるとさらに素敵な演出になるでしょう。
邪気を払い多産をもたらしてくれる桃の花に菜の花が加わることで、さらに大きな効果をもたらしてくれます。
ちなみに普段私たちが菜の花と呼んでいるのは「油菜(あぶらな)」です。
つまり油がとれる植物ということです。
現在でも菜種油は台所の必需品ですが、実はこの菜の花を生けるということは、菜種油を「お灯明」として神様にささげ、不幸にして亡くなった幼い子を偲ぶという目的があったといわれています。
昔は栄養状態も衛生状態も悪く、子どもが飢餓や病気で命を落とすことが多く、常に子供の供養が必要だったわけですね・・・。
「灯明」とは神仏に備える火で昔は油が多かったようですが、現在ではローソクが一般的です。
ところでオリンピック、パラリンピック、さらに万博を控え今後日本を訪れる海外からの観光客は増大の一歩をたどるといわれていますが、改めて世界に誇る日本の「もてなし」の文化が脚光を浴びそうですね。
とてもすばらしいことで、この機会に日本の誇る文化を世界に向けて積極的に発信したいものです。
国際化とはつまりそういうことではないでしょうか。
そして日本の「もてなし」と言えば真っ先に思い浮かぶのが千利休ですが、千利休は大変「菜の花」が好きだったといわれています。
外国人が興味を抱く日本を代表する文化の一つに「茶の湯」がありますが、日本人にとっては日常茶飯事という言葉があるように、「茶=もてなし」の文化と言っても過言ないでしょう。
このコラムでもすでに触れましたが、茶は中国から仏教とともにもたらされ、最初は薬として高貴な人に愛用され、やがて嗜好品として普及し、「茶道」といわれる日本独特の芸術文化になったのは千利休の功績によるものでしょう。
その利休は茶道を通じ、何を本当に伝えたかったのでしょうか・・・。
ややこしくて難しい多々ある「作法」もしかりでしょうが、利休が説いたことは、その根底にある「もてなしの心」だとおもいます。
菜の花全盛のこの時期、改めて日本のもてなしについて思いをはせるのもお勧めです。
次回に続きます。