基礎から指南!接客・接遇マナー⑪≪大切にしたい自分満足と従業員満足≫
ホテルで33年間接客の仕事に携わって、常に課題になったのが、お客様の立場に立った「良いサービス」です。
では良いサービスとは何でしょう?
色々な立場から様々な答えが出て来ると思いますが、要約すれば「お客様からお金を頂くべき値打のある、時間や空間を提供できる事」ではないでしょうか。
そしてサービスには大きく分類して、「設備面でのサービス」と「人的サービス」があげられます。
設備面でのサービスは、「ハードのサービス」ともいわれ、お客様が快適に過ごすことができる環境です。
例えば、空調設備、内装、音楽(BGM)、家具や調度品、備品、インテリア、味、見た目、雰囲気、清潔さ等ですが、このサービスは往往にして「ある」「ない」とか、体感した結果「良い」「悪い」等でお客様に判断されます。
一方、人的サービスとは、「ソフトのサービス」ともいわれ、お客様を気持ち良くお迎えし、目的に応じたサービスを提供し、感謝を込めてお見送りをする一連の行為・行動で、このサービスは、ずばり「良い」「悪い」等と評価されます。
また、「ハードのサービス」と「ソフトのサービス」ではどちらの重要度が大きいのか?と言えば、要求されるサービスの内容にもよりますので一概には言えないと思います。
しかし、一番理想的なのは、「ハードのサービス」と「ソフトのサービス」が融合する事、つまりそれぞれ全く異質なサービスが互いに補完し合い、お客様に満足を与えることです。
ハードとソフトのサービスが程良く調和することはとても大切ですが、要求される度合いは、社会背景により大きく異なります。
日本がまだ貧しかった時、即ち、敗戦から立ち直る頃は、圧倒的にハードのサービスが大きな影響力を持っていました。
例えば、昭和30年から40年頃は、まだ食べ物にも不自由していた時代ですから、結婚式のような「晴れの日」には、どんなご馳走が食べられるか?どんな引き出物が頂けるか?に関心が集まり、ソフトのサービスはさほど問題になるようなことはなかったようです。
しかし、世界屈指の物が豊かになった今では、「物の豊かさより心の豊かさ」を求める人が多くなり、ハードのサービスから、ソフトのサービスへと移行しているのが現状です。
つまり今や、「ハード面で差別化を図る時代」から、「ソフト面で競争する時代」になったと言うことです。
では、お客様が求める「ソフトのサービス」とは、具体的には何か?と言うことですが、「サービスを担う人が、心がこもっている」「サービスを担う人が、信頼できる」「サービスを担う人が、好感が持てる」等と言う、心配りや心遣い、さらに態度や表情等が挙げられます。
早い話し、お客様が一番望んでいる事は、サービス提供者の「人柄」だと言うことです。
2番目は、ミスが無い、決められた時間内でできる、待つ必要が無い、いつでも可能と言う、自由度や時間や正確さが挙げられます。
これらで思い浮かべるのが「自動販売機」ですね。
例えば、缶コーヒーが欲しかったら、自動販売機を利用すれば、夜でも、間違いなく、簡単に入手できます。電車・バスの切符のしかりで、切符の自動販売機を利用すれば、確実に、簡単に手に入ります。
3番目以降には、清潔感、使いやすさ、空調や設備面、安全な面、快適さ、割安感などが来るようです。
ちなみに、悪いサービスとは、無視する、事務的、冷たい、待たせる、横柄、マニュアル通り、融通が効かない、間違える等です。
機械はある程度割り切れますが、人的サービスは、お客様に満足を与える事が出来る一方で、お客様の気分を害することにもなります。
だから人的サービスは、非常に大切だと言うことです。