マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
平松幹夫のマナーうんちく話⑩《神無月と衣替え》
世界的に四季の美しい日本には、1月・2月・3月・・・という数字で月を呼ぶ呼び方のほか、睦月・如月・弥生・・・という日本古来の和風の呼び方が存在します。
「和風月名(わふうげつめい)」と言われており、気候・祭時・農作業などに関連してつけられたとても素敵なネーミングです。
日本ならではの、四季折々を大変上手に表現していると思います。
雅や風雅をこよなく愛した平安の貴族は、梅の臭い、初夏の草花、月の満ち欠け、そして風の音や雪の音、鳥の声等を敏感に感じ、季節ごと、月ごと、さらに日ごとにまで、いろいろな決まり事を作り、其れにマッチした生活を送ることで、移りゆく四季を愛でたのでしょうね。
ところで10月のことを「神無月」と表現しますが、これは全国の神様が島根県の出雲大社に出張され、神様が不在になるからです。但し、島根県だけは神様が全国から集合されるので「神在月」になります。
では、出雲大社に集まられて何をされるのか言いますと、いろいろな会議を行われます。
会議の内容は、天候、農作物、酒のでき具合なども話題に上りますが、主として、「人間たちの運命や結婚」のことです。
誰と誰を結び付けるか等ということを真剣に話し合われるから、出雲大社は「縁結びの神様」として根強く信仰されています。
この「縁結び」は、勿論「男と女の中」を結ぶことですが、それ以外に社会全体が幸福であるように「人と人との絆」を結ぶことでもあります。
昨今の「婚活」ブームで出雲大社にお参りする人がとても増えたそうですが、今の時代全ての人に有りがたい神様ですね。
そして今日から、衣類や小物を季節に合わせて切り替えをする「衣替え」です。
衣替えの習慣も、もとはと言えば貴族社会の行事としてスタートしました。
「和風月名」でも述べましたが、平安貴族はなにかにつけ「もののあわれ」を重んじていたので、当然自分たちの身につける衣服においても、気温・健康維持だけの目的ではなく、同時に四季の移ろいを愛でることも視野に入っていたのでしょうね。
そして貴族から武家に受け継がれ衣替えはますます複雑になっていきました。
今の和服も、季節により複雑に変化しますがその名残です。
少し話がそれますが、結婚式の時に花嫁が着る「白無垢」、これは武家階級の娘さんのしきたりです。
そして衣替えが6月と10月の2回になったのは、明治以降で、官公庁・学校・銀行等制服を着用するところから始まり現在に至っています。
日頃お世話になっている衣類を、カビや虫から守ってあげるのも大切なマナーです。
衣替えの時の正しい処理がとても重要です。
お気に入りの洋服はいつもベストの状態で保つことをお勧めします。
洋服ダンスにはブラシもぜひ置いて下さいね。
マナーには、人に対するマナー、自然や目に見えないものに対するマナー、そしてモノに対するマナーが存在します。
また、衣類と共に、部屋のインテリア等の雰囲気を変えてみるのもいいですね。
心を新たにされるのもお勧めです。
そして多彩な秋を爽やかな気分で謳歌して下さい。