マナーうんちく話90≪懐紙の優雅な使い方≫
止め椀は汁もので、「留め椀」とも言われ、味噌汁や吸い物です。
そして香の物は漬け物です。
ご飯と共に出されますが、これが出たらコース料理の締めくくりですから、この時点でお酒は控えます。
つまり最後の料理で、これで料理は全て終わりで、「後はデザートだけですよ」と言う意味です。
温かいうちに止め椀、ご飯、香の物を交互に頂いたらいいでしょう。
お椀は、その都度両手で持ち運んで下さい。
留め椀の蓋は、両手を使い開けます。
水滴がこぼれないように、器の真ん中で水滴を切って下さい。
ご飯は、手前から奥に食べると上品に食べられます。
少量を口に入れるようにして下さい。
香の者は野菜を糠(ぬか)、味噌、塩、醤油、酢、酒かすなどで漬けたもので「香香(こうこう)」、「新香(しんこう)」「おしんこ」等と呼ばれます。
ちなみに、香は味噌を指さすので、昔は味噌で漬けたものだったようです。
又漬け物は日本以外でも存在し、中国の「ザーサイ」、韓国の「キムチ」、アメリカやイギリスの「ピクルス」は有名です。
日本の食卓に欠かせない「梅干し」も漬け物の一種ですが、梅干しは「漬ける」前に、「干す」と言う手間を加えますので「梅干し」と言われます。
香の物は、ご飯の上に置くことは感心しません。
また、一度かじった漬けモノをご飯の上に置くことも避けて下さいね。
そして最後は「水菓子」です。
水菓子といってもお菓子の種類ではありません。
昔は「菓子=果物」だったために、会席料理で「水菓子」と表示されていたら一般的には果物を意味します。
今はやりの「スイーツ」と言えば、甘いお菓子やケーキや和菓子等の総称ですが、「デザート」と表現すれば食後になります。
「水菓子」は業界の専門用語と認識して頂ければ良いと思います。
また、一般的には旬の果物が出ますが、果物を使用したデザートや和菓子が出る時もあり、食後口をすっきりしてくれます。
ブドウのように種がある場合は、口元を懐紙で覆うようにして食べ、残った種や皮は懐紙で包みこみます。
数種の果物が少量ずつ持ってある場合は、手前の物から食べれば良いでしょう。
ところで、生菓子に「黒文字」と呼ばれる大きめの楊枝が添えられていたら、一口ずつ手前から切って頂きます。
この際、楊枝の先が相手方に向かないようにくれぐれも注意して下さいね。
黒文字はクスノキ科の落葉低木で、匂いが良いので、この枝を削って楊枝を作るわけですが、枝に黒い斑点がありこれを文字に見立てたので「黒文字」と呼ばれるようになりました。
たまに水分の多い生菓子とは別に、水分の少なく固い「干菓子(ひがし)」が出ることがありますが、このような場合は手で食べれば良いでしょう。
これで一応「会席料理」の美しい食べ方は終わりで、次回からは通常よく口にする和食・洋食様々な単品料理に触れて参ります。