企業は規模が小さければ小さいほど労働生産性が低い―新型コロナ禍で露呈した「日本経済の脆弱性」について考える―Ⅴ
[企業数の多さは国全体の設備投資の重複の多さにつながる]
中小企業の経営はイノベーションが起こりにくく、労働環境も悪く、女性の進出率も低い、と指摘されるアトキンソン氏。
さらに、従業員に支払われる報酬の低さについても次のように指摘されます。
―企業の規模が小さくなると、労働者の専門性が低下します。
企業数が増えれば増えるほど、国全体の設備投資の重複が増えて、生産性が低下します。
結果として、支払える給料も減ってしまうのです。―
私の事務所は、総従事者数20人、売上1億3千万円の、アトキンソン氏の言われる中小企業ですが、イノベーションや労働環境、女性の進出についてはかなり努力しているつもりです。
しかし、アトキンソン氏の指摘される従業員への報酬については、大きな企業にはるかに及ばない状況です。
低く抑えているつもりはないのですが、地域の物価状況や経済環境を考えればかなりいっぱいいっぱいのところなのです。
ここは私にとっても大きな課題ではあります。
自分の事務所のことを振り返ってみたとき、確かに私も、アトキンソン氏の言われるように、もっと規模を大きくして各従業員の専門性、スキルを上げていきたいと構想していました。
もちろんその目標は今でも変わらないのですが、過疎化高齢化が急速に進むこの地域において、従業員数を増やし、かつ彼らの報酬を上げていくというのはそう簡単な話ではありません。
自分のこと以上に私が心配なのは、特に地方の場合、規模を大きくして事業をもっと発展させていこうという経営者が少ないということです。
アトキンソン氏の指摘はその通りと思うものの、肝心の経営者側にその気概がなければどうしようもありません。
「もっと規模を大きくして生産性を上げていきましょう。」
というのは、今の日本の中小企業が置かれている現状においてかなり厳しいものがあります。
しかし、アトキンソン氏の言われるように、日本経済低迷の根本原因は、そこにありますので、現場に一番近い私たちを含めて大いなる努力を傾けていく必要がありそうです。
企業が元気を出さなければ日本は良くならない
おしまい