常に進化するAIの世界―競争はアプリからボットへ―Ⅰ
[変だとは思っていたが・・・・]
私が、父の事務所で見た不思議な光景。
その光景というのは、総務の女性が、男性担当者が仕上げた決算書の数字の横に、赤ペンを使って手書きでなにやら数字を書き込んでいるというものでした。
それは、今年の決算書の数字の横に去年の数字を書き込む、というものです。
こうすることで、去年の決算の数字と比較して分かりやすく見ることができるから、という理由によるものだったのです。
そこで私は、直ちに職員に向かって
「これからは、決算書は2期比較のものを打ち出すように。」
と指示しました。
そうなのです!
私の事務所は、そのずっと以前からコンピュータ会計を導入しており、2期比較の決算書などとっくに対応することができたのです。
すでに年配だった父が、そのことに気が付かなかったのは仕方がないにしても、若い職員たちがそのことを知らないわけがありません。
ここではいくつかのことが考えられます。
①『赤書き』は以前から、そうするように、と言われていたのでただ続けていた。
②2期比較決算書の存在は知っていたが、『赤書き』は別のことと解釈し黙っていた。
③2期比較決算書があるので『赤書き』が変だとは思っていたが、余計なことと思い黙っていた。
④2期比較決算書と『赤書き』がそんな関係にあるとは思いつきもしなかった。
⑤そもそもそんなことは考えたこともなかった。
ここで大切なことは、仕事をどう考えるか、ということです。
私は、決算で忙しくなる月末に、総務が
「『赤書き』がありますので・・・」
と、結構時間をとられることに疑問を感じていました。
それでも、父の事務所で働き始めた最初の頃は、この業界のことはさっぱりわからなかったので
「何か大事な仕事の一つなのだろう。」
と見逃していたのです。
しかし、先述のようにその内容を知った瞬間、変更を命じたのです。
つづく