マナーうんちく話92≪優雅さが自慢!和の作法≫
前回は丸ごと一匹の魚の塩焼きに触れましたが、今回は「煮魚」の美しい食べ方です。
おふくろの味として日本ではすっかりおなじみの、「サバのみそ煮」や「カレイの煮つけ」がおなじみですが、赤くて美しいキンキの煮付けも絶品です。
魚を品良く美しく食べるポイントは、「骨の処理」に有ります。
そのためには、魚の骨の構造を正しく理解することがベターですが、専門家でない限りは無理です。
そこで今回は、日頃から大衆に愛され美味しいけど、食べ方が難しいカレイの煮付けに触れておきます。
カレイは寿命の長い魚ですから、成長が遅く養殖には不向きです。
丸ごと一匹のカレイの煮付けは、目にも美しくてさっぱりした白身の魚ですが、兎に角骨が多いのが特徴です。
しかし、魚の煮物はポイントを掴めば、揚げ物や塩焼きに比較すると、身離なれがよく比較的食べ易いです。
とにかく骨の処理を手際よくして下さい。
そして、煮付けの魚は、実や骨が崩れやすいので、箸使いは丁寧に、優しく行って下さい。
食べ方ですが、先ずは上側の身の頭の方から尾の方に向けて、真ん中に箸で切れ目を入れって下さい。
切れ目を入れた個所から背骨側に箸ですくうと身が綺麗にはがれます。
上の身を食べ終えたら、縁側を箸で切り離します。
次に背骨と頭をはずして、下の身を食べます。
ここで縁側の処理ですが、唐揚げの場合はポリポリ食べられますが、煮付けの場合はそうはまいりません。
だからといって、残すのはもったいないと思います。
加えて、残したら見た目も美しくありません。
皮ごと口に含み、実を吸って下さい。
残りの小骨は口元を隠すようにして口から出して処理します。
懐紙が有れば懐紙で口を多い、懐紙に纏めれば良いでしょう。
あるいは、縁側部分には骨がびっしりと並んでいるので、骨の向きに沿って、そぐうように、少しずつ実を食べる方法もあります。
一通り実を食べ終えたら、頭の部分の身も食べてください。
特に頭の頬肉、頭骸骨の肉は美味です。
煮付け魚の場合は、山椒の葉が添えられている場合が多いですが、食べる前に手のひらに取り、両手でパチンとたたけば香りが一層増してきます。
勿論食べて頂ければ結構です。
ちなみに、山椒は香辛料としては日本古来のもので、薬味として和食には欠かせないものです。
若葉を「木の芽」、4月から5月にかけての黄色い花は「花山椒」、その後にできる実は「青山椒」、そして成熟した実は「実山椒」といわれ、若葉、花、実の全てが利用されます。また、香りと辛みの他にも、医薬品としても古来より重宝されています。
「山椒は小粒でもぴりりと辛い」と言われていますね。
山椒の実は小さくても非常に辛いので、体は小さくても、素晴らしい才能や力量がある魅力的な人のことです。
料理を常に感謝の心で、美味しく、綺麗に食べることが出来る人は自然に生き方も丁寧になり、魅力的になります。