【親子問題】スカウト・匿名流動型グループに取り込まれている疑い|接触を断つ順序と安全確保の考え方
ゲームをやめられずに昼夜が逆転し、学校や仕事に行けなくなっている。スマホを取り上げようとすると激しく怒り、物に当たったり家族に手を上げたりする。そうした子の様子を前に、「これは病気なのか」「病院に連れて行くべきなのか」と迷う親御さんは少なくありません。
本記事は、ゲームへの没頭に悩むご家族が、医療・相談機関と法的な手段をどう組み合わせるかを整理するものです。個別の診断や治療方針については、医師にご確認ください。
先に要点を述べると、ゲームへの没頭が一定の状態に至っている場合、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類で病気として位置づけられており、医療機関での治療の対象になり得ます。一方で、長時間遊んでいるというだけで病気と決まるわけではなく、本人が受診を拒む場合に家族が治療を強いることにも限界があります。この記事では、治療の対象になる場合とその中身、相談先、本人が拒むときの考え方、課金や暴力といった法律の問題が重なったときの整理を順に説明します。
ゲーム依存は「ゲーム行動症」として疾病分類に収められている
WHOは2019年に国際疾病分類の第11版(ICD-11)を承認し、その中に「Gaming disorder」を精神疾患として収載しました。日本語では「ゲーム障害」と呼ばれてきましたが、近年の医学文献では「ゲーム行動症」という訳語も使われています。ギャンブルへののめり込みと同じ「嗜癖行動症」のグループに分類されている点が特徴です。
診断の目安となる3つの特徴
- ゲームを始める時間や頻度、やめるタイミングなどを自分で調整できないこと。
- ほかの関心事や日常の活動よりも、ゲームを優先するようになっていること。
- 問題が起きているにもかかわらず、ゲームを続けたり、さらにのめり込んだりしていること。
これらによって、家庭・学校・仕事・対人関係などに著しい支障が生じていることが前提になります。こうした状態が通常は12か月以上続いていることが目安とされ、症状が重い場合には、より短い期間でも診断されることがあります。
「長時間遊んでいる」だけで病気とは限らない
ゲームの時間が長いこと自体は、診断の決め手ではありません。休日に長く遊んでいても、学校や仕事、睡眠や食事が保たれているなら、上記の特徴にはあたらないことが多いでしょう。反対に、時間がそれほど長くなくても、ゲームをめぐって生活が崩れ、家族との衝突が繰り返されているなら、専門家に相談する意味は十分にあります。
医療の現場からは、「ゲーム依存」という言葉で問題を片付けず、子がゲームにのめり込む背景に目を向けるべきだという指摘も出ています。学校や職場でのつまずき、人間関係の悩み、発達の特性や気分の落ち込みなどが、ゲームへの没頭と重なっていることがあるためです。
治療の対象になる場合、どのような治療が行われるのか
ゲーム行動症の治療は、カウンセリングなどの心理社会的な治療が中心です。代表的なものに、ゲームとの付き合い方やものごとの受け止め方を見直していく認知行動療法があります。ゲーム行動症そのものに用いる治療薬は、まだ開発されていないとされています。
また、注意欠如多動症(ADHD)やうつ状態、不安などが併存していることも少なくなく、その場合は併存する症状の治療も重要になります。専門外来のある医療機関の中には、通常の外来診療に加えて、家族会、デイケア、個別のカウンセリング、入院治療などを組み合わせているところもあります。
ただし、ゲームの問題に専門的に対応できる医療機関や相談機関は、まだ限られているのが実情です。近くに専門外来がない場合は、後で紹介する精神保健福祉センターなどで、受診先について相談するところから始めるのが現実的です。
治療のゴールは「完全にやめること」とは限らない
アルコールや薬物と違い、スマホやインターネットは日常生活から切り離すのが難しいものです。そのため治療や回復の目標は、ゲームを完全に断つことよりも、睡眠・食事・通学や仕事といった生活の土台を取り戻しながら、ゲームとの距離を調整していくことに置かれる場合があります。
治療を受ければすぐに元どおりになる、というものでもありません。入院治療を経ても、退院後にゲーム中心の生活に戻ってしまった例も伝えられています。短期間で結果を求めすぎず、家族も支援を受けながら長い目で関わる姿勢が大切です。
どこに相談すればよいのか
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 精神保健福祉センター(都道府県・政令指定都市) | ネット・ゲームの問題に関する家族からの相談、受診先の情報提供 |
| 依存症の専門外来・ネット依存外来 | 診断と治療、家族向けのプログラム |
| 精神科・児童精神科、かかりつけ医 | 併存する症状の診察、専門機関への紹介 |
| 家族会・自助グループ | 同じ悩みを持つ家族や当事者との交流 |
| 消費生活センター(消費者ホットライン188) | ゲームの課金をめぐる契約のトラブル |
| 警察 | 暴力が起きている、または差し迫っているときの対応 |
| 弁護士 | 暴力や金銭の要求、課金をめぐる法的な対応、本人とのやり取りの窓口 |
本人が相談に行かない段階でも、家族だけで相談を始めることはできます。精神保健福祉センターではネット・ゲームに関する相談が増えているとされ、家族向けの相談の機会を設けているところもあります。ひきこもりの状態を伴っている場合の窓口については、【親子問題】ひきこもり地域支援センターでできること・できないことも参考にしてください。
本人が受診を拒むときの考え方
受診は本人の納得が出発点になる
ゲーム行動症に限らず、精神科の受診や通院は、本人が納得して臨むことが基本です。未成年の子であれば受診の手続を親が担うのが一般的ですが、本人が納得しないまま連れて行っても、治療が続かなかったり、親への不信が深まったりすることがあります。家族会の関係者からも、親の意思で無理に入院させた結果、子が親に恨みを抱き、関係が悪化する場合があるという声が出ています。
成人した子の場合は、なおさら本人の意思を尊重する必要があります。親が代わりに受診を決めることはできないため、まずは本人が「相談してみてもよい」と思える関わり方を探していくことになります。
家族の判断で入院させられる場面は限られている
精神保健福祉法には、本人の同意がなくても入院させる仕組みとして、医療保護入院と措置入院があります。しかし、医療保護入院は精神保健指定医の診察により入院の必要性が認められ、かつ本人が自ら入院に同意できる状態にない場合に限られます。措置入院は、自分を傷つけたり他人に害を及ぼしたりするおそれがある場合の制度です。ゲームをやめないというだけで、これらの入院が認められるわけではありません。家族として同意を求められた場面については、【親子問題】医療保護入院の同意を求められた|家族が同意することの意味で解説しています。
本人がすぐに受診しない場合でも、家族が先に相談機関や医療機関の家族相談につながっておくことには意味があります。家族の関わり方が変わることで、本人が相談に向かうきっかけが生まれることもあるためです。本人が相談を拒んでいる段階で家族が動ける範囲は【親子問題】本人が相談を拒む場合|家族だけで動ける範囲、医療につなぐかどうかの判断は【親子問題】ひきこもりと精神疾患の切り分け|医療につなぐ判断にまとめています。
ゲーム機やスマホを取り上げてもよいのか
未成年の子の場合
親は親権者として、未成年の子の監護と教育をする権利を持ち、義務を負っています(民法820条)。ゲーム機やスマホの使い方について家庭でルールを決め、親が機器を管理することは、この監護・教育の範囲に含まれると考えられます。
一方で、2022年の民法改正により、親権を行う者は子の人格を尊重し、その年齢や発達の程度に配慮しなければならず、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないと定められました(民法821条)。力ずくで機器を奪う、人格を否定する言葉で責めるといった対応は、この趣旨に反するおそれがあります。
実際に、Wi-Fiを切ったりゲーム機を取り上げたりしたことをきっかけに、子が家族に暴力をふるったという相談も寄せられています。機器の管理は、本人も交えてルールを話し合い、納得を得ながら進めるほうが、結果として衝突を避けやすいでしょう。
成人した子の場合
18歳以上の子には親権が及ばないため、子が自分のお金で買ったゲーム機やスマホを親が取り上げる法的な根拠は、基本的にありません。勝手に処分すれば、かえって親の側が責任を問われるおそれもあります。
ただし、スマホの回線契約やインターネット回線、クレジットカードなどが親名義になっている場合は、契約者である親がその契約を見直すことができます。急に止めると強い反発を招くこともあるため、時期や伝え方を考えたうえで進めることが大切です。名義の整理については、【親子問題】子の携帯・車の名義を親が持っている場合のリスクも参考にしてください。
課金・お金・暴力が絡むときに分けて考えること
ゲームへの没頭は、医療の問題であると同時に、お金や安全の問題を伴うことがあります。治療の話とは切り分けて、それぞれに必要な対応を検討しましょう。
未成年の子の課金
未成年者が親の同意なく行った契約は、原則として取り消すことができます(民法5条)。もっとも、親のアカウントやクレジットカードで決済されていると、親自身の契約と扱われ、取消しが認められないこともあります。購入履歴を確認し、早めに消費生活センターに相談するのが現実的です。なお、成年年齢は18歳に引き下げられているため、18歳・19歳の子の課金は、未成年であることを理由とする取消しの対象になりません。
親のカードの無断利用や金銭の要求
成人した子が親のカードで課金を続けている場合の支払いや返還の整理は、【親子問題】子が親のカードで課金・通販をしている|成人した子の無断利用と、支払い・返還の整理で解説しています。課金のためにお金を求められ続けている場合は、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけもあわせてご覧ください。ゲームだと思っていたものがオンラインカジノだった場合は、法的な扱いが大きく変わるため、【親子問題】子がオンラインカジノにのめり込んでいる|親が確かめること・避けたい対応を確認してください。
暴力が起きているとき
ゲームをめぐる衝突が暴力に発展している場合は、治療の検討よりも家族の安全の確保が先です。身の危険を感じるときは、ためらわずに警察へ通報してください。日ごろからできる安全確保と記録の残し方は【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録、夜間に頼れる窓口は【親子問題】夜間に子が暴れたときの相談先|時間帯別の窓口で整理しています。
治療と並行して、弁護士が担える役割
ゲーム行動症の診断や治療は、医師や医療機関が担うものであり、弁護士が治療の代わりをすることはできません。一方で、ゲームの問題に家庭内暴力や金銭の要求、多額の課金が重なり、家族だけでは本人と話し合うことも難しくなっている場合には、法的な立場から関われる部分があります。
当事務所では、家庭内暴力やお金の無心に悩む親御さんの代理人として介入し、親への攻撃や金銭の要求を止める役割を担っています。そのうえで、民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、生活の立て直しや通院の支えを、本人の状況に合わせて進めています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応、弁護士とカウンセラーの役割分担については【親子問題】弁護士とカウンセラーが組むという形|役割を分ける理由で詳しくご紹介しています。
子のゲーム依存は、状態によっては治療の対象となり得る問題ですが、治療だけですべてが解決するとは限りません。医療・相談機関、家族会、そして必要に応じて弁護士と、役割の違う支援を組み合わせることで、家族だけで抱え込まない体制を整えていくことができます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


