【親子問題】子が親のカードで課金・通販をしている|成人した子の無断利用と、支払い・返還の整理

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、2026年10月時点の民法・刑法・特定商取引法と、主要なカード会社の会員規約に共通する一般的な内容をもとにしています。成年年齢は2022年4月から18歳です。個別のカード会社やサービスの取扱いは、それぞれの規約と窓口でご確認ください。


「カードの明細を見たら、覚えのないゲームの課金と通販の購入が何十件も並んでいた。使っていたのは家にいる30代の息子だった」というご相談があります。別のご家庭からは「娘に問いただすと『あとで返す』と言うが、同じことがもう3回目になる」という声も届きます。

 インターネットで調べると、子どもが親のカードで課金した場合の説明は数多く見つかります。ただ、その多くは子が未成年であることを前提に、未成年者の契約の取消しを中心に組み立てられています。説明自体は誤りではありませんが、子が18歳以上の場合は前提がいくつか変わり、親が取れる手段と取れない手段の線引きも違ってきます。

 この記事では、成人した子が親のクレジットカードや、カード情報を登録したスマートフォン・アプリストア・通販サイトのアカウントを無断で使った場面を取り上げ、支払いの行方、カード会社や店とのやり取り、刑事手続との関係、再発の防ぎ方、子への請求の順に整理します。口座から現金を引き出された場合は【親子問題】親の預貯金を勝手に引き出された|刑事と民事の分かれ道、子が親の名義で新しく契約を結んだ場合は【親子問題】子が親名義で契約した|追認しないという選択で扱っています。

成人した子の無断利用で、まず変わる前提

未成年者の取消しは使えない

 未成年者が親権者の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができます(民法5条2項)。子どもの高額課金をめぐる解説の多くがこの規定を出発点にしているのはそのためです。成年年齢は18歳ですので(同法4条)、子が18歳以上であれば、この取消しは使えません。

 もっとも、子が未成年の場合でも、親のカードで決済されていれば、名義人である親の管理責任が問われ、取消しを申し出ても返金されるとは限らないとされています。成人した子の場合は、そこからさらに取消しという手段がなくなる、と考えると整理しやすくなります。

契約は「店との売買」と「カード会社との会員契約」の二層になっている

 親のカードで買い物や課金がされたとき、関係は二つに分かれます。一つは、子が親になりすまして結んだ店やサービス事業者との売買・利用の契約です。親自身は申込みをしていないため、親が後から認めない限り、親が契約の当事者として拘束されるわけではない、と考える余地があります。

 もう一つは、親とカード会社との会員契約です。多くの会員規約は、カードや番号・暗証番号を適切に管理する義務を会員に課し、名義人以外の人が使った場合の支払いも会員の負担になると定めています。店との関係で支払いを争える余地があっても、カード会社への支払いは会員規約によって別に決まるという点が、この問題で最初に押さえておきたいところです。

家族による利用は、補償の対象外とされることが多い

 カードには盗難や不正利用に備えた補償がありますが、多くの規約は、会員の家族や同居人による使用を補償の対象から外しています。届け出の期限(連絡した日からさかのぼって60日以内など)を設けているカード会社も多いため、明細を見て気づいた時点で早めに連絡することが大切です。

 なお、2008年には、当時19歳の長男がインターネットで父親のカードを無断で使った件で、カード会社が暗証番号の入力などの不正防止の仕組みを整えていなかったとして、父親への請求を退けた地方裁判所の判決があります(長崎地裁佐世保支部平成20年4月24日判決)。個別の事情に基づく一つの判断であり、本人認証の仕組みが広がった現在に同じ結論になるとは限りませんが、カード会社の側の確認の仕組みも問われうることを示す例です。

カード会社・店・アプリストアに何を伝えるか

利用停止と再発行を先に済ませる

 支払いの話を詰める前に、カードの利用を止めて番号を変えることを優先します。番号が変われば、子が登録したアプリやサイトに残っているカード情報も使えなくなります。家族カードを子に渡している場合は、その家族カードの解約も検討します。

 あわせて、利用明細と購入・課金の履歴を、気づいた時点のまま保存しておきます。どのサービスで、いつ、いくら使われたかが、後でカード会社や店と話すとき、子に返済を求めるときの土台になります。

「知らない第三者の不正利用」として届け出ない

 家族の利用は補償の対象外とされることが多いため、事情を伏せて「身に覚えのない不正利用」として届け出たくなるかもしれません。しかし、事実と異なる申告は、後で調査が進んだときに親の側の問題になりかねません。使ったのが子であると分かっている場合は、その前提でカード会社に相談することが、結果として話を早く進めます。

 カード会社によっては、調査のために警察への相談や届出の有無を尋ねられることがあります。届出をするかどうかは家族としての判断が必要になる場面ですので、次の章で扱う刑事手続の位置づけと合わせて考えてください。

通販は返品・キャンセル、課金は各事業者の返金窓口

 通販で届いた物が未開封で残っていれば、返品やキャンセルを店に申し出る方法があります。通信販売にはクーリング・オフの制度はありませんが、返品の可否や条件は店が表示する返品特約に従い、表示がない場合は商品を受け取ってから8日以内であれば返品できるとされています(特定商取引法15条の3)。発送前であれば、キャンセルの相談がしやすくなります。

 ゲームやアプリの課金は、アプリストアやサービス事業者の返金申請の窓口を使います。返金に応じるかどうかは各事業者の判断で、利用者が成人の場合は認められにくい傾向があります。整理すると、次のとおりです。

相手方まず伝えること見通し
カード会社家族による利用であること、利用停止と再発行規約上は会員の負担とされることが多い
通販サイト・店未開封品の返品、未発送分のキャンセル返品特約の内容と商品の状態による
アプリストア・ゲーム事業者返金申請の窓口からの申出各事業者の判断で、成人の利用は認められにくい


 また、通販サイトでのカード決済には、2025年3月末までに原則としてすべての加盟店でワンタイムパスワードなどによる本人認証(EMV 3-Dセキュア)の導入が求められてきました。認証の通知が親のスマートフォンに届く設定であれば、子がどのように認証を通過したのかも、カード会社とのやり取りで確認される点になりえます。

刑事手続との関係|親族間の特例はそのまま当てはまるか

名義人になりすましてカードを使う行為の扱い

 他人名義のカードを名義人になりすまして使う行為について、最高裁は、店の側を欺いて商品を交付させたものとして詐欺罪の成立を認めています(最高裁平成16年2月9日決定)。インターネット上の決済のように人を介さない取引では、電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が問題になります。

現金の持ち出しと同じ扱いになるとは限らない

 親子の間で財産を持ち出した場合には、刑法244条1項の特例により刑が免除されます。この特例は詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪にも準用されています(同法251条)。ただ、カードの無断利用では、法律上の被害者を店やカード会社と捉える考え方が有力で、その場合は親子関係があることだけで特例が適用されるとは言い切れません。家の中のお金の問題でも、カードを介すると第三者が関わる取引になるという違いがあります。

被害届を出すかどうかは、家族の方針と合わせて考える

 刑事手続を使うかどうかは、金額や回数だけでなく、子のその後の生活や家族関係をどうしたいかとも関わります。出した後に何が起きるかを見通したうえで判断することをおすすめします。詳しくは【親子問題】被害届を出すと家族関係はどうなるのか|出す前に考えることをご覧ください。

再発を防ぐために家の中で切り替えること

カードと端末の管理を見直す

 無断利用が起きた家庭では、カードそのものよりも、カード情報が登録された端末やアカウントが使われていることが少なくありません。見直しの対象として、次のようなものがあります。

  • カードの保管場所と、番号・暗証番号を書いたメモの有無。
  • アプリストアや通販サイトで、購入のたびにパスワードや生体認証を求める設定。
  • 子と共有している端末やアカウントへの、カード情報の登録の有無。
  • 利用のたびに通知が届く設定と、利用限度額の引下げ。


家計と名義を分ける

 子の携帯電話の料金を親のカードで払っている、子の車の保険を親の名義で契約している、といった状態が続くと、どこまでが許された利用なのかの線引きが曖昧になります。名義と支払いの流れを分けておくことが、無断利用の線を引く前提になると考えてください。具体的な手順は【親子問題】家計を分ける実務|口座・光熱費・保険をどう切るかと【親子問題】子の携帯・車の名義を親が持っている場合のリスクで扱っています。

背景に浪費や依存がうかがえるとき

 課金や購入が繰り返される背景に、ゲームやギャンブル、推し活などへの支出が止められない状態がうかがえる場合は、カードの管理だけでは収まらないことがあります。【親子問題】ホスト・推し活・ギャンブルへの支出が原因の場合や、判断能力に関わる場合の【親子問題】浪費が止まらない子|保佐・補助を検討する場面もあわせてご覧ください。

使われた金額を子に請求できるか

不法行為・不当利得として返還を求める

 親がカード会社に支払った分は、無断で使った子に対して、不法行為による損害賠償(民法709条)や不当利得の返還(同法703条)として請求することができます。刑法の親族間の特例は刑事手続の話で、民事上の返還請求には親子であることによる制限はないという点を押さえておいてください。不法行為に基づく請求は、損害と相手を知った時から3年で時効にかかる点にも注意が必要です(同法724条)。

返済の約束は書面に、経緯は時系列で残す

 子が返済を約束したときは、金額・支払方法・期限を書面に残しておくと、約束が守られなかったときの話の出発点になります。利用明細、購入履歴、子とのやり取りを日付順にまとめておくことも大切です。これまでの記録の意味については【親子問題】金銭要求に応じ続けた記録は、後で意味を持つかで整理しています。

親が直接話すと同じことが繰り返されるとき

 親が直接問いただすと、その場では謝罪や返済の約束が出ても、時間がたつと元に戻ってしまうことがあります。親子の距離が近いほど、請求する側も強く出られないためです。当事務所では、弁護士が親の代理人として子とのやり取りの窓口を担い、自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支える形で対応しています。サービスの内容は【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応、ご相談から解決までの流れは【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問でご案内しています。

よくあるご質問

別居している子が、登録したままのカード情報で通販をしていた場合も同じですか

 カード会社との関係は、同居しているかどうかで大きくは変わりません。刑法244条1項の特例も、親と子のような直系血族の間では同居を条件としていません。別居している場合は、子がどのサービスにカード情報を登録しているかを親が把握しにくいため、番号を変える再発行の意味がより大きくなります。

子が「使っていいと言われた」と言っています

 以前に一部の利用を認めていた場合、どこまでが認めた範囲だったのかが争点になります。ただし、カード会社の規約では、名義人の許可があっても本人以外の利用は認められていないのが一般的です。子との間では、認めた範囲とそれを超えた利用を明細の上で分けて整理し、超えた分について返還を求めることになります。

カード会社への支払いを、子に直接させることはできますか

 カード会社への支払義務を負うのは名義人である親です。期日に支払わないと延滞として扱われ、親の信用情報に影響が出るおそれがあります。子からの返済は、親がカード会社に支払ったうえで、親子の間で別に受け取る形が基本です。親が子の借金を引き受ける義務があるかについては【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかをご覧ください。

まとめ


  1. 子が18歳以上であれば、未成年者の契約の取消し(民法5条2項)は使えない。
  2. 店との売買とカード会社との会員契約は分けて考え、カード会社への支払いは会員規約で決まる。
  3. 家族による利用は補償の対象外とされることが多く、事実と異なる不正利用の届出は避ける。
  4. 通販は返品特約(特定商取引法15条の3)や未発送分のキャンセル、課金は各事業者の返金窓口を使う。
  5. カードの無断利用は詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が問題になり、親族間の特例(同法244条1項・251条)がそのまま当てはまるとは限らない。
  6. 親が支払った分は、不法行為(民法709条)や不当利得(同法703条)として子に返還を求められる。
  7. 再発の防止には、カード・端末の管理の見直しと、家計と名義の分離が欠かせない。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、成人したお子さんとの金銭や暴力、ひきこもりの問題に悩む親御さんからのご相談を、池袋と新橋の事務所でお受けしています。遠方にお住まいの方からのご相談にも対応しています。

カードの無断利用が繰り返されている、返済の約束が守られない、直接話すと関係がこじれてしまうといった状況でしたら、一度ご家庭の事情をお聞かせください。お子さんの自立と親御さんの生活の両方を見据えて、対応の方針を一緒に考えます。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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