近年最大級の怒り
雑感です。科学的根拠はあまりない話です。
「他人を憎むように生まれついた人間などいない。人は憎むことを学ぶのだ」とは、アメリカのオバマ前大統領の言葉(南アフリカの故ネルソン・マンデラ元大統領の発言の引用)です。
こちら
特に私には、「人は憎むことを学ぶ」という箇所に強い共感を覚えます。私は男兄弟というのもあって、どこにでもあると思いますが、子どもの頃は兄と、よく兄弟喧嘩しました。彼の言うことなすこと、とにかく腹がたちます(もちろん、わたしなりに理由があります)。そうすると、手が出る、足が出るの大騒ぎで、中学くらいになると、母親に「家が壊れるから外行け!」と怒鳴られ、「表出ろ!」とばかりに外に行くなんてことも数知れず。しかし、「憎む」という感情は、全く別物で、お互い特に憎むということはありませんでした(私だけかもしれませんが)。もしかすると、それは兄弟だったからかもしれません。兄弟は、同じ家で同じものを食べ(当時は、兄との食事戦争でもありました。母親は毎日一升の米を炊いていました)、同じような服を着て、高校までは同じ学校に行きました。だからなのかもしれませんが、喧嘩はしても、憎しみ合うということはなかったと思います。憎しみというのは、本当に不思議な感情で、多くの人は理由があると考えているかもしれませんが、あくまでイラショナルビリーフを発生源とする不健康でネガティブな感情です。これは仏教で言えば煩悩ですから、限りがありません。世の中、たいていのものには限りがありますが、煩悩は不思議なことに限りがないのです。次から次とわいて出てきます。ですから周囲にも影響があります。煩悩の湖に生まれ育ってしまうと、憎しみは周囲に連鎖します。憎しみは、それを限定的に生み出す思考から生まれます。しかも世代も性別も国籍も乗り越えてしまいます。イスラエルとパレスチナはその典型です。今の若者が生まれるよりもはるかに前から、中東戦争は始まりました。何の関係もなければ、当時の背景など知らない若者が、あるとき爆弾を抱えて憎き相手と自分自身を自爆で殺しに行くのです。その思考は煩悩の湖ともの言える空気で、具体的に誰が作っているとも言えない空気(雰囲気)です。だから、肌の色、国籍など理由にもならない非科学的なことであっても、「感情では割り切れない」という思考のもとに他者を憎みます。良くないとわかっていても、「割り切れない」「やめるつもりはない」といった哲学者となって、自分を説得するという世にも不思議な思考が頭を席巻するのです。
話を元に戻しますが、この意味で、生まれつき憎しみを持っている人はおらず、人は他人を憎むように教育されるのです。もちろん、そもそも、憎しみを持たないようにする教育は、教育ではなく洗脳です。本来教育は、憎しみを持ったときに、何故その感情を持つのか、持ったときにその感情に任せて行動をとっていないか、とってしまった場合、それは、どうしてもそうせざるを得なかったのか、本当に回避できなかったのか、こういった問いを自ら発生させて、自省と自制をして、自分にブレーキをかけることを学ぶことです。オバマ氏は
"People must learn to hate, and if they can learn to hate, they can be taught to love..."
と、憎しみを学べるなら、愛だって教えを受けられることを述べておられます。これは紛れもない事実です。すなわち教える人次第ということになります。私たち、教育に携わる人間の責任は重いと思います。これから、憎しみを教えるのも、ブレーキをかけることを教えるのも教育者次第ということになります。
自分が罵声を浴びせられると、オバマ氏は、そういう人も愛すると言ったそうです。翻って、日本の総理大臣は、こんな人たちに負けないと言ったそうです。国を代表する権力者は、自分の好き嫌いにかかわらず、どんな立場の人であっても飲み込む器が必要ですが、この差はあまりにも大きいと思います。支持率が3割なら、7割の人に向けて、「こんな人に負けない」と叫んでも、多分負けます。何が本当の現実主義かを考える必要があります。浄土宗の開祖法然上人は、9歳のとき、父親を夜討で殺されます。しかし、父親は仇討ちを禁じたそうです。『四十八巻伝』によれば、「おまえは武士の子ゆえ、敵を討とうと思うであろうが、そうすれば今度は彼の子がお前を敵と狙うであろう。怨みは新たな怨みを呼ぶだけだ。それよりも出家して、父の菩提を弔い、誰もが平等に救われる道を求めてほしい」と、遺言されたとのことです。これが後に大宗教者を生むきっかけになりました。史実かどうかはともかく、この時代にして憎しみの連鎖に歴史家は気づいていたことは間違いありません。歴史に学べという人はたくさんいます。是非、学び、伝えて行きたいと思います。
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