マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
子どもの頃はクリスマスや正月が来るのを指折り数えて待ちましたが、その時は時間の経過は非常にスローだったように思います。
しかし年齢を重ねると、月日のたつのが年々早く感じるようになります。
ついこの間近所の氏神様に初もうでに言った感がありますが、はや師走です。
師走は人生の師である「師僧」でさえ、檀家回りでせわしく走り回るからついた呼び名という説が有力ですが、12月の異名はまだあります。
なじみが薄いかもしれませんが、一年の最後の月という意味で「除月」といいます。
そして一年の最後の日、つまり12月31日は「除日(じょじつ)」、また一年の最後の夕方、つまり12月31日日の夕方は「除夕(じょせき)」、さらに一年の最後の夜が「除夜」になるわけです。
日本には美しい四季がありますが、それにつれ年中行事も非常にたくさんあります。
それを把握するための暦は日常生活で必要不可欠ですが、実は日本人は贈り物と同様、世界でもあまり類を見ない暦好きだといわれています。
稲作を中心として農耕文化を築いてきただけに、農作業の目安はありがたいですね。年末に文房売り場に行けば手帳や暦が所狭し、と並んでいます。
ところで12月といえば忘年会シーズンでこの時期の風物詩ですが、正月を迎える準備をするときでもあります。
ちなみに「正月」という漢字は中国から伝わった言葉だそうですが、除月に対して太陰暦では「一年で最初の月」という意味があります。
そして正月はこのコラムでも何度も触れていますが、正月は神様の里帰りの日です。神様とは先祖の霊、穀霊、及び歳神様の集合霊であり、それらを迎えておもてなしをして、またお見送りする一連の行事が正月で、日本人とは大変なじみの深い年中行事です。
神様をお迎えするにはいろいろ準備が大切ですが、特に注意することがあります。
人を迎えてもてなすのとは少し様子が異なります。
神様をお迎えするに当たり心身を清めなくてはいけません。
年末の大掃除が12月には一斉に行われますが、あれは単に住まいを整理整頓するのではなく、神様を迎えるにあたり部屋を清める行事です。
そして「部屋が清められています」ということで、玄関にお飾りをつけるわけです。
本来正月行事は公家や武家のもので、日本国民すべての健康や無事を祈る行事であり、さらに武家社会では家来に忠誠を誓わせたりしたようです。
「年賀」という言葉も恐らくここからきていると思いますが、それがやがて庶民にも広がり時代の変遷を経て現在に至っています。
師走に入ると気分的にも何かとせわしくなりますが、心と体をさっぱりして、過行く一年をしっかり振り返り、希望のある新しい年を迎えるようにしたいものです。
無理をしないで、健康に留意して、最後の一月を充実させてくださいね。