マナーうんちく話535≪五風十雨≫
3月1日の山陽新聞によると、「温暖化が進みこの50年間で桜の開花が4、6日早くなった」とありましたが、野菜作りをしていると、桜に限らず、自然界において色々な変化が起きている事を感じるようになりました。
さて、春を告げる梅がそろそろ終わりを告げたら、今度は桃の花の出番です。
雛祭りが「桃の節句」と言われるように、桃は3月3日の雛祭りの頃に旬を迎えますが、旧暦の話ですから、まもなく薄桃色の花を咲かせます。
そして秋には「美味」という言葉が最もよく似合う美味しい実を結びますが、虫や病気に侵されやすく、大変手間暇がかかる果物で、さらに収穫後も痛みが早いのが特徴です。
加えて、水分を多く含み、平安の頃から「水菓子」と呼ばれ、当時から重宝された果物だけあって、値段が高いのもうなずけます。
また、梅や桜と同じように、葉が出る前に花を咲かせますが、その美しさは梅や桜に勝るとも劣りませんね。
しかも、邪気を払うと共に、一本の枝にそって沢山の花を咲かせるので「多産に恵まれる」と言われています。
間もなく結婚式のシーズンですが、披露宴の演出の一つである「ドラジョエサービス」をよくご存知だと思います。
ドラジェ(dragee)はアーモンドの実をチョコレートや砂糖でコーティングしたお菓子で、ヨーロッパでは結婚式、出産、洗礼を受けた時等に配られます。
ちなみに、アーモンドはブドウの房のように多くの実を付けるので子孫繁栄のシンボルとして重宝されています。
古今東西いずこの国でも、子作りを大切にし、縁起を担いできたのですね。
「1年の計を図るには穀物を、10年の計を図るには木を植えよ。そして100年の計を図るには人を育てよ」と言われますが、子どもはいつでも、どこでも未来の宝です。
ところで、日本では、昔は花が咲く事を「笑う」と表現しました。
春になって新緑が萌え出て、花が咲き誇った山々を「山笑う頃」と言いますね。
加えて、「桃李言わざれども 下自ずからけいをなす」(とうりいわざれども したおのずから けいをなす)という諺があります。
桃や李(すもも)の花は大変美しいので、その美しさにひかれて、沢山の人が集まります。だから、桃や李の下には自然に道が出来ると言う意味です。
「徳の在る人は、自分から求めなくても、その徳で持って、多くの人が自然に寄ってくる」と言う意味で使用されます。
そこに、その人がいるだけで、場が明るくなったり、和んだりする素敵な人をホテルでの接客業務で多々お見かけしましたが、人柄が良い人は、周囲の人まで心地良くさせてくれます。
そして、花がほほ笑んでいる様子も、人がほほ笑んでいる様子も、場が明るくなり、心が和み、幸せを感じます。
世界の人がうらやむ日本の季節には、太陽暦による一年を4つに分けた「春・夏・秋・冬」と、24に分類した「二十四節季」の他に、さらに72に細かく分類した「七十二候」がありますが、今頃は二十四節季では「啓蟄(けいちつ)」、七十二候では「桃初笑(ももはじめてさく)」頃です。
季節のそれぞれの出来事を細かく観察し、そのまま名前にしていますので、大変解りやすいのですが、暖かくなって土ごもりしていたトカゲやヘビなどが、地上に顔を出し、桃の花が咲く頃です。
一雨ごとに春になっていく季節を感じながら、今が旬の野菜や果物や魚、そして花や鳥の事、季節に行われる行事等、様々な事柄を楽しむ生活は心が豊かになります。今のようにモノが豊かで便利では無かった時代に、ささやかな日々の移ろいに心を弾ませて生きた事は現代人にも教えられることが多々あります。
3月23日の「年中行事と和食のテーブルマナー」に是非おいで下さい。
新着セミナーイベント欄を参考にして下さい。