学歴は必要なのか?という問いかけではなく「何に必要か」を問うべし

井上博文

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学歴は必要なのか「大学受験すら頑張れないなら、社会に出てもやっていけない」と語る国立大卒女性

という記事を見ました。最近、不登校の子どもが、ろくでもない大人に見世物にされるという痛ましいことが起こっているそうです。子どもが学校に行った方がいいかどうか、など、個別の話ですので、一般化するのは不可能な時代になっています。私も不登校の人とそれなりに関わってきました。いかなることにおいてもとにかく大人の道具にだけはすべきではありません。特に大人の金儲けの道具にして、あたかもそれがその子の意思であるかのようなやり方は、あってはならないことと考えます。万が一子どもの意思というなら、親を含む周囲の大人は、「自分の言動や態度が悪い方向に影響していないか」を振り返った上で、子どもの意思に寄り添って、見続けることくらいしかできないのではないかと思います。
不登校の人に関わって最も思うことは、不登校時の周囲の大人は、私たちの世代の時は、今思うとあまりにも冷たく、差別的でした。今なら新聞にでも載りそうなことを平気で言っている教師などいくらでもいました。しかし、逆に今の時代は、上っ面ではとても優しいことを言います。しかし、その場を去ると、あとは知ったこっちゃないとばかりに、その人の人生に無関心です。少なくとも私が関わった人たちの中で、学校を出てからのフォローについては、在学中であろうとなかろうと、見たことも聞いたこともありません。彼らが本当に困るのは、不登校時の学校を出てからです。大学に入る人も最近は珍しくありません。しかし、そこでも多くの人は苦労します。当然かもしれません。苦労くらいはした方がいいかもしれないと思って、私は「その後」も関わり続けている人が複数います。不登校の人が抱えているのは、学歴だけではありません。就職、家族、社会的言説(ディスコース)など様々あり、上っ面で優しいことを言う学校を出たからとて、生きやすくなるわけではありません。

長くなりましたが、その意味で「学歴は必要なのか」という問いかけは問題があります。「学歴は何に必要なのか」という問題が重要で、そこに果たして議論が尽くされたかどうか、というと、小学校から大学の先生まで、そこの議論を尽くしている姿を、私は知りません。
私は師匠から、学歴はどこの大学までを出たかを示すものではない、と教わりました。子どもの頃から何を学んで、それを何のために活かそうとして、それを活かす工夫をどのようにしてきたかの記録として見たり考えたりする材料にしなさいと習いました。

学歴とは、他人に見せるものと言うよりは、自分を振り返るものだということです。自分で振り返った時に、一切の嘘もごまかしもなく、これで良かったと言える学歴であるならば、それでいいと思いますし、年齢を重ねてからでも、その学歴に付け加えができると思って、私たちの仕事があります。海外でもアカデミックレコードというのは、自分で振り返るためのものだと、昔英語の専門学校に行っている時に、教えてもらったことがあります。

学歴とは、他人に見せたり、見られたり、比べられたりするためのものでしかないという考えしかないと、学歴と人生を切り離してしまう傾向が強くなると思います。今の自分の人生を振り返った時に、この学歴で良かったと思えることが何より大切ですし、足りない点があったり、新しい道を切り拓こうと思うならば、学歴を加えることもできますので、実はかなり柔軟なものでもあります。あまり安直に「学歴がすべて」「学歴など不要」という前提の議論は危険ですし、この極論の対立は、どうも日本特有のものではないかと思います。

繰り返しになりますが、「学歴は何に必要か」という議論が必要です。「何に」を加えるだけで、とても有意義な議論ができること間違いなしです。


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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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