マナーうんちく話90≪懐紙の優雅な使い方≫
最近、季節の花に関する写真や記事をよく見かけます。
15日にも山陽新聞には、「アジサイ」と「ハナショウブ」が美しい写真と共に紹介されていました。
このような写真や記事が、多くの人に好感をもたれる土壌が、日本には根付いているのでしょうね。
日々の生活の節目に、四季折々の花を結びつけ、心豊かな生活を謳歌するのも、恐らく日本人だけではないでしょうか?いつまでも大切にしたいものです。
ところで只今、毎日の食事に欠かせない「箸」についてコラムを展開していますが、日本には「箸に始まり箸に終わる」という言葉が存在するくらい、多彩な箸の文化が存在します。
そして「箸」の語源は、「端」と「端」を合わせるとか、「人間の口」と「食べ物」の「橋渡し」だといわれておりますが、他にも「柱」の「はし」と言う説も有ります。そして、その柱は神様の柱を意味するので、ここでの箸は、「神様」と「人間」を結ぶ神聖な道具になります。
加えて、神事の際、神様に食べ物をお供えするのに、手で直接食べ物に触れるのは神様に失礼だから、その時に箸を使用したともいわれております。
このように、日本の箸には神様の存在があるわけです。今まで何度も取り上げた「神人共食箸」である「祝い箸」も、その典型的な例です。
だから日本人は箸に、格式を持たせたり、繊細に加工したり、形や握りの太さを変えたり、素材にこだわったりし、美しい模様を施したりしてきたわけです。
さらに、「箸置き」や「箸箱」の付属品まで考案するとともに、日本人が最も尊重しなければいけない基本的な礼儀・作法を厳しく定めました。
その一環として、他者と食事をする際、他者に不快感を与えないように、箸使いにも様々なタブーを設けました。これが「嫌い箸」です。
箸食文化圏でも、このような礼儀・作法が存在するのは日本だけです。
その数は70を超えると言われておりますが、ここでは、人前では「これだけはやめて頂きたい箸使い」を解説します。
○渡し箸
食事の途中で、箸を器の上に渡し置くのは、箸で蓋をすることになり、「私はこの料理は要りません」の意味になります。キチンと箸置きに置いて下さいね。
ちなみに葬儀で、火葬場での納骨の際、二人が一組になって遺骨を挟み、骨壺に入れるのは、「この世からあの世への橋渡し」という意味もあるようです。
○直箸
採り箸を使用せず自分の箸で、料理を取り分けるのは日本では大変不浄とされ嫌がられます。
○逆さ箸
自分の箸を逆さに持ち替え、料理を採ることも、最も人前では慎んで頂きたいマナーです。お里が知れます。採り箸を頂いて下さい。
○寄せ箸
料理を箸で手前に寄せることです。基本的なマナー違反です。
○迷い箸
ご馳走が沢山有ると、目移りがして、どの料理から食べようか?と、箸を持ったまま料理の上で動かすことです。
○受け箸
箸を持ったまま、お代りをすることです。子供には特に注意して下さい。
○噛み箸
箸の先を噛むことで、はしたないことです。
マナーがよくなかったり、品格に欠けたり、恥ずかしい様を「ハシタナイ」という言葉で表現しますが、はしたない箸使いは日本人として慎みたいものです。
箸使いには、その人の品格が、ありありと現れます。