制度の問題を問うナンセンス

井上博文

井上博文

テーマ:雑感

大学の非常勤講師の問題記事を
見つけました。最近このような記事と同様、大学の非常勤講師の
窮状を訴える記事はたくさんあるようです。
大学の非常勤講師は確かに社会的弱者であることは
間違いありません。私の知り合いでも悲惨な状態の人も
たくさんいます。しかし、特にそれについて文句を言っている人も
ほとんどいません。私も含めて、それは自分で選んだ道であって、
断じて制度の問題でも、大学や大学の専任教員のせいでもありません。

確かに改正労働契約法のおかげで多大な迷惑を被っている
大学非常勤講師はたくさんいるでしょう。国が何らかの悪意でも
あったんじゃないかと訝る法律ですが、百歩以上譲れば、
良かれと思って作った可能性もゼロではなさそうな気も
しなくはありません。
しかし、これは制度の問題でも法律の問題でもなく
個人の問題です。大学の非常勤講師全員を常勤にすれば
どんな大学でも倒産します。制度が悪いと叫んでみても
ただの寝言でしょう。
どんなに不安や不満があっても結果がすべてです。
どんな制度であっても、結果を出す人は出しますし、
出せない人は出せません。
「嫌ならやめれば良い」
この世界ではこれが決め台詞です。
海外の制度と比較することはナンセンスと言わざるを得ません。
今の大学専任教員も、(大半は)多大な苦労をし、多くの競争を
勝ち抜いて、今の地位を得たと思います。その陰には
人知れず消えていった、「力のある(はずの)」研究者の
夢のあとを踏み越えて(踏みにじって)今の場に立っているはずです。
でも、一歩間違えれば自分がそういう立場にあったわけですから
消えていった人を思いやる必要もありません。
プロ野球で芽が出ず、解雇されていく人たちが毎年大量にいるから
その質が保たれるのと同様、消えていった研究者が多ければ
多いほど、質が保たれる面もあるのです。
消えていく人たちからすれば理不尽だらけの制度であることは
間違いありませんが、それは当たり前のことだと思います。
プロ野球で解雇された人を思いやる制度などありませんし、
解雇後の人生など自分で何とかする以外ないはずです。
制度に問題はあれども、制度のせいではなく、その制度の中にいる
個人の問題であるということは間違いありません。

また、例えば生活保護の不正受給の問題でも同様に
「制度が悪い」という人がいます。だったら、誰も不正が
できないような制度を提案して欲しいものですが、どんな
制度でも網の目をくぐらない人がいるとは思えません。
ベーシックインカムにせよ、現金支給をやめて、
プリペイドカード支給にせよ、結局問題が発生します。
問題があるから、現時点で他の制度が採用されていない
わけですから、それは明らかです。
問題があるのは個人です。それ以外にあり得ません。
問題のある制度であっても、個人がその精神を理解し、
正しく制度を利用しようとする意思があるならば、
今のような問題は起こりえません。問題が起こるのは
制度の不備を何とかして探し出して、あるいは
職員の杜撰さに賭けて不正をする個人が存在するからです。

しかし、こんな個人を全部取り締まるのは不可能ですし、
それによって、本来生活保護を受給しなければならない人が
受け取れない可能性が生じますので、少々不正者がいても
「ある程度」黙認せざるを得ないはずです。
上っ面だけで、「制度を変えれば問題は解決する」という
寝言ほどナンセンスなものはありません。制度を作るのも
守るのも、破るのも、壊すのも人次第なのです。

結局、全ての人が納得できる制度などありはしないのです。
そのとき、その瞬間、一番良い制度を作って、不備が出てきたら、
少しずつ変えていくのが通常の方法ですし、その網の目を
破る人間も、漏れる人間も必ずいるのです。注目すべきは
制度ではなく、破る人間と漏れる人間の方なのです。
結果を出した人が、出せない人を思いやることができれば、
その時できた制度は良い制度になるでしょう。




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井上博文
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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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