そうだったんだ!―私の中の謎が解けた!・・ような気がする、について(長文)―
今日の目次
・飯が食えなくなる?だとう!
・なにぃ、利権だとう!!
・業績アップには1ミリも貢献しない
・経営者は経営に全力投入したい
・民間経営の邪魔をしないこと
飯が食えなくなる?だとう!
先日、運転中、ラジオのトーク番組を聴いていたら、経済評論家だかアナリストのゲストが、次のようなことを言っていた。
「なんでこんなに税金てややこしくて、やたらと難しいんですかねえ?」
と話題をふるパーソナリティに、くだんのゲストは
「税の三原則は、ご存じのように『公平、中立、簡素』ということになっているんですが、税金だけでなく社会保険制度なんかも含めて、この中の簡素というところだけが逆行してて、やたらと細かくややこしくなっているんですよね。」
「何か理由でもあるんでしょうか?」とさらに突っ込むパーソナリティに
「世の中には、税理士とか社会保険労務士とかの資格で食っている人たちもいますんで、ここが簡素になってしまうと、飯が食えなくなるということもあるんじゃないでしょうかね。」と笑いながら答えるゲスト。
「なんか利権みたいなもんが?」と応じるパーソナリティに
「そんな感じもあるんじゃないですか。」
と締めくくった。
なにぃ、利権だとう!!
これを聴いていて、私は頭に血が上る。
『冗談じゃねえ。ややこしくなってアップアップしているのは納税者もこっちも同じだ。それを利権なんて言われた日には、こちとらはとてもじゃないが浮かばれねえってもんだぜ!!』
と、なぜか頭の中がべらんめぇ調になって怒りが湧いてきたのだ。
冗談めいた軽いやり取りの放送だったが、我々税理士にとって、これは由々しき問題でもある。確かにこのラジオで触れていたように、近年の税法のややこしさには辟易させられる。
特に消費税における軽減税率やインボイスの導入などは、日常の経理処理の煩わしさに直結するため他人事ではない。中小企業の経営者や経理担当者もそう感じていることだろう。
業績アップには1ミリも貢献しない
一昨年のインボイス制度導入の際には、事務所の顧問料を値上げさせてもらった。実務面の面倒さが格段に増したためのやむを得ない処置であった。しかし、こういう値上げは、正直言っていささか心苦しい。
うちも面倒になるが、お客さんも同様に面倒になるからである。しかもお客さんは、その面倒さが事業の業績アップにつながるわけではない。
この手の改定は煩わしさが増すだけで、企業業績の向上には1ミリも貢献しない。むしろ、事務処理量が増加することで、経費の負担が大きくなるだけのことである。
とはいえ、税務上の処理業務に関して、顧問としての責任を負っている以上、チェックをおろそかにはできない。こちらとしてはルーチンの仕事量が増えるために値上げせざるを得なかったのである。
しかしそうすると、先のラジオのゲストのように「利権じゃないの?」などと揶揄される羽目になるのだ。制度が複雑化していって、事務処理量が増えるためやむを得ずやる値上げは、決して我々の本意ではない。
私は、世の中のインフレ進行、或いは顧客企業の規模が大きくなるとか業績が向上するとかに応じた料金の改定は、正当な請求と思っている。これはどの産業においても同じだろう。これに対して、制度の複雑化といった要因を、料金に反映させる形での値上げというのは気分のいいものではないのだ。
経営者は経営に全力投入したい
税の徴収というのは、制度であり法律に定められた領域である。当たり前だが、民間が自分の判断や裁量で税額を決めるということはできない。税法という法律に則って計算し、納税することになる。
だから、この計算はできるだけシンプルであることに越したことはないはずだ。それが税の三原則に謳われている「簡素」という考え方である。
一方、事業者が日常取り組んでいる自社の業績を伸ばすという行為、即ち「経営」の世界は、ほぼ100%自らの裁量にかかっている。公的な補助金や支援などないわけではないが、その効果は限定的である。
本質的にどちらがより複雑で、先の見通しが難しく、魑魅魍魎の世界かは言うまでもないだろう。経営には「制度」などという背景はない。日々移り変わる経済社会に自在に対応していかなければならないのだ。
前向きな経営者が、ここに全力を投入したい、と思うのは当たり前の話である。そのためには、できるだけそのほかのことには煩わされたくはないだろう。税務処理の世界がややこしくて複雑極まりない、というのはまさにこの方向性に逆行しているということになるのだ。
民間経営の邪魔をしないこと
しかし、冒頭のアナリストのように「税の世界がシンプルになると利権構造が崩れて、あんたたち税理士の仕事がなくなるんじゃないの?」と、心配する向きもある(ないかな)かも知れないが、ご心配には及ばない。(もちろん、利権構造などありませんので誤解なさらぬように。)
我々には税務と同時進行に「会計」という世界もある。「会計」には数字を正確に把握するだけでなく、そのデータから事業の未来への可能性などを推し測っていく、という役割もあるのだ。
現代は、計画的経営がもはや標準的に要請される時代である。事前の税金予測から含めて、正確な会計は「計画経営」に欠かせない要素なのだ。
繰り返すが、税の世界はできるだけ簡素化するに越したことはない。「頼むから、事務処理などに過度に煩わされることなく、前向きな経営に専念させてくれよ。」というのが経営者の本音ではないのか。日本経済発展のポテンシャルには、他の先進国にも負けないだけのパワーがあると思う。
というわけで、税法を含めた制度を作る側の政治や行政に心掛けて欲しいのは、「できるだけ民間経営の邪魔をしないこと。」だと思っている。
そうそう、こんなのもやりました