【親子問題】家賃の援助を条件に、子に独立を促すのはあり?
本記事は2026年10月時点の制度や各機関の案内をもとにしています。窓口の受付時間や対象地域は変わることがあるため、利用の前に各機関の最新の案内をご確認ください。
成人した子の飲酒が止まらず、暴言や物を壊す行動、お金の要求が続いている。本人に話しても「自分は依存症ではない」と言われ、家族だけが疲れていく。こうしたご相談は、親子の問題のなかでも少なくありません。
アルコール依存症は、本人が病気を認めにくいといわれる一方で、家族だけでも相談できる窓口が用意されています。この記事では、家族が使える主な相談先とそれぞれの役割の違い、暴力や金銭の問題が重なっている場合の考え方を整理します。
家族が先に相談してよい理由
アルコール依存症は、飲酒の量や飲むタイミングを自分で調整することが難しくなる病気です。飲酒が生活の中心になるにつれて、仕事や人間関係、家計に影響が広がり、同居する家族が巻き込まれやすくなります。
保健所などの相談窓口には、本人よりも家族からの相談が多く寄せられているとされています。本人が受診や相談を拒んでいても、家族が先に相談し、病気の仕組みや関わり方を知ることには意味があります。家族の対応が変わることで、本人が治療を考えるきっかけが生まれることもあるためです。
また、家族自身の疲れも見過ごせません。長く続く緊張のなかで、親の側が体調を崩してしまうこともあります。相談は本人のためだけでなく、家族が自分の生活を守るための手段でもあります。
家族だけでも相談できる主な窓口
| 窓口 | 主な役割 | 家族だけでの相談 |
|---|---|---|
| 保健所・保健センター | 地域の身近な相談先。病気の説明、医療機関や家族会の情報提供 | 多くの場合可能 |
| 精神保健福祉センター | 都道府県・政令指定都市の依存症相談の拠点。面接相談や家族教室 | 可能(予約制が多い) |
| 依存症の専門医療機関 | 診断と治療。家族相談や家族向けプログラムを設ける病院もある | 病院により異なる |
| 家族会・自助グループ | 同じ立場の家族どうしで経験を分かち合う場 | 可能 |
| 弁護士 | 暴力・金銭要求・住まいなど法的な問題の整理と、本人との窓口の代替 | 可能 |
どこに相談すればよいか迷う場合は、住んでいる地域の保健所か精神保健福祉センターに電話で相談するところから始めるのが一般的です。親子の問題全体について、警察・行政・弁護士の役割の違いは【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担で整理しています。
保健所・精神保健福祉センター
保健所は、地域の住民がこころの健康について相談できる身近な窓口です。アルコールの問題についても、家族からの相談を受け、医療機関や家族会の情報を紹介しています。
精神保健福祉センターは、都道府県や政令指定都市に置かれた専門的な相談機関で、多くの地域で依存症の相談拠点に位置づけられています。個別の面接相談のほか、依存症について学ぶ家族教室を開いているところもあります。
東京都にお住まいの場合
東京都の精神保健福祉センターは3か所あり、担当する地域が分かれています。
| センター | 所在地 | 担当地域 |
|---|---|---|
| 東京都立精神保健福祉センター | 台東区 | 特別区のうち東部13区と島しょ地域 |
| 東京都立中部総合精神保健福祉センター | 世田谷区 | 特別区のうち西部10区 |
| 東京都立多摩総合精神保健福祉センター | 多摩市 | 多摩地域の市町村 |
たとえば台東区の都立精神保健福祉センターは、都の依存症相談拠点として、本人や家族からの相談に応じています。面接相談は電話で予約する形をとり、家族向けの依存症家族教室も開いています。相談は無料で、相談したことで警察に通報されることはないと案内されています。
専門医療機関と家族会
依存症の専門医療機関のなかには、本人が受診していない段階でも家族相談を受け付けているところがあります。家族向けのプログラムでは、病気の仕組みや本人への声のかけ方を学びます。本人を責めずに治療につながる可能性を高めることを目指した、CRAFT(クラフト)と呼ばれる家族支援の手法を取り入れている機関もあります。
断酒会や、アルコールの問題を抱える人の家族のための自助グループ(アラノンなど)は、同じ悩みを持つ家族の経験を聞ける場です。家族会の位置づけについては【親子問題】家族会・当事者会の役割|弁護士に頼む前にできることで解説しています。
相談の前に整理しておきたいこと
窓口に相談するときは、次のような事情を書き出しておくと、状況が伝わりやすくなります。
- 飲酒の量・時間帯と、飲み方がいつ頃から変わったか。
- 飲酒時の言動(暴言、暴力、物の破損など)と、その日時。
- 体調の変化や、これまでの受診・入院の経過。
- 酒代の要求や借金など、お金の流れ。
- 仕事や日常生活の状況。
- 家族の誰が、何を負担しているか。
記録はメモや日記の形で構いません。暴力がある場合の安全確保や記録の残し方は、【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録もあわせてご覧ください。
家族が続けがちな対応を見直す
家族は、少しでも状況を良くしようとして、次のような対応をとりがちです。
- 酒を隠したり、捨てたりすること。
- 酔っている本人を説得し、断酒を約束させること。
- 借金の返済や、勤務先・近所への謝罪を家族が代わりに引き受けること。
- 本人の機嫌を損ねないよう、要求に応じ続けること。
いずれも家族の思いから出る行動ですが、隠した酒をめぐって衝突が起きたり、本人が飲酒の結果に向き合う機会が減ったりすることがあると指摘されています。どの対応を続け、どれを手放すかは家庭ごとに異なるため、家族教室や専門機関で相談しながら決めていくのが現実的です。
暴力や金銭の要求があるときは、別の対応も必要
医療や福祉の窓口は、病気の理解と回復を支える役割を担います。一方で、暴力や金銭の要求、家から出ていかないといった問題が重なっている場合、それだけでは家族の安全や生活を守りきれないことがあります。
身の危険があるときは警察へ
酔った本人が暴れて身の危険を感じるときは、ためらわずに110番通報を検討してください。酔っている間に話し合いを試みると、かえって状況が悪化することがあります。通報の目安は【親子問題】110番を呼ぶ判断基準|その場で何を伝えるかで、夜間の相談先は【親子問題】夜間に子が暴れたときの相談先|時間帯別の窓口で解説しています。
警察に相談すると、被害届の提出をすすめられることが多いといわれます。家族としては、事件にしたいのではなく治療につなげたい、という葛藤を抱えやすい場面です。なお、酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律では、警察官が保護した人にアルコールの慢性中毒の疑いがあるとき、保健所長へ通報する仕組みが設けられています。警察への相談が、保健や医療の窓口につながる入口になることもあります。
酒代の要求に応じる義務はあるか
成人した子に対して親が負う扶養義務は、親自身の生活を犠牲にしてまで子を養うことを求めるものではないと一般に考えられています。酒代や遊興費の要求に応じ続ける法的な義務は、通常ありません。断り方や断った後の備えについては、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけをご覧ください。
親子の縁を切ることはできない
法律上、親子関係そのものを解消する手続はありません。そのため、家族にできるのは、同居を見直す、お金のやり取りを整理するなど、距離のとり方を考えることになります。詳しくは【親子問題】子と縁を切りたい|法律上できることとできないことで解説しています。
入院を考えるとき
飲酒によって体調が悪化している場合や、手の震え・発汗などお酒が切れたときの症状がみられる場合は、まず医療機関への相談が優先されます。アルコール依存症の治療は、本人が同意したうえでの通院や任意入院が基本です。
本人が同意しない場合でも、精神保健指定医の診察で入院が必要と判断され、一定の要件を満たすときは、家族等の同意による医療保護入院が行われることがあります。家族が同意することの意味については【親子問題】医療保護入院の同意を求められた|家族が同意することの意味で解説しています。入院は治療の手段の一つであり、退院後の生活をどう組み立てるかもあわせて考えておく必要があります。
弁護士が関わる場面
当事務所では、家庭内暴力やお金の無心に悩む親御さんの代理人として、子との間に入る取り組みを続けてきました。弁護士が親の窓口となり、子からの連絡や要求を受け止めることで、親が直接向き合う負担を減らせることがあります。
ただし、依存症の治療は医療機関の役割であり、弁護士だけで飲酒そのものを止めることはできません。当事務所では民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、弁護士が親の保護を、カウンセラーが住まい探しや仕事探し、通院のサポートなど日常生活の支援を担います。事案に応じて医療機関や警察とも連携しながら進めます。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応で紹介しています。
よくあるご質問
本人が「依存症ではない」と言っています。家族だけで相談してもよいですか?
はい、家族だけでの相談は可能です。保健所や精神保健福祉センターは、本人が来所しない段階での家族からの相談を受け付けています。本人が病気を認めないことは珍しくないため、まずは家族が状況を伝え、関わり方を一緒に考えてもらうところから始めて構いません。
相談したことは本人や警察に伝わりますか?
公的な相談機関の多くは、相談者の秘密を守ることを案内しています。東京都立精神保健福祉センターも、相談したことで警察に通報されることはないと示しています。弁護士にも守秘義務があり、ご依頼を受けて本人に連絡する場合も、どの範囲を伝えるかは事前にご相談のうえで決めます。
子が離れて暮らしています。遠方でも相談できますか?
公的な窓口は、原則として本人や相談者が住んでいる地域の機関が担当します。当事務所は、全国のご家庭からのご相談をお受けしています。詳しくは【親子問題】遠方でも依頼できるのか|全国対応の実際をご覧ください。
子のアルコールの問題は、医療・福祉・法律のどれか一つで片づくことは少なく、窓口を組み合わせて向き合っていくことになります。治療の相談は保健所や精神保健福祉センターに、暴力やお金、住まいの問題は弁護士に、と分けて考えるだけでも、家族が抱える負担の見通しは立てやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


