うそ(冗談)のような本当の話

井上博文

井上博文

テーマ:思考方法

うそのような本当の話とは、最近大阪府知事がイソジンの宣伝にしかならない記者会見の際に使った言葉ですが、冷静に見て、これを言うこと自体が「うそのような本当の話」ですし、その責任を一切取らず、何ならきれいさっぱり忘れたかのように無視を決め込むことも「うそのような本当の話」です。普通の公人がこんなことを言うこと自体が冗談のようで、通常の感覚だと「あり得ない」と思ってしまいます。

しかし、昨今この「通常の感覚」がわからなくなってきました。前総理大臣も現総理大臣も、国会の答弁を見ても「冗談」としか思えないようなことを真面目な顔をして言います。あまりにもたくさん言うので、検証する方もついて行けません。世間が覚えきれないくらい、常日頃無茶苦茶言えば、逃げ切れるという作戦も、普通の感覚だと漫画にしか出てこないものだと思うのですが、もしかして、この人たちは真面目に言っているのだろうか?と疑問に思うことも最近はやめました。彼らの心情を理解するのは、少なくとも私にはできません。学術会議に関する答弁も「支離滅裂」なのですが、この支離滅裂状態になると「個別の○○については回答を差し控える」という「拒否」で「事実を明らかにしなくても」「通ってしまう」のも冗談のようです。誰かが、通さないようにしないといけませんが、すべてを「無視」すれば逃げ切れるということを彼らは学習したのでしょう。これが今の「日本の法律の限界」と理解している人も少なくないと思いますが、法律を作る人間が、法律を作る際に想定していないことをする、というのも漫画にしか出てこない話です。少なくとも、今まで経験してきた社会では、「これで通るなら警察はいらない」と言われたでしょう。「回答を差し控える」が流行語大賞を取る日も近いでしょう。犯罪の取り調べや、刑事訴訟で次々と「回答を差し控える」が出てくることでしょう。冗談が高じて、違法行為へのハードルがないに等しいくらいになり、形成不利と見るや論点をずらして、「そもそも」と称して違うことを言い出す始末。これを政治の中枢がしているというのは、漫画だけだと思っていましたが、現実のこととなると笑えません。

こんな「うそのような本当の話」は日本だけかと思いきや、アメリカも同じようなものだということが、この選挙戦を見ていると思わざるを得ません。現大統領は、自分が勝てばフェア、自分が不利ならアンフェアで不正。日本ではこういうのを「ジャイアン」とでも言うのでしょうか。もちろん「ドラえもん」のキャラクターです。自分が負けそうになると不正と騒ぎ、自分に有利になるであろう裁判官を指名した上で裁判を起こすのだとか。不利になると、「不正だから開票をやめろ」とも言い出しています。相手だけが不正をして、自分は不正をしていないと、前回の選挙でも様々な不正が取り沙汰された人間が言うことに滑稽さも超え、冗談をも超えています。「どの口が?」と言うのも馬鹿馬鹿しくなります。ジャイアンでもここまではしません。仮に不正があるとしても、「お互い様」でしょうから、むしろ「フェア」と見るのが妥当でしょう。どちらが勝っても、負けた方は訴えるでしょうし。この国の前総理大臣も、自分が逮捕されるような不安があると、検察のトップに自分に有利な人間を据えようとしました。失敗はしましたが、発想が同じです。ただ、もう慣れましたので、衝撃も受けません。この人たちなら当然なのだろうな、と思います。これを学習性無力感と言うのでしょうか。

非エリート主義とか、反知性主義とか、いろいろ言われますが、幼稚化というのも、幼児に失礼でおこがましく、「漫画化」というもの漫画家に失礼です。「冗談化」とでも言うべきか、真面目に取り合うのも馬鹿馬鹿しくなります。しかし、このコラムでも言いましたが、学問をする人間が無関心になってしまうと、「気づけば巻き込まれ、気づけば取り返しがつかないことになっている」のです。馬鹿馬鹿しくて嫌になりますが、多少なりとも学問の中で生きる者は、この「うそ(冗談)のような本当の話」に向き合わねばならないのだと思います。


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株式会社コムニタス

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