学習時の英語の辞書の引き方

井上博文

井上博文

テーマ:確実に心理系大学院に合格する勉強方法

「英語の辞書の引き方」と表題に書きましたが、基本的に決まった引き方はありません。ただ、私自身もそうでしたが、高校生の時、辞書を引けば引くだけ賢くなると言われましたがあれば嘘です。知らなければ、辞書を引く以外の方法がそうそうないので、引かねばどうにもなりませんが、引けばなんとかなるというものでもないというジレンマを常に抱えている人の方が多いというのが私が見てきた中での現実のところです。

言い方を変えると、英語ができないのは「辞書を引く努力が足りないから」だと考えている人が多いということでもあります。もっとたくさん引けば、英語力は上がると習ってきた人が多いということでもあります。
繰り返しですが、それは嘘です。

英語ができないという人の大半は「単語」を原因に挙げます。確かに単語数は多いにこしたことはありません。私が昔行っていた英語専門学校の先生は、話せるようになるには2万語必要だと言っていました。しかし、現実的に考えて、2万語を入試まで1年以内に覚えるのは厳しいです。また、それほど覚えなくても入試の長文読解は可能です。まして、最近の入試は辞書使用可の学校の方が多くなってきています。その点から見ても大学の先生も単語量を問いたいわけではなさそうです。辞書さえあれば、正確に英語から情報が引き出せるかどうかを問いたいとみても良いと思います。そうすると、辞書の引き方が重要になってきます。「始め!」の合図と同時に辞書をバサバサめくる人は、不合格への第一歩を踏み出したと言って良いでしょう。私はかつてその専門学校の先生に、その行為を指さして「フラッタリング」と言われ、「それをやる奴は賢くないんだよ」(と言われたような気がした)的ニュアンスのことを言いつつ、立ち去られた思い出があります。当時はさっぱり意味がわからなかったのですが、あとから調べてみると、鳥が羽をバサバサやるように辞書をめくる人は、あまり賢くないという意味合いがあるそうです。逆から言えば、あちら側の国の人たちにもそれをする人がいるということですが。
だとすると、適切な辞書の引き方があるということになります。一つ回答としてあげると、私が考えついた範囲ですが、日本人が国語辞典を引くことをイメージして、あまり安易に引かないということです。辞書を引くという言い方からもわかるように辞書といえども、研究成果の一つです。だから通常、論文を引用する際には、無条件で引用せずに、しっかり読み込んで、自分の見解を支えてくれるものを一部引用するでしょう。辞書を引くという行為も理屈は同じなのです。引用をするというイメージを持てば、闇雲に辞書を引くのではなく、欲しい単語をよく吟味して、辞書の文言をしっかり読むと思います。
これは案外、他の言語を勉強するとわかります。私はサンスクリット語やパーリ語という言語を勉強しましたが、辞書は梵和はほとんどなく、梵英とか巴英辞典がほとんどです。英語のように完備された辞書がある方がむしろ特殊なのだということに気付かされます。またそういった辞書を引いていていつも思っていたのが、「この辞書を作った人は、どうやって、意味にたどり着いたのだろう」という疑問です。そういったことを意識しながら深く読むと、辞書を引く意味が徐々にわかってきます。

要するに、文を読む際には、わからないから辞書を引くのではなく、考えに考えたあとにどうしても欲しい単語を引くという考え方に切り替えておくとより効果的に辞書を引くことができるということでもあります。その考え方が定着すると、複数の辞書を引いたり、英英辞典を引こうという発想が生まれたり、辞書以外の情報源を辿ろうとする選択肢も出てきます。語源学にしたがったやり方は、インドヨーロッパ語族ではよくやりますので、そこにも関心が向くと、よりよい学習状態が作れます。



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